ロマン・プエルトラスの小説「IKEAのタンスに閉じこめられたサドゥーの奇想天外な旅」を原作に、「人生、ブラボー!」などのケン・スコット監督が実写化。主演はダヌージュ。
小さい頃から憧れていたパリの家具店にやってきたインドの青年。お金がないために店に居座り、タンスの中に隠れて一夜を明かそうとしたところ、なんと彼をいれたまま商品が発送。国をまたいでロンドンへついてしまう。同じトラックに隠れていた不法移民と共に強制送還、そこからまた別の国へ、と青年の旅はどこまでも続く……。まさに奇想天外なロードムービー。
ベレニス・ベジョ、エリン・モリアーティら共演。
あらすじ
インドのスラム街で育ち、母を亡くした青年アジャ(ダヌーシュ)は、ひょんなことから1枚の偽札を手に入れる。それを手に憧れていたパリのインテリアショップを訪れた後、営業終了後に店内に置かれたクローゼットに入って一晩を過ごすことになる。そしてクローゼットは、中にアジャが入ったまま運び出されてしまう。(シネマ・トゥデイより)
映画全体が主人公アジャによる回想という形で、悪いことをしてしまった子供たちに諭すように彼の物語を聞かせるという始まり方。ということで無事にインドに帰ってこれたことは判明してるんですが、そこからがまあほんとに奇想天外なお話でした。なんの情報もなく見始めたので、もしかして実話という線もあるのか?(ライオン、のように) とまで思えてしまうくらい、「マジかよ」「でもありえるかも」の絶妙なバランスだったと思います。
序盤はインドを舞台にして、彼がいかにして育ったか、そして高級家具=イケアが扱うやつに憧れを抱いてたかがわかるようなストーリーが展開してきます。見るひと全てに「あれが僕のパパ?」って聞いてみたり、自分がどんな家具を使いたいか妄想したり、子供ってそういうとこあるよな〜ってニヤニヤできます。最終的に外国人向けにスリを働いてるっていうのは生きるためとはいえダメなんですが、アジャも昔は悪かった、という部分がいい意味で冒頭の悪ガキたちに響く効果もあったかも知れません。
父親のこともあってパリに行くわけですが、そこで運命の人と出会います。このヒロイン、アマプラドラマ「The Boys」のスターライト役エリン・モリアーティが演じてます。一目惚れしたアジャは「使い勝手をシュミレーションしたい」と、初対面の彼女と色んなバリエーションで即興の会話劇を繰り広げます。あたかも長年連れ添った夫婦のようなやりとり。普通だったらなんだこいつって無視されることがほとんどでしょうが、面白がってのってくれます。最終的にお互いのことも話す二人。エッフェル塔で再開する約束をするわけですが、ここで気づいちゃった。あーこれしばらく会えないなーって。
実はクローゼットで運ばれること自体は割と短め。そのかわり帰るまでが長い長い。気がついた時にはすでにイギリス、しかもトラックの中には不法移民がいたことで、捕まった時は仲間だと思われてパスポートも問答無用で偽物扱い。スペインに強制送還されるも、そっちでも受け入れてもらえず、空港に缶詰に。奇跡的にドアが開いたタイミングで今度はスーツケースに入り込み、ローマへとたどり着く。どんだけ国を跨ぐんだっていう話ですよね。でもここからが彼の人生を大きく変えます。
インド映画(アメリカやフランスなどの合作です)にしてはロンドンの人たちがちょっと踊った程度であまりミュージカルないなーと思ってたんですが、このローマで出会った女優さんがいい人で、共に行動する中でダンスシーンも出てきます。彼がシャツに書き記したとある物語をめぐって、大金を手にいれられるものの、また気球であてのもない旅をすることになり、海賊に盗まれたり、奪い返したりと大冒険。いやいや、ほんと舞台がコロコロ変わって飽きさせないなーと。荒唐無稽な話ですが、テンポがいいからどんどん入り込めちゃうんですよね。
随所に「良いことをすればそれが帰ってくる」というメッセージを感じさせる描写があって、アジャは「立派な行い」をして、結果本当になんとななってる。生まれた国からどんどん離れて結構やばい状況でも諦めないし、逆に新しい出会いや文化を楽しもうとしてる。だから決して悲しかったりシリアスすぎないで見ることができます。
ヒロインとの関係ももちろん重要で、事情を知らない彼女がすっぽかされてショック受けたり、新しい恋人ができ婚約。アジャがせっかく衛星電話でかけても友達が出てしまったりとすれ違いを繰り返していくんですが、最後には……。まあこれは誰もが予想できちゃうと思いますけどね。出会った時からある意味相性抜群だったし。
悪ガキたちが質問したことで、父親のことについてもラストに明かされます。あの紙飛行機が舞うラストがアジャの冒険とも重なっていて、爽やかに終わりました。おとぎ話のようなちょっとファンタジーですが、見てて元気をもらえる、素敵な作品だったと思います。
アマゾンプライムビデオ内、スターチャンネルEXにて吹き替え版で視聴。
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