アオラレ / 遅刻しそうなイラつきから、信号が変わっても動かない車に対しクラクションを鳴らして追い越したレイチェル。そのことを根に持った男はどんどん暴走していく。ラッセル・クロウ怪演のカーチェイス・スリラー。

日本でも逮捕者が出ている、あおり運転を題材にしたサスペンス・スリラー。ついクラクションを大きめに鳴らしてしまったことから、ターゲットに執拗に追いかけ回され、自分や家族に危険が迫っていく恐怖を描く。ラッセル・クロウが狂気の追跡者を怪演。
夫と別れ、仕事もうまくいってないレイチェルはまたしても寝坊し、息子を学校に送ろうとするも遅刻しそうになってしまう。そんな状況でも青信号で前の車が動かず、いらだちのあまり特大のクラクションを鳴らすが、これに対して運転手の男は激昂。ネチネチと嫌味をいってくる。急いでる彼女はまともに受け付けずに走り去ろうとするも、さらに男の神経を逆撫ですることになり……。怒らせてはいけない人を怒らせたヒロインに待ち受ける運命とは。
カレン・ピストリアス、ガブリエル・ベイトマン、ジミ・シンプソン、オースティン・P・マッケンジーら共演。

あらすじ
寝坊した美容師のレイチェル(カレン・ピストリアス)は、息子のカイル(ガブリエル・ベイトマン)を学校へ送りながら職場に向かう途中、大渋滞に巻き込まれてしまう。いら立つ彼女は、信号が青になっても発進しない前の車にクラクションを鳴らして追い越すと、ドライバーの男(ラッセル・クロウ)は後をつけてきて謝罪を要求する。彼女がそれを拒否し、息子を学校に送り届けガソリンスタンドに寄ると、先ほどの男に尾行されていることに気付く。やがて、レイチェルは男の狂信的な行動に追い詰められていく。(シネマ・トゥデイより)


原題はUNHINGED。ノートパソコンや折りたたみ携帯などのつなぎ目で「ヒンジ」って日本語でも使うけど、蝶番のこと。それがUNで否定されてるから、蝶番の外れた=「常軌を逸した、イカれた」って意味合いらしい。確かにこの映画の恐怖の対象である【男】は完全にいかれてて、怒らせちゃまずい人を怒らせちゃったという言葉に尽きると思う。

邦題や常軌あらすじの通り全ての発端は確かにクラクションだし、前半のと後半でカーチェイスシーンはかなりの尺があるんだけど、別に車に限らないのも怖いんですよね。普通にファミレスとか、民家とかでどんどん暴力行為に及んでいく。【殺人鬼にターゲットにされて逃げる】っていうのはサスペンスホラーの王道ですけど、それのきっかけが車関係だった、というだけの話。現実世界でも、劇中でも、煽り運転でのトラブルが多いっていうのが大前提になってるからすごく身近に感じるし、だからこそ想像しやすくて怖いんですけど。

怒らせちゃった、という表現をしましたが、かなりの部分でレイチェルも自業自得なところもあって。個人的な話をすると割と僕の父も運転中に怒りっぽくなったりするタイプなので「僕ら家族を乗せてるってこと意識してくれ」って諌めてたんですが、この映画でも息子巻き込んでトラブルになるなよと。相手を挑発するなよとツッコミを入れたくなってしまいます。『これが正しいクラクションのマナーだ』って言われたタイミングで、(こう考えるのもだいぶ失礼だけど)「めんどくさい人だから、とりあえず謝ってこの場をおさめよう」って普通なら感じると思うんですけどね。レイチェルもまたストレスが重なってて、余裕がなかった。だから余計に逆撫でして、相手もどんどんヒートアップしてきた。

ガソリンスタンドで「つけられてる!?」って気がついてからの流れは本当にドキドキの連続。事情を話して助けてくれようとした人が犠牲になったり、男が一線を超えてくるから、彼女も見てる我々もことの重大さを一気に実感する。一度は離れられたと思ったらスマホとられて、さらに知人にその牙が向けられる。絶対悲劇が起こるってわかってる状況で見守るの辛すぎる。ちなみにあのあたりは彼自身の経験と重なって激昂してるって感じですね。最序盤のシーンは多く語られませんが、おそらく妻への怒りが相当あった結果……。

レイチェルの家族が男に巻き込まれてピンチになるのも、最初の方で簡単に人物紹介があっただけに余計にくるものがあります。弟のフレッドとか。もう彼女への憎しみであらゆるものをターゲットにしていくのはまさに暴走だし、実際に車でも文字通りの暴走をする。予告にも使われてるけど、いきなり突っ込んでくるとか当たり前のようにやるからね。びっくりさせられるシーンも多々ありますからそこご注意ください。

一度は警察がたどり着いてなんとかなったと思っても、銃撃されたにも関わらずそれでもあゆみを止めない。ほんと怖すぎるよ。バイオハザードの敵かよって感じ。再び車での逃走劇になりますが、片方はレイチェルから奪ったスマホ、片方は追跡用に忍ばせてあったタブレット、という形でおおたがいの位置がわかるところも今時の設定で面白かった。段々と距離が縮まっていく怖さ。

最終的には民家に逃げ込み、そこで最終戦がスタート。相手が手負いとはいえ、絶対的な体格差があります。パンチ一振りで吹っ飛んじゃうし、もうめちゃくちゃハラハラした。子供が見てる前で母親はやられないよ、な?という希望的観測でもって、半ば祈るように勝負を見守りましたが、「人間を超えた何か」になってるまであるので勝つビジョンが全然見えなくて、どっと疲れました。勝負が決まったあとの一言もなかなかいいんですが、最初から触れてる通り【あなたが怒らせなければ……】って気持ちもあってなんとも複雑(笑)

劇中ラストでも強調されてますが、男の行動が明らかに行き過ぎで余裕で犯罪行為である反面、そういう人間を怒らせるようなことしないようにするのも大事だってほんとに思わされる作品でしたね。アオリ運転は絶対いけないことだけど、それ以上にお互いを思い合ってトラブル起きないように自衛するのも大事かな、と。(車乗ってると普段以上に)怒りっぽい人ってどうしてもいるし。
触らぬ神に祟りなし。強く実感した映画でした。神じゃないけど。

そうそう、ラッセルクロウは他の映画のイメージが完全になくなるくらい、ヤベェ奴を本当に上手くやってて、目の「いっちゃってる感じ」がすごく、また太り具合が自己中なおじさん感出ててリアリティが半端なかったです。

WOWOWにて字幕版を録画、視聴。

B099RXWG45
アオラレ [Blu-ray]

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