中央に長方形の穴が空いた部屋で目が覚めたゴレン。傍には同居人と思しき老人。どうやら覗き込めば上へも下へも、気の遠くなるような階層全てに穴が空いていた。そこにピッタリ挟まる台座が食べ物と共に降りてくるが、それら全てが食べかけ。どうやら食料は追加されず、自分より上の者たちの残りだけが食べられるというルールだった。しかも1ヶ月に1度、眠っている間に運ばれて階層はシャッフルされるらしく……。
極限の、縦構造SFシチュエーションスリラー。
イバン・マサゲ、アントニア・サン・フアン、ソリオン・エギレオール、エミリオ・ブアレら共演。
あらすじ
中央に四角い穴の空いた謎の部屋で目を覚ましたゴレン。そこは塔の「48階層」であり、上下には無数の階層が続いていた。ゴレンは、同じ階層に暮らす老人トリマカシからここでのルールを聞かされる。それは、階層は1か月ごとに入れ変わること、食事が取れるのはプラットフォームと呼ばれる台座で上の階層から順番に降りてくる残飯が自分の階層にある間だけというものだった。1か月後、ゴレンは「171」階層のベッドに縛り付けられた状態で目を覚ます。(シネマ・トゥデイより)
最初に断っておくと、結構グロテスク、ショッキングなシーンがあります。メインジャンル的には閉鎖された空間でのシチュエーションスリラーでしょうが、スプラッターホラーとも言えるくらい、後半にかけてはバイオレンス要素が増していきますし、血が出るし内臓とかも。さらにはカニバリズム、いわゆる人の肉を……。
そもそもナイフやフォークがないので「手掴みで食べる」ことや「人の食べ残しをあさる」っていう時点でダメな人はダメかも。
主人公は完全に記憶がないってことではなく、「半年耐えたら認定証をもらえるから」と中身も知らずに志願して参加したというパターン。あらすじでも触れている『ルール』についてなど、同室のおじいさんが色々教えてくれるわけですがこの人もなかなかの不気味さでいきなり引き込まれます。こういう「無駄なことはやめて受け入れろ。そうすりゃ長生きできる」みたいな先輩ポジションって大抵がいい人で、そして途中で脱落するんですけどね。いい意味で裏切られましたよ。『明らかだ』が口癖だったり、予告動画でチラッと見えてる包丁「サムライ・プラス」とか、この場にきた経緯などもインパクトあありました。
インパクトといえば子供を探すためにプラットフォーム乗っかって一緒に移動してくる女性も映画全体にわたってかなりぶっ飛んだ行動しててすごかった。主人公にとっては救世主的な役割もはたしますが、かなり凶暴なタイプなのでこれはこれで怖いっていう。探している子供っていうのも実在するのかどうか、妄想なのか?っていう見方もできますしね。自殺者が出たり、あるいは同室同士で殺し合いをしたり過酷な状況でおかしくなってくのはありえるし、ゾクゾクしました。
2番目のゴレンのパートナーが重要で、この人の『必要な食事さえ取れば全員に行き渡る』という価値観が彼のその後に影響を及ぼします。わざわざ縦構造にしてるから余計にわかりやすいですが、建物自体が「格差社会」そのものなんですよね。上の方はそれこそ飽食ってほど得られるのに、下に行けば行くほど厳しくなるっていうのはもちろんのこと、下の奴らに向かって唾を吐くとか、下の時に苦労したから階層移動で上に来たら今度は自分が思う存分食べるんだっていう自己中心的な思いなどなど、見てる人に考えさせる効果があると思います。
ほとんどその存在がつかめない管理者(一時期はやったデスゲーム系っぽいですね。)、このシステムを運営している存在も、「そんな状況でも全員が助け合うようになるかの実験」をしているのか、あるいはそういう人間の汚い本性を「嘲笑っているのか」全然わからないですし、だからこそゴレンは「俺たちの意思を見せる」と、新たな目的を得るわけです。
それが『最下層までパンナコッタを守り切る』という奴ですが、ちょっとびっくりというか残念なのが、結局は武力行使になっちゃうのがね……。もちろん分かってくれる人もいるんですけど、すでに触れた通りもう意思疎通ができる云々じゃない、食べ物がきたら食べる、何がなんでも生き延びるってモードになっちゃってるから、通じない。(栄養が足らなくて、とか解釈することもできそう) 「従わないと食べ物にウンチするぞ」って脅してた頃が懐かしいくらい、ボッコボコ。日本刀とか出てきます。
そうやって守り切った先に何が待ち受けているのか、そして一番下には何があるのか。ちょっとだけネタバレすると、残念ながら「高みの見物してる管理者とご対面して〜」みたいなシーンはありません。そういうスカッとを期待してたり、あるいはどういう意図があってだとか、細かい説明が欲しかった人は肩透かしを喰らうかも。しかしその後の展開を示唆するシーンがあるので、個人的には爽やかな終わり方じゃなかったかな、と思います。無理矢理入れられたわけじゃなくゴレンは一応自分の意思でここに来てるから、まあ、的な。
目を背けたくなるシーンも少なくないですし、縦構造のアイディアで勝負してて映像そのものとしてはずっと似たような状況が続くんですが、自分がゴレンならどう行動しただろう。あるいは彼に説得されたらどうだっただろうと考えさせられ、「これを見た人がどう感じるか」自体が実験だったのではないか、そう思わせる映画でした。
6/23に発売、レンタル開始したばかりなのに、Netflixでは29日(昨日)より配信開始。なんと日本語吹き替えもありました。ルシファー主演の遠藤大智さんがゴレン役。気になってた作品なのでそっこうで視聴(笑)
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