新喜劇王 / シャウ・シンチー監督が自身で監督主演をし99年に大ヒットした作品をセルフリメイク。なかなか日の当たらないエキストラ女優。どんなに辛い目にあっても、ひたむきに努力し続け……。

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「少林サッカー」などでお馴染みのシャウシンチーが1999年に監督、主演して香港No.1ヒットとなった「喜劇王」を、主役の性別を変えてセルフリメイク。売れないエキストラ女優がさまざまな困難に遭いながらも努力し夢を掴もうとする、笑って泣ける傑作コメディドラマ。本作でスクリーンデビューとなるエ・ジンウェンが主演を務めたほか、「アイスマン」ほかの人気俳優ワン・バオチャンが体当たりでコミカルキャラを熱演。
誰よりも演技に対する思いは強いものの、死体役などエキストラばかりやらされているモン。家族からもなかなか認めてもらえず、友達は先にスカウトされ、あろうことか恋人も……という散々な状況。落ち目の名俳優との奇妙な縁がきっかけで、一度は諦めかけた夢に挑戦し続けることに。チャウシンチー節とも言えるユーモアがふんだんにありつつ、最後は爽やかに感動できる作品。
あらすじ
エキストラを続けながら映画女優を目指すモンは、役作りのプチ整形顔がスタッフの目に止まり、スター俳優マー主演の超大作『白雪姫 血のチャイナタウン』に抜擢される。だが、マーは過去の栄光にすがる落ちぶれ俳優だった。最悪の出会いは二人の人生を変えられるのか──!? (DVD商品ページより)


タイトルで結構強い言葉をつかちゃっててハードルが上がり過ぎてしまわないか不安でしたが、古き良きコメディドラマをきっちりと描き切ってくれていて、例によって「こういうのでいいだよ」って気持ちにさせてもらえました。彼の監督作品を見たことある人はわかると思うけどかなりコテコテというか分かりやすい、悪くいえば手垢のついたものが多いので若干古臭く感じてしまう部分もあります。そして加えると最後のハッピーエンドでカタルシス、スカッと感をえるための「虐げられれるシーン」が結構エグくてですね、そこで辛い気持ちになるのも一応ご注意ください。女性だから、とか一才お構いなしの散々な目にあうのよ、マジで。

そもそも劇中で撮影されている作品ですら、毒林檎ではなく毒バナナを食べたら(生えてきて)男になってしまった、という設定だし、内臓が飛び出たということででソーセージを武器に戦ったりしてます。「おっさんが白雪姫の格好してるから笑える」っていうのが今の時代的に少しアレかなぁ、って。そもそもワン・バオチャン演じる大スターのマー先生ってのが既に過去の人扱いで、本人はすごい偉ぶってるのにそんな役をやらされている痛々しさとかが哀愁を誘います。これはかなり主人公モウと対照的な存在でしたね。

モウは中盤に心折れるまでは本当に不屈の精神で食らいついてていて、マジで好きになります。どんなにひどい役でも一生懸命やってるし、それがチャンスに繋がると信じてる。宇宙が滅亡しても無理だ、って言われても「その後は?」って聞けるメンタルの強さ。整形までしちゃう(大失敗するけど) 。予告動画でも使われてるけど父親に怒られてる時ですら「そんな怒り方はリアリティがない」とか言い出す始末だから、いい意味で【演技バカ】なんですよね。

それなのになかなか芽が出なくて可哀想なんですけど、決して味方がいないわけではない。特に彼女の両親がとても良くて、口では厳しくしてても心配でたまらなくて、こっそりサポートしてるのはグッときます。最後のオーディションに向かうシーンはマジで泣いた。この家から早く出てけ!って言ってるのに、電車賃とか渡しておまけに「家の鍵はもったか?」って聞いてるの最高です。後はエキストラ仲間の人も良かったな。あの人と恋人になってもそれはそれで幸せになれたと思うけど、やっぱり演技こそがモンの生きがいだからダメかな。逆に、自分がスカウトされたら簡単に見限る友達とか、前述の恋人とかはほんと腹立ちました。

モウとマー先生の化学反応で完全に逆転してくのも面白くて。マー先生の大失敗で笑われ者になるもそこから腐らずにカムバックしたのが偉かった。それはやはりモウの影響が大きくて、自分を恥じて今度は彼女を励ましてくれるところがさすが名優なんですよね。「夢を諦めたって聞いたら気分悪くなったよ」ってはっきり言ってくれるのカッコいい。女優として彼に見出されたのとは少し違うけど、本当に運命の出会いだったと思う。

予告でドレスで抱き合う二人が映るし、この手の作品ではこうなるよな、って展開で最後まで駆け抜けていくんですが、王道は王道なりの良さがあります。特に「彼女はエキストラ女優でした」って過去の出演作が流れるところは親御さんと同じような気持ちになってめっちゃ泣けてきた。頑張ったね、って。オリジナル版を含めてこの映画でやりたいのってそこでしょうからね。努力はいつか実を結ぶって。シンプルだけど胸を打つメッセージ。同じような女優志望の子に話しかけるところもベタだけど良かった。

割と予想しやすいストーリーではあるものの、チャウシンチーのギャグセンスでほんとずっとニヤニヤしてた。まさに笑って泣けて、という映画なんでいろんな人にすすめたい。日本語翻訳も頑張ってて、よく聞いてると色んなお笑い芸人のギャグとか曲名、駄洒落なんかを散りばめてて直訳じゃ伝わらない笑いを再現しようとしてるのが伝わりました。チョリソーで超理想。超超超超いい感じ♪とか吹き出しちゃったよ。

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2022年5月現在、字幕、吹き替えともに見放題対象です。

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