アールは軍人を退役後、デイリリーといいう植物の栽培で成功し、品評会でも大人気。しかし家族のこととなると二の次になってしまい、娘の結婚式さえ忘れる始末。そのことで少しずつ疎遠になり、時代の流れとともに商売も縮小。自宅差し押さえの危機に陥る。そんな折車で荷物を運ぶ仕事を紹介され何度も繰り返すが、ある時その中身が麻薬だと知ってしまい……。
イーストウッドのほか、彼を追う麻薬捜査官役でブラッドリークーパーやローレンスフィッシュバーン共演。主人公の娘役としてイーストウッドの実の娘アリソン・イーストウッドも出演。
あらすじ
90歳のアール・ストーン(クリント・イーストウッド)は、家族を二の次にして仕事一筋に生きてきたが、商売に失敗した果てに自宅を差し押さえられそうになる。そのとき彼は、車で荷物を運ぶだけの仕事を持ち掛けられる。それを引き受け、何の疑いも抱かずに積み荷を受け取っては運搬するアールだったが、荷物の中身は麻薬だった。(シネマ・トゥデイより)
前述の通り兼任は08年のグラン・トリノ以来、出演というか主演としても12年の「人生の特等席」以来となるのでかなり久しぶりっですが、今回も相変わらず「カッコいいおじいちゃん」としてさすがの存在感を出してましたね。上記あらすじの通り植物栽培界隈ではその仕事ぶりだけでなくかなりの人気者で、あまり口は良いとは言えないものの憎めない愛されキャラって感じ。だからいわゆる偏屈じじいとも違いますね。その分犠牲になってるのは家族で、娘の結婚式さえすっぽかしてしまう放置っぷりなので、妻は呆れ、娘はマジギレって感じでずっと絶縁状態。
劇中ではネット通販の台頭なども理由っぽく描かれていましたが、時が経つにつれて事業はだんだん小さくなり、ついにオンボロトラックで方々回るような寂しい日々に。孫の結婚の前祝いにも「居場所がないから来ただけでしょ」なんて娘に悪態つかれてしまいます。これ冒頭で書いた通り実の娘が演じてるのでなんとも言えません。yahoo!映画の解説欄のタイトルに「イーストウッドの回顧と贖罪を忍ばせた」なんて書かれていますので、彼本人としても仕事仕事で家族との関係性が良いとは言えなかったのかも知れません。
という状況の中で美味しい仕事があったらやってしまうよね、という意味ではとても理解できるんですけど、中身が麻薬だって3回目くらいでやっと気がついたのは笑いました。なんかおかしいぞ、犯罪じゃないか?って普通は疑っちゃうと思うんですけど、そこが藁にもすがる想いゆえみえなくなっていたのか。しかもそのタイミングでおまわりさんwith警察犬と遭遇してかなりピンチ。さすが年の功っていう切り抜け方するんで面白かったです。実話だからこそすごいのですが、90歳ですよ、90歳の運び屋。だからこそ他じゃ見ないようなキャラで笑えます。
まずルートを勝手に帰る。美味しいサンドウィッチ屋さんがあれば寄り道しちゃうし、自由すぎ。そこが逆に麻薬捜査官を撹乱できて高評価に繋がるのもニヤニヤ。さらには自分のお目付役の若者に「こんな仕事からは足を洗え」って説教までしちゃう。長生きしてるからこその余裕か、ほんと怖いもの知らずですごいっす。終盤あたりもすごい予定外のことをするし。
一方彼を追う立場の捜査官たちも良いキャラしていて、ブラッドリークーパー演じるコリンが、麻薬組織末端をスパイにしてちょっとずつアールに近づいていく姿はドキドキしました。実際別件で摘発に成功するシーンもありましたし、他の映画みたいに腐敗してるわけでもないし、実力あるのも良かったですね。だからこそ途中、ダイナーでアールと鉢合わせするときの緊張感がたまらなかった。ガサ入れして小物を捉えてるところを目撃してるので、アールの方は捜査官だと知ってて、だけどコリンはまさか追ってる運び屋が目の前のおじいさんだとは思いも寄らない。「操作のせいで家族の記念日を忘れた」という彼にアドバイスまでしちゃうし。最後の最後に判明するところの「あんただったのか」もこのシーンのおかげでよりインパクトありました。
そうそう、家族なんです。冒頭でも触れましたが、映画の脚本を作るときに大幅に盛り込まれた要素のようで、アールの1番の目的は「家族との繋がりを元に戻したい」ということなんですね。お金を手に入れたことで孫娘の結婚式を豪華にしてやれたり、ちゃんとした格好で晴れ舞台を見に行けたり。ちょっとずつ距離が縮まっている。まあ奥さんに関しては「こういう人だからしょうがない」って初めからわかっていたような気もするんですけどね。その奥さんが病に倒れて、仕事か彼女かに迫られる。断れば命の危険もあるけど……という中でちゃんと正しい選択をしてくれたのは良かった。「途中で俺たちの指示を無視したな、と組織にやられる」「捜査官につかまって逮捕、会えずじまい」みたいな後味悪い結末だけはやめてくれよ〜と、これまた祈るように見守ってました。
判明する、って書いちゃったのである意味ネタバレになっちゃってますが、最終的にはその罪がバレてしまいます。犯罪犯してそのままってわけにはいかないですよね。でも一番心残りだった家族のことを今度こそ大切にできたし、終わり方としてもすごく爽やかだったので、とても晴れやかな気持ちになれましたね。アールがずっと植物栽培をしてたっていうのもうまい形で活かすようになってましたし。
まだこのブログでは紹介してない「バリー・シール アメリカをはめた男」というトムクルーズの映画も同じく麻薬の運び屋(飛行機)でしたが、あちらはいくつものピンチ襲来でめちゃくちゃハラハラする面白さ。こっちはイーストウッドが鼻歌歌ったりおかし頬張りながら自由に運転する小気味いい映像が流れて、ロードムービー要素も楽しめましたので緊張はあるもののゆったり見れるイメージ。家族愛にジーンと来ちゃいますしね。ずっと気になってたのがNetflixに来てくれて良かったです。
吹き替えは多田野曜平さん。お茶目なおじいさんとかをやらせてもぴったりな方ですが、イーストウッドの渋くてカッコいい役に似合うとても素敵な声でした。インタビューによるとイーストウッド作品の山田康雄さん吹き替えの追加収録に参加されていて、今回はじめて全編担当とのこと。全然違和感なかったです。
余談ですが原題はThe Mule。俗語で麻薬などの運び屋のことなのですが、僕が今ハマってるPS4ゲーム「デスストランディング」という運び屋ゲームにもミュールという存在がいるのでなんが繋がりを感じちゃいました。
Netflixにて吹き替え版を視聴。
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