喫茶店でバカにされてても言い返せないほどの気弱な男ケイシー。夜道にヘルメットの男たちに襲われてしまい、一度は護身用の拳銃を買おうとするのだが近所の空手道場を見つけ体験入学することに。そこで教えるセンセイにアドバイスを受け、昼の部の正式参加、そのうちによりハードな修行を行う夜の部にも招かれるように。少しずつ男らしくなっていくケイシーだが、センセイには裏の顔があり……。
アレッサンドロ・ニボラ、イモージェン・プーツら共演。
あらすじ
事務員として働く小心者の青年ケイシーは、夜道でヘルメットを被った男たちに襲われ暴行を受ける。自衛のため拳銃を購入しようとするケイシーだったが、近所の空手道場で体験入学を受け付けていることを知り参加することに。正式に道場に通いはじめたケイシーは、カリスマ指導者“センセイ”の指導のもと空手にのめりこんでいき、やがて秘密の夜間クラスへの参加を許されるが……。(映画.comより)
原題は"The Art of Self-Defense" なので自己防衛術、とかなんですが、邦題ではっきり「先生が怪しい」って宣言しちゃってるんで若干予想ができちゃうのは少しもったいないかも。でも上記予告動画でも色々出てるし、仮にその情報がなかったとしても「なんか裏がありそうだぞ」ってオーラは出てきた段階からプンプン臭ってるので安心してください。
とにかくジェシーアイゼンバーグの「なよなよ青年」っぷりがめちゃくちゃハマってて、僕もこういうタイプなのですごく入り込みやすかったです。同僚の輪の中さえ入れないの悲しいし、彼らが読んでる本をこっそりコピーしてくるのとかの【染みついたヘタレ根性】が泣かせます。そこから空手道場に通うことで少しずつ変化が訪れていくわけですが、そこもかなりのギャグになってて。
元々この映画を知ったのが映画情報を発信してる方の「ファイトクラブ」との対比的なTweetで、あの映画で強調された「男らしさ」と真っ向から皮肉ってるんですよね。肉体的に強くなることが、結果的に精神の余裕につながっていくのは間違いないことなんですけど、「ヘビメタを聞け」とか「凶暴な犬を飼え」ってのは明らかにやりすぎ。でもセンセイを信頼してるから従っちゃうし、まるで催眠術のように効果が出てくる。
帯を身につけてないと強くなれない、やっぱりダメだ、と思った主人公がとった行動も面白くて。あのあたりからセンセイにして見れば「こいつマジでちょろいな」って思ってそうなんですよね。裏の顔として、ああいう従順な生徒がいるに越したことがない。そういう奴らをカモにしているって意味でめちゃくちゃ怖いし、サイコパスって感じ。でも依存してるから全然気がつけない。
「男らしさ」については紅一点のアンナの処遇も関わってきて、あまりにも古すぎる価値観によってずーっと虐げられてきたことや、かつて起きた事件などを通していかに間違ってるかがここでも強調されている。女の人一人で危なくないのかな、とか、恋愛模様が描かれる?と予想しなが見てたわけですが……。それ以上にセンセイの恐怖が強すぎて。
中盤からそういう裏の顔が見えて、ケイシーのセンセイへの態度が心酔から怒り、恐怖へと一気に変化してくのも「カルト宗教や催眠術から目が覚めた」っぽくて面白いし、一度反発した際の結末もあまりに情けなくて笑っちゃった。見えなかった部分が明らかになるのも気持ちよくて、ケイシーの立場になるとすごく嫌だけどほんとよくできたシステムだなぁって感心しちゃう。ほんと「恐怖のセンセイ」だなと。彼に逆らうことを初めから諦めた感じとか、いろんなどうして?がスッキリしていく見せ方はうまかった。道場にあんなものまであるとは。
バカにされてたケイシーだけど賢さと度胸はあるし、何よりもそういう呪縛から解き放たれたこその選択肢を用いることによってああいう展開になる。かなりブラックだけど、不思議と爽やかなんですよね。達人の技とか、事件から時間が経ってることなど伏線が回収されるし、空手そのものは悪くないしね。
若干ショッキングなシーンもありますが、皮肉ったコメディとしてとても面白かった。
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