素敵なサプライズ ブリュッセルの奇妙な代理店 / アカデミー賞受賞監督が送るブラックなコメディ。とある企業が秘密裏に行う「自殺ほう助サービス」に申し込んだお金持ちの男が、そこで出会った別の申込者に恋をして……。

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『キャラクター/孤独な人の肖像』でアカデミー賞の外国語映画賞を受賞したマイク・ファン・ディム監督に夜、ちょっとブラックでファンタジーな世界観のコメディ。
巨大な邸宅に住み、大金持ちの男ヤーコブは、母を天国へ見送ったことでこの世への未練がなくなり、かねて考えていた自殺を試みるも失敗。偶然にも、ベルギーのとある旅行店が「自殺を手助けする」サービスをしていることが判明。その日のうちに申し込むのだが、そこで偶然自分と同じ「お客」の女性と鉢合わせ。言葉を交わすうち、彼女と過ごしたいと思うようになり……。
大人のおとぎ話的な、オランダの不思議な作品。
あらすじ
オランダの大富豪の息子ヤーコブ(イェロン・ファン・コーニンスブルッヘ)は、母の死後に自殺しようとするもあえなく失敗。偶然知ったベルギーの代理店が「最終目的地への特別な旅」のプラン、つまり自殺ほう助を行うサービスを提供していたことから、ヤーコブはどのタイミングで死ぬかわからないサプライズコースに申し込む。ところが同じコースを選んだアンネ(ジョルジナ・フェルバーン)と出会い、心境が変化していき……。 (シネマトゥデイより)


あらすじだけ書いていくと、ああ、死を前に世紀の大恋愛をして生きたくなり、二人は解約してハッピーエンドかなぁ、なんてことを誰もが思うわけですが、ある意味それも間違っていませんが、中盤あたりでもう一捻りあって、アクション要素がグッと増えていい意味で騙されました。なるほど、そうきたか!と。

そもそも主人公ヤーコブがどうも「何考えてるかわからない」オーラが出まくってて、主演の役者さん上手いなぁって思いました。お屋敷の色々なところにいる使用人達の反応から察するに別にやばい人ではないんでしょうし、劇中で明らかになる、彼がよくいくレストランや、ダンスのことなどを考えれば、ごく普通の男性なのに、どうも生気がないというのか、体温を感じにくいタイプ。
これ、あえて感情移入しにくくしてるのではって思いました。いくらなんでもいきなり自殺を考えたり、それを手助けするサービスがあってもすぐ飛びつくなんてこと、やっぱり現実じゃありえないですよ。何かに絶望して、っていうのならまだしも、そういうのもないし。

それらの理由だと思われることがらは、中盤あたりに当人の口から語られます。「感情が沸き起こりにくい」とすればいいのか。ヤーコブのこれまではもしかしたらとてもつまらないものだったのかも知れません。だからこそアンネとの出会いが、彼の心を変化させた。月並みな表現ですが、それまでモノクロだった世界が、フルカラーになった感覚なのかなって思いました。

そうそう「自分が生きたい」というよりも「彼女に生きていて欲しい」が上回ってる印象を受けましたね。二人ともサプライズコーズで、いつ死が訪れるかわらかない中で、ついつい安否を確かめたくなってしまう。変に心が揺れるから、一思いにすぐにでもやってくれ!ってテンションになっちゃうのも面白かったです。

もしかしてこれが「死ぬシナリオ」か、と予想したものの、結果的には生きてしまった直後の「できることならあなたと死にたいと思いました」っていう(この時点ではまだ"愛の"とは言えませんが)告白は、他の作品じゃなかなか出てこないセリフなのでニヤニヤしました。この辺りからの「ヤーコブ早く自分の気持ちに気づけよ!」っていう感覚は、ラブコメを見てる時のそれでしたね。

全体の6〜7割までほとんどヤーコブ目線で物語が進んでいくため、前述の「一捻り」に気づきにくかった気がします。ただアンナもアンナでヤーコブの人となりを知っていくうちに心境が変化してくって言うのも王道で良かったです。

ちょっと意味合いが違いますけど、「いつ死が訪れるかわからない」と言うハラハラ感もあるし、ラブコメ要素もあるし、で、この映画がどう決着するのか!って言うワクワクがずっと続いてて良かった。最後にもグッとくるサプライズ的なものがあります。

数年前に予告映像見て気になってたはずがすっかり忘れていたのですが、Huluで配信されて無事に視聴できて良かった。予想と違う方へ展開しましたが、とても爽やかに見終われました。

吹き替えもあったのでそちらで。エージェントオブコールソンでお馴染みの村治学さんがヤーコブ役でした。

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