西遊記 女人国の戦い / 超有名な物語を題材にした「モンキーマジック」シリーズの第3作。女性だけが暮らす秘境に迷い込んだ三蔵法師一行。そこでは男は毒であるとされ、処刑の危機。しかし女王は三蔵法師に惹かれていて……。アクション要素たっぷりの感動ドラマ。

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近年の実写版「西遊記」は2つあって、乱暴な言い方をするとこちらは真面目な方。(チャウ・チンシーのシリーズの方がよりコミカルです) 三蔵法師役にウィリアム・フォン、孫悟空役にアーロン・クォックといった前作キャストを引き継いでの第三弾となるこの映画では、サブタイトル通り女性だけの秘境「女人国」に迷い込んだことで起きる騒動を描きます。古くからの言い伝えで「男は毒だ」と聞かされているため三蔵法師たちは処刑されかけてしまうのですが、初めて男を見た女王は興味津々。話を聞くうちに二人は惹かれあっていくものの、天竺を目指すという旅の目的との間で揺れ……。
かなり原作に忠実、VFXを駆使した圧倒的な映像でアクションを見せてくれるものの、それ以上に切ない人間ドラマとして楽しめる冒険ファンタジー。女王役にチャオ・リーイン、そして河の神役であのリン・チーリンも出演。
あらすじ
天竺への旅を続けていた三蔵法師と孫悟空、猪八戒、沙悟浄の4人が秘境の地で女性だけが住む女人国に迷い込む。男は残忍な生き物で国を滅ぼす毒物であるとの言い伝えがある女人国で囚われの身となってしまった4人は処刑されることとなるが、初めて目にする男性に興味を抱き、三蔵法師に心を奪われた美しい女人国女王は、4人の救出を考えるようになる。しかし、そんな女王の前に国の規律を重んじる冷酷無比な国師が立ちはだかる。(映画.comより)


先にも触れた通り、チャウチンシーが手がける「はじまりのはじまり」「妖怪の逆襲」のラインとは別の、「モンキーマジック」→「孫悟空VS 白骨夫人」→「女人国の戦い」(この映画)の方。ちなみに前作もこのブログで紹介しております。

孫悟空VS白骨夫人 / 「最遊記」を題材にしたアクション作品第2弾。三蔵法師と3匹の妖怪。旅を続ける彼らの前に、手強い敵が立ちはだかり・・・。
http://xn--qfusdo8o71s.seesaa.net/article/Gokuu-vs-hakkotsu.html

そこでも書いていますが、このシリーズは戦闘力という意味では悟空が頭ひとつ抜けてる感じで、他二人は「アニキ!」とサポートしてる印象。今回も主なバトルシーンは悟空ばかり活躍していたように思います。というかそもそもダイナミックな映像でかなりカッコよく見せてくれたんですけど、それ以上に人間ドラマとしてかなり感情移入しちゃって、おまけと言ってもいいくらいでした(バトル自体の長さが短いというわけではないです) サブタイトルから大量の女性たちがクモとかに変身して襲ってくるという流れを勝手に想像してたんですけど、そういうお話じゃなかった。

女人国と聞いた時点で連想してたことですが、ワンダーウーマンの故郷「セミッシラ」と共通点があるので、お話の展開的にもかなり似たシーンがありました。具体的に「初めて男を見た女性たちの反応」というくだり。そこまでの掘り下げはないものの、取り調べというスタイルで三蔵法師一行それぞれに女王とその部下たちが担当して話をしたわけですが、タイプが違って面白かったです。そこから女性だけなのにどうやって代々続いてるのか、人間とは別の存在なのかと疑問を持ったところで「子どもを宿す水」が登場。この男だけどお腹が大きくなる、そしてそれを解決するっていう流れはどうやら原作西遊記にも登場するらしいですね。前回も思いましたが、このシリーズの悟空はとても「できる」男だし、三蔵法師の旅の意義を心からわかってるんですよね。だから自分が悪役になってでも旅の成就を優先する。
女王のとのラブロマンスもそうですが、三蔵法師が「一人の人間としての普通の幸せ」を求めて、旅は諦めるっていう方向になびきそうになる。そこに彼の人間臭さ、未熟さを感じて面白いなーって感じますし、対照的に大きい目的を見据えて行動できる悟空のカッコ良さも際立つ。毎回笑わせてくれるもう一方も好きですけど、こっちのシリーズもやっぱり好きです。

もちろんこの映画にコミカル要素がないというわけでもなくて、ちょいちょいギャグシーン挟みますし、最初ら最後までシリアス、宗教的いっぺんどうってわけでもありません。個人的に良かったのは、処刑シーンでやられたふりをする流れ。幽体離脱して見せる悟空に対して「さすが主演男優賞」という演じてるアーロンクォック本人いじりと、「ちょっと、ちょっとちょっと」という「ざ・たっち」を彷彿とさせるツッコミをするところ。あとはまあ猪八戒の変身とかニヤニヤポイントは結構ありました。

三蔵と女王というカップルだけでなく、国師という女性の悲しい恋物語もかなり切なかった。女人国と言いながら1番メインとなるバトルとしては河の神なんですが、彼(?)の人間形態と彼女は惹かれ合い、しかし国の未来のために引き裂かれたという過去があるのです。女性が演じてるんだな、とは思ってましたが、まさかリンチーリンだったとは。調べてびっくりしました。このエピソードも結局は「個人か、それとももっと大きなものか」という選択になっていて、三蔵と重なるんですよね。うまいなぁと。ちなみに井上喜久子さんが吹き替えを担当してるんですが、現在の頼れる大人の女性も、当時の恋する乙女も演じ分けてて、さすがとしか言えなかったです。(オリジナル版キャストは別々なのに)

悟空も頑張るし、その思いをくんでお釈迦様も適度に助けてくれて。でも最終的に心を決めた三蔵がいて再び旅へっていう流れはすごくグッとくる物語で「強い敵がいました、倒しました、次へ」っていう単純な物語じゃないところが良かったと思います。そういうのは別の作品で楽しめばいいのかなって。
シリーズ通してですが登場人物のビジュアル面も正統派の中国ファンタジーぽくていいですし、正直CGが浮いて見えるシーンも少なくないんですけど、のめり込んで見ちゃってるのでそこまで気にならなず、とても見応えありました。
不快になるシーンもないので、どんな人にもおすすめできます。

WOWOWにて吹き替え版を録画、視聴。


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