ロブスター / 独身者がホテルに送られ、そこで伴侶を見つけられなければ動物に変えられてしまうという世界。主人公はついに限界がきて森に逃げ込み、そしてそこで出会ったのは……。鬼才ヨルゴス・ランティモスによる閲覧注意なブラック(ラブ)コメディ。

カンヌ国際映画賞にて審査員賞に輝いた、鬼才ヨルゴス・ランティモス(『籠の中の乙女』『聖なる鹿殺し』)によるブラックコメディ。恋愛至上主義を皮肉る、という言葉では表現しきれない、独特の世界観に誰もが影響を受ける問題作。
独身者はホテルに隔離され、そこで45日以内にパートナーを見つけられないと動物の姿に変えられてしまうという世界。そこにやってきたデヴィットは同じ境遇の男二人と共になんとか相手を得ようと奮闘するが、耐えられず脱走。森へと迷い込むがそこで別のコミュニティの存在を知る。
コリンファレルが主演を務めるほか、レイチェルワイズ、レアセドゥ、ベン・ウィショー、ジョン・C・ライリーら豪華共演。
あらすじ
独身者であれば身柄を確保され、とあるホテルへと送られる世界。そこでパートナーを45日以内に見つけなければ、自身が選んだ動物に姿を変えられて森に放たれてしまう。そのホテルにシングルになったデヴィッド(コリン・ファレル)が送られ、パートナー探しを強いられることに。期限となる45日目が迫る中、彼はホテルに充満する狂気に耐え切れず独身者たちが潜んでいる森へと逃げ込む。そこで心を奪われる相手に出会って恋に落ちるが、それは独身者たちが暮らす森ではタブーだった。(シネマ・トゥデイより)


僕はこの映画の後にメガホンを取った「聖なる鹿殺し」を先に見ていて、その時にいろんな意味で「やばい監督だな」と深く印象付けられていたのですが、彼の名をより一層強めたのがこの映画ってことで順番は前後しつつやっと見られました。ちなみに鹿殺しもコリンファレル主演。罪悪感からとある少年と家族ぐるみで付き合っていたらどんどん奇妙なことが起きて、というホラーです。バリー・コーガン君が不気味すぎて、エターナルズ見てイメージを上書きしなければ。

ロブスターの話に戻すと、まずその突拍子もない設定にびっくりさせられますし、「恋人がいることが当たり前、結婚することが何よりの幸福」という価値観に真っ向から対立して風刺してるんだな、皮肉ったブラックコメディなんだなってのはすぐにわかります。だからってここまですることあるのか?っていうオンパレードで、個人的には笑うという要素はほとんどなかったですね。うまいこと考えるなぁとか、面白いなぁっていう気持ちはあるけど、ゲラゲラってタイプではない。ただただデヴィットはどうなるんだろうって気持ちで見守るイメージです。

ベン・ウィショー扮するメガネ君が毎回わざと頭を打ったりして鼻血を出し、出やすい体質の女性とパートナーになることを目指すことは「好かれたくて嘘の自分を演じる」滑稽さを描いてますし、僕らも多かれ少なかれちょっと自覚があったりしてどきっとさせられたり。あるいはデヴィットがデヴィットがあまり興味ない女性からばかりしつこくアプローチされてるところとか「そうじゃないんだよなぁ」っていう恋愛の難しさを痛感しますよね。こんなルールがあるなら、どこかで妥協しちゃえば動物にはならずに済むのに。彼の兄さんをはじめそれでもダメな人がいるってことは、割り切れないってこと。劇中だととある女性が馬になってしまいます。この辺りの設定はファンタジーですが、「誰からも恋愛対象にならないし、こちらもしない」存在になった、という意味では現実と同じなのかなって。

ぶっ飛んだ設定といえばパートナーを作る意欲を高めるために「カップルならいかにいいことがあるか」の小芝居を見せつけられたり、メイドさんが下半身を擦り付けてきたり(一方で自慰行為は禁止で手を焼かれるという厳罰)などとこれまた独特の映像でしたね。その他ベットシーンなどアダルト要素がありますし、R15+指定でした。ご注意を。グロ方面も結構えぐい。

中盤あたりでデヴィットは割とドライで露悪的な女性と親しくなり、彼自身も傍若無人な振る舞いをするようになりますが、とある動物が犠牲になったりしてついに限界が。これは僕見てても「妥協するにしても他の女性の方が良くないか?」ってなるのでやっと目が覚めたかって感じ。いわゆるサイコパス的な怖さがありました。そして逃げた結果、あらすじの通り森へと辿り着きます。

そこから新章スタートで、レイチェルワイズというヒロインが登場。森のコミュニティのリーダーとしてレアセドゥも出てきます。ダニエルクレイグのリアル奥さんと、ボンドガール。ベン・ウィショーもQですね。こっちはこっちで恋愛はご法度。さらにはホテルの面々を小馬鹿にしていて、カップルで生活してるところを襲撃しては現実を見せようとしてます。皮肉をさらに皮肉るこの構造。好き同士だっていっても最終的には自分が一番可愛いっていう痛いところを全力でついてくるんだもんなー。何が本当か揺らいでしまうよ。
そうやってこっち側を試しつつ、だんだん惹かれていくデヴィットとヒロイン。とんとん拍子でいくかと思いきや、更なる悲劇が待っていて……。

タイトルにロブスターってあるから劇中で彼が決めた「もしも動物に変えられるなら」とあげた言葉通り最後にはロブスターになってしまうオチを恐れていたんですけど。前述の通りホテルは出てしまうので、ルールからは自由になる。ある出来事があった時、彼が取った行動は……。
一番すごいのはラストをあえて濁して、想像に委ねてるところなんですよね。エンドロールであの音が聞こえるし、とも受け取れるし、愛のために。とも。個人的には最後のシーンがちょっと長すぎるので片方に傾いているんですが、「どっちにも取れる」ということにしたい。
むしろ散々恋愛とかパートナーのことを皮肉りながら、映画のラストで『あなたがデヴィットならできますか?』って爆弾落としてしめるっていう監督のイジワル(?)なんだろうな、ってこれまた忘れられない作品になってしまいました。

R指定だし、テーマが重いし、明るい気持ちで見る映画ではないものの、確実に愛について考えさせられますし、監督が何をやりたいかってのはわかりやすいので、「怖いもの見たさ」など興味がある人はぜひ見ることをおすすめします。一本見ると「あの監督の、」ってのがだいたいわかると思います。

BGMが不気味すぎるんだよなぁ〜。

huluにて吹き替え版で視聴。

Lobster, The [Edizione: Regno Unito] [Blu-ray] [Import anglais]

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