THE INFORMER/三秒間の死角 / FBIの情報屋として麻薬組織に潜入しているピート。最後の大仕事というタイミングでトラブルに遭い、今度は刑務所に入って取引の証拠を手に入れることに。NY市警も絡み……。ジョエル・キナマン主演。

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英国推理作家協会(CWA)賞受賞、スウェーデン最優秀犯罪小説賞受賞の「三秒間の死角」(アンデシュ・ルースルンド、ベリエ・ヘルストレム)を実写映画化したクライムサスペンス。主演はジョエル(ヨエル)・キナマン。監督は俳優としても活躍するアンドレア・ディ・ステファノ。
FBIの情報提供者として、犯罪組織に中枢にまで潜入したピート。将軍と呼ばれる大物を逮捕するため、大掛かりな取引の証拠を掴むという最後の仕事に取り掛かっていたが、予想外のアクシデントが起き潜入していた別の警察が殺されてしまう。妻と娘を人質同然の状態で見張られ、FBIも助けてくれない状況下の中、刑務所に入るよう指示された彼は、今度こそ証拠をあげようと覚悟を決める。事件を調べるNY市警たちも、ピートと潜入捜査の関係に気づき……。
ロザムンド・パイクをはじめ、コモン、アナ・デ・アルマス、クライヴ・オーウェンら共演。
あらすじ
自由と引き換えにFBIの情報提供者になった模範囚のピート(ジョエル・キナマン)は、最後の仕事として麻薬組織に潜入し、そこのリーダーから刑務所内の麻薬取引を管理するよう命じられる。彼は自身や家族に危険が迫ると感じて組織から抜けたいとFBIに申し出るが、捜査を取り仕切るモンゴメリー(クライヴ・オーウェン)はそれを許さず逆に仮釈放の取り消しをちらつかせる。ピートはやむを得ず刑務所に戻って捜査を続けるが、その動きをニューヨーク市警がマークしていた。


面白いミステリ、的な紹介記事で原作の名前を見かけたことはあったのですが、先に実写版を見る機会に恵まれました。劇中でも順主役級の扱いなのでそんな予感はしてましたが、もとはNY市警のグレーンス(この映画ではグレンズ)を主役にしたシリーズの5作目らしいです。いつか通しで読んでみたいなぁ。

この作品自体の主役はもちろんピートで、家族のために潜入捜査をしている良き父親である男の、「孤独な戦い」がメイン。そこに彼を送り込んだFBIと、そのことをどことなく感じ取ってるっぽい組織と"将軍"。さらに今触れたNY市警と、複数の陣営が絡んで行くところに面白さがあります。救いなのは家族には仕事内容がちゃんと伝わっているところで、FBIの女性捜査員ウィルコックスともお互いに信頼関係があるから変に誤解されることもないのがいいです。犯罪組織に潜入しているのだ、任務として刑務所に行くんだ、という部分が見えてないと、家族にさえ犯罪者扱いされちゃってさらに心細いですからね。この辺りの「きっちりやり遂げて、必ず帰るんだ」っていう意志の強さに通じてると思います。『留守中妻に何かあったらただじゃすまないぞ』って言われてチンピラがビビるシーンが好きです。

そのウィルコックスもいい人なのかなーと思ったら、上司ほどじゃないにせよあくまでも「いち情報提供者のためにそこまで危険をおかせない」っていう現実的な価値観なので刑務所に入ってからは一気にピンチになります。組織からの口利きと、さらにFBIの後ろ盾があるからこそ危険な場所でも任務ができるってもののなのに、全然スムーズに行かない。孤軍奮闘っぷりが見てて辛いですし、絶望感が半端ない。なんの事情もお構いないしに規定通りの罰が与えられたとしたら家族の再会はどんどん遠のいちゃうわけですし、結果を出さなければその無事じゃ済まないかも。焦ったと思います。

元々のプランが実行できなくなり、大量の麻薬を取引するのをどうするのかと思ってたのですがその方法がなかなかユニークで。会話の中でドローンって出てきたのはこういうことだったのか、って感心しちゃいます。単に運ぶんじゃないんですよ。ぜひ実際に見て欲しい。最終盤のここぞという場面の策もそうですが、ピートはかなり賢いんですよね。FBIが信用できないから(いつかトカゲの尻尾切りされることも危惧して)彼らとの会話も録音してる周到ぶりだし、あらゆる可能性を見ている。潜入する以上腕っ節自慢のタイプでもありますが、頭脳も強い

ちなみに主演のジョエル・キナマンさんはつい先日も「【画像】世界で最もセクシーな男、こいつに決定する」という掲示板スレッドがまとめられたりしてましたし、男から見ても実際カッコ良かったです。役柄が役柄だけに、ダーティな風貌でしたしね。スーサイドスクワッドにも続投が決定してるので楽しみです。奥さん役のアナ・デ・アルマスさんは次のボンドガールだったりマリリンモンローの主演映画が決まってたりと話題の人ですね。

最初に触れたNY市警の面々もなんかひっかし回しそうだった第一印象から一転、見てる僕らのFBIに対する不信が強まってくのと対照的にこいつらがピートを救う鍵かな、と感じられるようになっていきます。奥さんとしても誰に協力するのが一番いいのかとても不安だったと思うんですよね。犯罪組織の連中も見張ってるし。だから彼らがFBIをかぎまわって、ピートを最優先で考えてくれてたのが良かった。

ストーリーが進むにつれて集団でボコられたり首吊られたりといよいよやばくなっていき、展開が加速。「失敗したら全部終わり」という状況下の中で、FBIを出し抜いて自分も助かるといういちかばちかにかけた精神力がすごかった。おそらくあのシーンが「3秒の死角」なんでしょうけど、思わず声出ちゃった。そういう方法があったのかと。結論から言うと成功するんですが、2種類の死ぬ危険があったりしてほんとハラハラします。

映画そのものの中では最後もろてをあげてハッピーエンド!までは行かないんですが、きっと近い未来に全部丸く収まる、そう予感させるラストなのも良かったですし、悪者がちゃーんと罰を受ける流れなのはスカッと。シンプルに「良かったね」と思わせてくれる終わり方でした。

原作の評価が高いので内容は折り紙つきですが、サスペンスとして見応えあるし、主演はかっこいいしでおすすめ。
Netflixにて吹き替え版で視聴。



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