スプリー / SNSでバズることに取り憑かれた青年カート。自分の車に複数のカメラを設置し、配車サービスのお客を手に掛ける様子を生配信。それでも全然再生されないことに苛立った彼はさらに暴走し……。承認欲求の闇を描くブラックコメディ。

ホラー作品をサブスクで見られる動画サービス「OSOREZONE」の配給第1弾作品として日本上陸した、ウクライナの新鋭監督によるブラックユーモア炸裂のスリラー。『ストレンジャー・シングス』のジョー・キーリーの映画初主演作品。SNSでバズるために、殺人をも厭わなくなってしまった青年の狂気と、彼にターゲットにされる人たちとの戦いを描く。
カートは自分のアカウントで色々な動画を公開&配信し続けていたが、なかなか思うように再生数は伸びず。かつて自分がバイトで世話した子供の方がインフルエンサーになってしまう。苦肉の策として彼は配車サービスの車に複数台のカメラを設置し、その様子を生配信。そこまでは普通なのだが、なんと薬入りの水で眠らせ、最終的に殺してしまう。僅かな視聴者からも「フェイクだろ」と言われ予想に反してバズらないことにだんだんカートは苛立っていく。
サシーア・ザメイタ、デヴィッド・アークエット、カイル・ムーニー、ミーシャ・バートンら共演。
あらすじ
ライドシェアドライバーのカート・カンクル(ジョー・キーリー)はフォロワーを増やしたいという欲望から、乗客を手に掛ける様子をライブストリーミングすることを思いつく。しかし、SNSではネガティブな反応ばかりで、カートが思い描いたような人気は得られなかった。するとカートの怒りは、動画を拡散しようとしないインフルエンサーに向かうようになっていく。(シネマ・トゥデイより)


G指定、つまり特にR指定はついてないもののやってることがグロいのでご注意ください。きっと直接的な描写がないからかな?普通に何人も犠牲者でるし、血飛沫でまくり、予告動画でも返り血をシャワーで流すシーン映ってますけどね……。PG12くらいはあるかも。
どちらかというと心理的にくるものがありました。そもそも車内という閉鎖空間なのが余計に恐怖を煽るんすよね。フィクションだとはわかってるんですが、こういうの見ちゃうとタクシードライバーとかがもし同じようにぶっ飛んでいたら?とか考えそうになっちゃう。絶対ありえないけど。

カートは分かり易いほどにネジがぶっ飛んでいて、劇中でかなりのマジキチスマイル(笑)を披露してくれます。まずいくら再生数が欲しいからって人は殺さないでしょ。それを「超頭良くない??」って感じで紹介していくのが嫌すぎる。そこまで馬鹿ではないんでしょうが、「眠らす」「人気のない場所で殺す」ってすごく単純だからボロが出そうだし、衝動的なところも多々あるから【冷酷な殺人鬼】とはまた少し違う。

人をはねて血がついたままガソリンスタンド行って警官と隣になっちゃうのとか間抜けっぷりがすごいし、ナンパするところもグタグダすぎて笑っちゃいます。間違ってはいないけど、「過激なことをすればバズるはず」っていう一番単純な選択をするような人だからね。あの後輩っていうかバイトで世話したインフルエンサーからも見下されてるのがよく分かる。あのとにかく自分のアカウントを連呼して他人の人気ににあやかろうとするのも悪手っぽいよなぁ。

カートと対照的なインフルエンサーについても一応社会風刺的っていうか彼同様に「注目を浴びるためならなんでもやる」って方向に揶揄しています。特に人気企画とされている『ホームレスにお金をあげて反応を見た』なんてただでさえ趣味が悪いのに、実はヤラセだったという。なんか日本でもそういうyoutuberを見かけました……。カートと最後まで縁のあるコメディエンヌ・ジェシーは(これは他のコメディアン全般ですが)かなりブラックなジョークをかまして笑いをとってて、にも関わらず「再生数にとらわれるのはやめた」なんてトークで拍手喝采。これも当然ステージ上の演出であり、「踏みつけて壊すためのスマホ」を別に用意してるという。こういう風にセルフプロデュースがうまくないと売れっ子にはなれないんでしょうね。

カート本人の奇行としてはその犯罪がだんだんエスカレートしていき、煌びやかなお客さんのせて誰もいないスクラップ場を暴走するところは「絶対これああなるじゃないか」ってハラハラがほんとホラー映画だった。ちなみにミーシャバートンが出ててびっくり。TheO.C.好きだったな〜。その後はグロ度が上がっていくのでそれこそSNSのコメントじゃないですけど「フェイク映像」って頭を切り替えないとキツかった。容赦無く殺すし、被害者の家でくつろぐのが普通に引く。

後半は前述のジェシーへの執着がヒートアップして、思惑通り彼女を車に乗せてからも怖かった。すでに再生数が爆上がりして野次馬も多くなってきたから煽るコメントも多いし、アンケートして「殺せ」が選ばれるところも現代の闇って感じ。如何せんカートが間抜けだからそこからも一悶着あるんですけどね。

一応伏線めいたものもあったりしますが犠牲者の数を考えるとインパクトは薄め。彼にとってはもう注目を浴びることが全てになってしまったんでしょう。こういう風にはなりたくないなぁ。ハッピーエンドはありえないだろって予想してましたが、まさかという展開だったし後日談も後味が悪くていい意味で記憶に残ります。そして幸か不幸か、最終的に有名になってカートにはカルト的な信者が生まれるという構造なのも皮肉な話で、なんとも言えない終わりでした。

R指定はないけどぶっ飛んだ主人公でグロ的な展開があるものの、頭がおかしくてちょっと間抜けな主人公の転落っぷりはブラックな笑いに通じてるし、テンポ良くジェットコースター的なスリラーなのは間違いないので耐性のあるかたはどうぞ。

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