空飛ぶタイヤ / 多くの作品が実写化、ヒットしてきた池井戸潤原作小説を長瀬智也主演で映画化。タイヤの脱輪事故という悲劇。整備不良のひところで片付けられたことに納得がいかない運送会社社長は、自ら調査に乗り出すのだが……。

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WOWOWや、TBSの日曜21時など、現在放送中の「ノーサイドゲーム」を含めその作品の多くが実写、ことごくヒットしてきた池井戸潤原作小説を長瀬智也、ディーンフジオカ、高橋一生らで実写化。監督は本木克英。
ある日起きてしまった、タイヤの脱輪事故。主婦が亡くなったこの痛ましい事件だが、発端となったトラックの持ち主、運送会社の若手社長である赤松は整備不良を疑われ警察から執拗に取り調べられる。しかし最終的な結論は、彼らの整備不良。どうにも納得のいかない彼は、独自に調査を開始。トラックを製作した自動車会社の隠蔽体質が明らかになり……。
孤軍奮闘からだんだんと仲間が増え、最後には本当の悪者が明らかになるスカッとするストーリー。
共演は、ムロツヨシ、寺脇康文、小池栄子、岸部一徳、笹野高史ほか。
あらすじ
トラックの脱輪事故で主婦が亡くなり、整備不良を疑われた運送会社社長・赤松徳郎(長瀬智也)は、警察の執拗(しつよう)な追及を受ける。赤松はトラックの欠陥に気付き製造元のホープ自動車に再調査を要求するが、調査は進展せず自ら調査を開始。やがて大企業のリコール隠しを知った赤松は、会社や家族を守るため、そして自身の正義のため、巨大企業に立ち向かっていく。(シネマ・トゥデイより)

良くも悪くもいつもの池井戸潤作品という感じで、わりと予想がしやすく、例によって最後にはきちんと悪事が白日の下に晒されるスカッとが待ち受けていました。まあそれが人気の秘訣でもあり、こちらも期待して観てるわけですからね。気持ちよかった。
そもそも本来あってはいけない痛ましい事故からスタートするので、空飛ぶ、なんて割とファンシーにも思えるタイトルがそういう意味だったのかよと正直冒頭からものすごい暗くなってしまったわけですが、起きてしまった以上、せめてどこに原因があって、次起きないためにどうすればいいのかをキチンと考えていくのが大事ってのはヒシヒシと伝わってきました。

赤松社長にとっても「言われのないことで(自分というか部下が)責められたくない」ってのもゼロじゃないでしょうが、それ以上に上のような再発防止って気持ちがあるから応援したくなるんですよね。一方で組織の長として、社員を守らねばいけないっていう立場もすごくわかって。笹野高史さんが「先代から勤めている、良き相談役」ポジションとしてものすごい良いキャラをしてるのですが、その辺りで社長とブツかってしまうのもとても共感できました。また一方で、遺族として登場する、亡くなった主婦の旦那である浅利陽介くんにもめちゃくちゃ感情移入します。まさしく「取りつく島がない」って感じで社長を拒絶するのも観ていてとても辛かったのですが、最終的に熱意が通じる終盤が余計に心にくるんですよ。亡くなった人は帰ってこなかったけど、少なくとも無念を晴らす手伝いはできたんじゃないかと思います。

その「原因追求」が難航してくのもまた、池井戸作品の面白さだと思うんですが、最初本当に仲間がいないんですよね。前述の通り社員にすらもう諦めて認めちゃったほうがいいでしょってムードになってるのに、頑張って隠された秘密を暴こうとしていく。孤軍奮闘。ディーンフジオカさんがやってるのは序盤こそ敵のような雰囲気なんですが、案の定ストーリーが進むにつれ……。大企業に務めるもの哀愁というか、立場ゆえの苦悩といった部分は彼が一番グッとくる役柄でしたし、こう書いちゃってますけど「仲間」まではいかないあの絶妙な関係性がすごく良かったです。準主役級の活躍してました。全体的にシリアスな作品なのですが、一人で必死に作業してるシーンにて机の傍に「ウィルキンソン」が置いてあってちょっとニヤッとしました(公開当時はどうだか記憶が曖昧ですが、CM出演してましたよね)

もう一人としては友人役のムロツヨシ。車両製造部っていうめちゃくちゃ重要な場所でしたし、主人公としても心強いキャラだったと思います。個人的にコミカル要素少なめでもキッチリ演じられるのでとても好きです。それこそ池井戸作品なので肝心なところで裏切るのか!?と若干不安もありましたが、実際のところは……。逆に高橋一生さんの役は全体的に予想してたよりも少なめというか、もっと銀行要素バンバン絡むかなーと思ってたんですけどね。ただ小池栄子さん扮する記者とか、そういう「主人公の奮闘のまた外側でも動きがある」っていうのが見えてきて面白かったです。悪い奴同士で繋がっていく、的な。

予告で結構なネタバレになってる気がしますが、後半になって佐々木蔵之介さんが出てきてからの「おーし、ここから反撃だぞ」ってところから胸が熱くなって、前述の通りこっちが求めてた通りちゃんと悪事がバレてとても爽やかに見終われました。せめてフィクションの中でくらい、正義がきっちり果たされて欲しいですよね。一貫して主人公は一生懸命だし、それに答えるように次々に協力者が出てきて最終的に巨悪を倒すっていうわかりやすいストーリー、でもいろんな登場人物の思惑が絡み、一筋縄でいかない難しさ、ハラハラ感などとても見応えありました。これも日曜21時にやってたら大ヒットしただろうなと思います。
実際空飛ぶタイヤは一度WOWOWでドラマ化されてるんですよね。いつかそっちも見てみたいと思いますし、余裕があれば小説も(続きが気になって買った半沢直人シリーズしか原作は読めておりません)


池井戸作品が好きな人もそうじゃない人もお勧めできる作品です。
WOWOWで録画、視聴。

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