シング・ストリート 未来へのうた / 1985年ダブリン。一目惚れした女性を口説くためについた嘘を現実のものにするため、高校生コナーは仲間を集めてバンドを結成し曲作りにはげむ。ジョン・カーニー監督の半自伝的青春ドラマ。

音楽を題材にした名作を次々と送り出し、「ONCE」の劇中曲は第80回アカデミー賞歌曲賞も受賞しているジョン・カーニー監督が自身の経験も織り交ぜながら描いた青春ドラマ。女性を口説くために「僕らのバンドのPVに出ないか?」とついた嘘がきっかけでバンド活動を始めた高校生の頑張りを丁寧に描写。主題歌はマルーン5のアダムも参加した他、今回も音楽への愛に溢れる楽曲のオンパレード。
1985年ダブリン。家庭の問題などから転校したコナーは、そこでラフィーナという女性に一目惚れ。彼女と親しくなるために自分達のバンドのPV(MV)に出てくれないかと依頼。OKをもらった彼はその嘘を現実にするためにまずは仲間を集めることを開始。音楽活動が始動していくが……。
フェルディア・ウォルシュ=ピーロ(のちに「コーダ あいのうた」)が主演をつとめ、ヒロインにはルーシー・ボイントン。マリア・ドイル・ケネディ、エイダン・ギレン、ジャック・レイナー、ケリー・ソーントンら共演。


あらすじ
1985年、ダブリン。両親の離婚やいじめで暗い日々を過ごすコナー(フェルディア・ウォルシュ=ピーロ)は、音楽好きな兄と一緒にロンドンのミュージックビデオを見ることが唯一の楽しみという14歳。ある日、ラフィナ(ルーシー・ボーイントン)を見掛け瞬く間に恋に落ちた彼は、思わず「僕のバンドのPVに出ない?」と口走ってしまう。慌ててバンドを組んだコナーは彼女を振り向かせようと、クールなPVを撮るため音楽活動に奔走する。(シネマ・トゥデイより)


このブログでも過去に「ONCE ダブリンの街角で」( http://xn--qfusdo8o71s.seesaa.net/article/434441853.html ) 「はじまりのうた」( http://xn--qfusdo8o71s.seesaa.net/article/BEGIN-AGAIN.html ) などを紹介してますが、僕にとって監督の名前だけで期待度が高まる人の一人。今回も楽しみにしてたのですが、結論から言うとマジで良かった。過去作でも一番好きかもしれません。

予告動画でも分かる通り、古き良き純度100%の青春恋愛映画。甘酸っぱいって言葉が似合うような、本当に初々しい若者の物語で良かったし、なんなら「こういう日々は帰ってこないのか」と(アラサーにとっては)ショック受けるレベルでしたね。「耳をすませば」的、で伝わりますかね。
主人公コナーはどっちかというといじめられるようなタイプだと思うですが、自分より大人びた女性に惚れたことで頑張って背伸びしようとして奮闘していく。この流れがすごく共感しやすいんですよ、ましてやラフィーナには社会人?っぽい彼氏がいる設定でしたし、ほんとリアル。テレビで音楽PV見てたのもあって、彼の思う「かっこいい存在」を目指した結果「MVに出てくれ」なんて言葉が出ちゃって、それを現実にするためにまずは仲間探しから始める。女の子を振り向かせるためにとんでもないバカをやるってのは世の常ですが、それが同時に青春でもある。見ていくと分かる通り、きっかけは彼女であっても曲作りめっちゃ楽しそうだし、あんまり深掘りされないけどメンバーたちもなかなかいいキャラしてるんですよね。

終盤に5曲連続披露、的なイベントがありますが、実際のところもっと作ってるだろうし、色んなタイプでそこも魅力的でした。僕のお気に入りは「バックトゥザ・フューチャー」に憧れて作ったダンスナンバー。PV撮る時のエキストラが映画見てなくてあんまり伝わってないのも面白かったですが、コナーの理想像っていう形で映画をオマージュした映像と共に披露されるのですごく良かった。50年代のファッション、ダンスなんだけど、めっちゃカッコいい。そして歌詞がいいんですよね。youtubeで検索すると和訳つきが見られます。本編より先に見てもいいよって人だけどうぞ。

ラフィーナもそうですが、仲良くしてる両親とか、普段厳しい校長。そして更にはお兄ちゃんという風に全体が「やさしい世界」に包まれてるのが感動的。現実とは違うんですが、音楽だけはそういう世界に連れて行ってくれる。

その家庭環境も結構リアルで、母が職場の上司と浮気して最終的に両親は別居という結末を迎えます。そこに至るまでことあるごとに口論してるんですが、子供たち3人が「また始まった」とばかりに部屋のドアを閉じるシーンがとても切なくて。両親それぞれにも人生があるとわかっていても、もうちょっと考えてあげてよって気持ちになります。そしてお兄ちゃんね。ラフィーナのことについても的確な助言をくれて、年がちょっと離れてるのもありますがコナーにとって導いてくれる存在で、最初からずーっとカッコ良かった。でも同時にそういう役割をせざるを得なかった辛さも垣間見れて、特に「俺が荒れた場所を分入って進んだおかげで、妹弟は安全な道を歩けてるんだぞ」って爆発してしまうところが泣けました。さっき青春すぎて眩しい的なことを書きましたが、もしかしたらそういう日々はなかったのかも。そして荒れていった。最後の最後にはまた最高の兄貴っで見送ってくれますのでご安心を。

もう一つの大事な要素、恋愛においても素晴らしくて。本当にPVに来てくれた!と浮き足立ってたら彼氏がいることが発覚するし、距離は縮まってるもののなかなか恋人って感じにもなれない。そこに持ってきて、夢のための別れ。約束の場所に来なくて心配してたら、何も言わず去った後というのは辛い。ラフィーナの同居人に「あんたが勝つ方に賭けてたのに」って言われるシーンは悔しさとか情けなさとかですごく共感しましたよ。
でもその後ちゃんと再会できたのは良かったし(予告動画でちょっと出しすぎな感もありますが)、彼女を勇気づけるのもまた「曲」だったというのがエモい。ノリノリの曲が期待されるイベントであえてのバラード。これも歌詞がよかったな。

ONCEとか泣けるけどハッピーエンドとも少し違うんですが、今回はね、ちゃんと二人の恋は……。あの彼らの人生はまだ始まったはかりなんだ!ってすごい元気が出る流れはマジでよかったし、冒頭で触れた通りアダムが携わった主題歌の「Go Now」はそんな状況にぴったりで、めちゃくちゃ爽やかな気持ちで見終わることができました。どんな人にも自信をもって進められるラスト。

いい音楽がたくさん聴けるし、ピュアな青春ラブストーリーとしても堪能できてお気にりいになること間違いなし。
Netflixにて吹き替え版で視聴。


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