志乃ちゃんは自分の名前が言えない / 押見修造の漫画を実写化した青春ドラマ。吃音症でうまく喋れない志乃。人とつるまない同級生加代と親しくなり、歌だけはどもらずに歌える彼女は一緒にバンドを組むことになるが。コンプレックスを持つ全ての人が共感できる傑作。

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アニメ化、実写映画化された「惡の華」などの押見修造の漫画を原作にした青春ドラマ。吃音症に悩む高校一年生の志乃が、周囲と距離を置いてる同級生の加代と仲良くなり、歌だけはどもらずに歌えることからバンドを結成することに。夏休みを利用して人前でも披露できるようになってきたが、空気を考えない言動によって浮いてしまいがちな男子・強に見られてしまい……。
コンプレックス、悩みを抱える全ての人間が共感できる葛藤、成長物語。
主演は南沙良、蒔田彩珠。
あらすじ
周囲とうまく会話ができない高校1年生の大島志乃(南沙良)は、音楽が大好きな同級生の岡崎加代(蒔田彩珠)と仲良くなり、一緒に行動するようになる。積極的に人と関わることが苦手な志乃だったが、加代に誘われバンドを結成したのを機に少しずつ変化する。そこへかつて自分をからかったお調子者の同級生・菊地が参加してくるが……。(シネマトゥデイより)


かなり前になりますが原作漫画は読んだことがあって、その時もめちゃくちゃ泣いた覚えがあるんで身構えつつの市長になったのですが、それでも耐えきれなかったです。これあくまでテーマとして「吃音症」「音痴」「空気読めない言動」にスポットを当ててるだけで別にそれに限った話じゃないんですよね。短所、コンプレックスって誰にでもあるじゃないですか、だから自分のことのように感じてしまうし、葛藤して、必死にもがいて戦ってる姿にグッとくる。

とは言え主人公志乃の状況はかなりハードで、タイトルにもある通り自分の名前さえスムーズに言えないで涙いっぱいためてしまう姿はほんと辛かった。予告動画を引用するときに目に入ったyoutubeのコメント欄でも「心が叫びたがってるんだ」に言及するものがちらほらありましたが、描写としてはあれ以上にエグいと言いいますが、いい意味でリアル。3人目の主役としてすでにあげた「空気読めない」キャラだとは言え、強(つよし)に茶化されてしまうところもいたたまれなかったです。変な話、笑いに変えられればどんなに楽かって話なんですよ。でもそれができないし、周囲もどう扱っていいか困ってしまう。それで余計に声を出せなくなって。
原作者がインタビューではっきり「こんな先生いたらやだなと思いながら描いた」と評していましたが、「緊張してるのかな?」「リラックス〜」とか言ってくるのもそれはそれでキツイしね。もうほっておいてくれよ!って見てるこっちがイライラしました。

そういう日々を過ごしていた志乃こそ、ある意味「孤高」周囲に振り回されずに過ごしてる加代はカッコよく見えたし、仲良くなれたことは嬉しかったと思います。しかも彼女もまた「音楽が好きなのに音痴」という悩みを抱えていて、他人に聞かせることに躊躇してた。劇中でもかつての同級生に「音痴だったもんねー」なんて言われてしまってて、あそこ本当辛かったし、志乃が彼女なりに助け舟出したところも「自分だけじゃなかった」と痛感したからこその行動だったと思います。

夏休み期間中の二人はほんと見ててこっちまで幸せな気分になって、綺麗な歌声と合わさって正しく「青春」という感覚で眩しかった。恋愛要素が絡まないので、変にドロドロがないのはよかったですね。接し方間違えて、喧嘩して、でも仲直りして。すごく純粋で、足りない部分を補い合う姿が感動しました。だからそこに菊池が入ってきたときはちょっと複雑というか、志乃の戸惑いもすごくわかった。「この人の前でなら少しずつ自分を出せてる」ってなったのに、別の人が!?ってなりますよね。

でもその菊池も最初こそウザく見えましたけど、ものすごい空回りしてて、周囲から「また始まったよ」的にあしらわれてる姿を見るつけ、彼もまた悩んでる一人だとわかったり、昔いじめられてた過去が明らかになったりして、ちょっとずつ変わってきましたね。特に「俺が入ったからかな?」と反省したり、謝れるところが好印象。『抜けるのが一番かもしれないけど、でもお前らとバンドやりたいから』っていう空気の読めなさは結構胸熱でした。

映画終盤クライマックスでは作者が作詞し、劇中では加代の作詞作曲という設定の「魔法」も、全体のテーマを表す歌詞にこれまた泣かされますし、その後の展開がね。予告でちょっとネタバレされちゃってますが、志乃ちゃんなりの「心の叫び」がほんと感動的で、こっちもおんなじように顔面ぐちゃぐちゃになっちゃいましたよ笑 全員に理解されなくてもいい。自分との戦いに日々もがいてる同志たちへのエールとも受け取れますし、ほんとその苦しみが伝わってきました。

青春全開なシーンもある一方で、感情移入すればするほど見てるのが辛い、痛々しい描写もあるんですが、そのリアリティこそが胸に突き刺さって、漫画を読んだときの衝撃がよみがった気がしました。繰り返しになりますが、吃音に限らず悩みを持つ全ての人に共感できる作品だと思いますので、ぜひぜひ。

Netflixに3月22日(21日?)にきまして、そっこう視聴しました。




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