主人公のケイは全てのものを記憶する能力を持っており、それは美空の世界を丸ごと巻き戻せる力にさえ影響を受けない。二人がコンビを組むことによって不慮の事故を無かったことにしたり、奉仕クラブの活動として人を助ける日々が続いていたが、彼には胸に秘めた計画があった。一方、能力者を監視している管理室対策室にもまた何やら不穏な動きがあって……。
黒島結菜、平祐奈、(伊藤)健太郎、加賀まりこ、及川光博、玉城ティナ、恒松祐里ら共演。
前編あらすじ
住人の多くが特別な能力を持つ咲良田市。記憶を全部保持する能力を持つケイ(野村周平)と、世界を3日分巻き戻せる美空(黒島結菜)は、芦原橋高校の奉仕クラブに所属する仲。ある日、彼らのもとに、写真の中に入り込む力を絵里(恒松祐里)という少女に奪われた佐々野(大石吾朗)が助けを求めてくる。市管理局の魔女(加賀まりこ)と佐々野の意外な接点に驚く中、ケイは彼が手にする写真に2年前に美空の能力の影響で命を落とした同級生・菫(平祐奈)の姿を見つける。(シネマトゥデイより)
後編あらすじ
絵里(恒松祐里)の記憶操作能力、同級生・智樹(健太郎)の時空を越えて声を届ける能力、奉仕クラブの幽霊部員・陽香(玉城ティナ)の物を消す能力を組み合わせることで、2年前に死んだ菫(平祐奈)をよみがえらせようと奔走するケイ(野村周平)。自分の行動が咲良田市管理局からマークされているのを意識する中、彼は強大な権力を誇る管理局対策室室長・浦地(及川光博)が街の未来を揺るがす計画をひそかに進めているのを知る。さらに計画と菫の関係も突き止め、ケイは美空(黒島結菜)や絵里らと浦地を止めようとするが……。(シネマ・トゥデイより)
※過度なネタバレにはつながらないので後編のあらすじも載せました。
いやー思ってた以上に超能力ものでしたね。もっとこう青春!的なイメージをしてたんですが、主人公がとにかく頭が回るタイプで、実際劇中でも大人を出し抜いておそらく一番使いこなしてましたね。そして基本的にかなりドライな性格なので敵から見ればどこまで先回りしてるか分からなくて不気味なところさえあったと思う。そりゃ「普通の高校生になれよ」ってツッコミ入れられるわ。
それもまあ悲劇を含めてどんなことも覚えていることの影響なのかな、と思うと切ないですし、そう見えても友人を無くしたことをずっと後悔してていて必死になって戻そうとしてるので実際のところとても感情的だし、のちに明らかになる「どうしてリセットできなかったのか」がわかるとさらに身近に感じて主人公としての魅力は十二分にあったと思います。ちなみですがに美空にも菫からも好意を寄せられてるというモテっぷり。なんなら後輩キャラの絵里も……? 女性目線としての高校生等身大な片想いっぽい描写は結構ありますし、アシガールをはじめ僕個人的には元気炸裂!なイメージの黒島さんがとても気弱な、「ケイがいないと私何にもできない」的な女性を演じてるのは新鮮で良かったです。
メインである超能力に関してはかなり色々出てきまして、既に触れた「時を巻き戻す」を含めてかなりスケールの大きいものまであります。細かいツッコミというか若干気になるところもあるにはあるのですが「そういうルール」ってなってる以上納得するしかないです。特に写真を破るとその中に入る能力。あれ応用が効きすぎてて驚きますし、特に前編では2回ほどすごいことをやってのけてるので単純な巻き戻しよりも強いまであると思います。ただケイが周到に計画してた「複数の能力者の組み合わせ」っていうのはちょっとしたロマンですし、協力の賜物って感じがしてテンション上がりましたね。
絵里がグレたこととか、写真の能力者とか、後編にガッツリ関わる室長や、その右腕の「ロック」の人など、それぞれの人物に泣けるサイドストーリーがあるので能力そのものより一人の人間として感情移入しやすかったです。青春ものだから仕方ないけど、単純に子供VS大人ってなってしまってますけど、大人がなぜああいうことをしようとしているのか、そういう価値観になってしまったかというのもある程度理解はできますしね。
全ての始まり、なぜサクラダには能力者が多いのかの理由もきちんと説明されますし、今現在何が起きてるのか判明するのも結構衝撃的でした。
ケイの過去もなかなか切なくて、実の母親とのやりとりも泣けるシーンでしたね。自分がどうやってここにきたとか全部覚えてるのに、相手は……。謝りたいって言ってるけど、何も悪いことしてないと思う。名前のくだりとか、記憶を消しても消せない繋がり、絆を感じられることができたのがせめてもの救いかな。自分の中でケジメをつけるために行ったんだろうけど、ほんと可愛そうでした。
彼が賢いって書きましたが、菫が立てた行動もなかなか大胆。未来がわかるからこそケイを信じることができて、託すことができた。「アンドロイドは〜」がアレにかかってきたりとか、この人の覚悟もすごかったですね。別のベクトルで高校生とは思えないタイプ。敵ではないんだろうけど目的がよく見えないって意味で見てるこっちも惑わされました。
最後はハッピーな方向に行くんだろうなっていうのは予想してましたが、ケイが提案したサクラダの新しい方向。タイトルにもなっている『リセット』は劇中の人にとってかなり意味のある言葉でしたが、彼が考えた末に出した「前提条件を覆して、誰もが悲しまない選択」という落としどころは思ってなかった解決策でしたし、最後の最後には人間の心を動かして理解を得たっていう流れが良かったです。
彼らならきっとうまくやるんだろうな、という希望を抱かせる終わり方で爽やかでした。前編だけだと消化不良、後編だけだと能力や細かい人間関係の掘り下げが足りないので、ぜひ2部作どちらとも見て欲しいと思います。
2018年にWOWOWで録画。
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