スパイダーヘッド刑務所では受刑者を相手に薬の治験が行われていたが、何を聞いても笑ったり、ホチキスを恐れたり。あるいは目の前の相手を好きになったりと効果は絶大。参加したジェフ自身も色々やらされた上、どちらに薬を使うかの選択まで迫られるようになる。
ジャーニー・スモレット=ベル 、テス・ハーブリック 、ベベ・ベッテンコートら共演。
あらすじ
近未来、最新鋭の機能を備えたスパイダーヘッド刑務所。ある天才科学者(クリス・ヘムズワース)が管理するその施設では、人間の感情を操作する薬の治験が秘密裏に行われていた。薬を投与された者は、欲望の抑制ができず耐え難い恐怖を感じるといったさまざまな症状が生じ、最悪の場合には死に至ることもあった。ある日、過去の罪に苦しむ一人の男(マイルズ・テラー)が治験参加を志願して施設にやって来る。人体実験が繰り返される中、男は施設管理者の目的に疑問を抱き始める。(シネマ・トゥデイより)
受刑者に対する治験、というのもこれまたよく聞くテーマですが、最新鋭の科学技術っぽさ全開と閉鎖された空間での実験ということで新鮮な不気味さがありました。モバイルパックという複数の薬剤をセットできるものを腰のあたりに埋め込まれ、科学者が好きなタイミングでその量を注入できる。スマホに触れてまるで音楽の音量を上げるような手軽さでできてしまうのが怖いですよね。
この映画の一番の見どころはクリヘム扮する科学者スティーヴがいかにぶっ飛んでるかということで、ほんと受刑者たちをモルモットか何かとしか考えてない。悲惨なニュースを聞かされても薬の効果で笑いが止まらなない姿を見て喜んでるとか異常者そのものです。さらにほれ薬のようなものをお互い与えた結果いきなり愛し合ってしまう姿で爆笑してますしね。ギャグっぽくしてるけど、自分の意思とは呼べないよなぁって。ヌードこそ出ないものの露骨なラブシーンがあるのでご注意。スティーヴ自身もベッドで一人で使ってたので性的な感情を昂らせたりっていう効果なのかな。
そうやっておもちゃのように扱われた挙句、今度は二人いる女性のうちどちらに薬を投与するかジェフに選択させるという鬼畜さ。恋愛感情が一時的なものかを見るためとか言ってるけど、使うとどうなるか知ってる人間に「同じ辛さを経験させる」のを選ばせるのはきつすぎる。そういうシーンでも『何を迷うんだい?』みたいな爽やかな笑顔のスティーヴのヤバさが際立ちますし、ジェフは自分の犯した罪に対しても囚われてるから、ニコニコしてるのと苦悩してる180度違う二人がより対照的に映るんですよね。
中盤あたりで悲劇が起きてしまい、そのドサクサの中で研究所の秘密を少し知ってしまうのですが薬の名前の意味とかわかってますます嫌な気持ちになります。ちなみに通称名もついてて、日本語版だと一部意訳されてて面白いです。言語機能がアップする「ボキャブラス」とか、笑っちゃうのは「ゲラビル」恐るのは「オビエル」だったかな。前述の通りホッチキスまでビビるのは効果ありすぎますよね。
そういう辛い日々のジェフの唯一の癒しであるのが、調理担当のヒロイン、レイチェル。薬とか関係なしに轢かれあっていくし同じ境遇の中で耐える同志という感じ。でもそれもカメラで見られていて、例によってスティーヴに悪用されるという。この人がなぜ収監されてるかが終盤あたりで判明しますが、これはまあ嘘ついてるのなんとなく予想できますよね。
「治験が完了してないもう一つの薬」についてのサプライズがあったり、彼女を救えるかっていうハラハラはあるんですが、そこからは一気にアクション要素が増加して、文字通り闘うことになります。クリヘムが演じてるくらいだし、「チートデイ」なんてセリフがあることからもスティーヴが鍛えてるのわかりますからね。薬がなければ結構やばかったと思う。そこからの施設内の逃亡劇はかなりシュールで、その伏線をここで回収するんかい!って笑ってしまいましたよ。
原作小説のタイトルが「Escape from Spiderhead」なんで、ジェフが幸せになってくれと祈りながらでしたが、スティーヴに関しても自分が開発した薬のおかげで、という皮肉めいた王道の展開で多少はスカッとしました。
これはやりすぎだけど、こういう薬があったら(例えば落ち込んだ時に楽しくなるものとか)便利だよな、なんてぼんやり考えてたら、最後にジェフからそれを見透かされたようなモノローグが入って、いい話風に終わったのも割と好きです。
面白い設定と、豪華共演による縁起合戦にのめり込めて面白かったのですが、扱ってる内容的に引くというか不快な気分にもなるのでそこだけご注意ください。
Netflixにて吹き替え版で視聴。
当然というかクリヘムはいつもの三宅さん、マイルズは 細谷佳正さんが担当でした。
セッション [Blu-ray]
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