テレビアニメ制作の苦労、舞台裏を描いて大ヒットしたテレビアニメシリーズ「SHIROBAKO」。その数年後を描いた劇場版。水島努監督、キャラクターデザイン・総作画監督の関口可奈味らスタッフや、担当声優ら再集結。
高校時代の友達との夢を叶えるため、武蔵野アニメーションに就職して奮闘した宮森あおい。なんとか「第三少女飛行隊」を完成させてから4年。仲間たちは昇進するもの、転職するもの、さらには全くの別の道に進むものもおり様変わりしていた。新しい社長のもと、仕事自体はあるもののあの「さんじょ」の続編も路線変更を余儀なくされ、何処か寂しい状態。そんなとき一度は企画が倒れた企画で劇場版アニメを作らないかという話が進む。まずはスタッフを集めるところから開始するのだが……。
木村珠莉、佳村はるか、千菅春香ら出演。
あらすじ
上山高校アニメーション同好会に所属する5人は、いつか一緒にアニメを制作しようと誓う。卒業後、彼らはアニメーションの制作に携わり、宮森あおいは自身の夢の実現に向けてまい進していた。誓いを立ててから4年が経ったある日、あおいは劇場用アニメーションの新企画を任される。(シネマ・トゥデイより)
最初に断っておくと、基本的にテレビアニメを知らないと面白さ半減するタイプの作品だと思います。いわゆる同窓会的というか、「この人いたよね」っていう懐かしさと、劇中で時間が経過していることで変わった部分に色々驚くという感覚なので初見の人だとそれが無い分もったいないかな、と。ちょっとしか出てこない人を含めて、とにかく登場人物がたくさん出てくるんですが、昔からの主人公みゃーもりの知り合いというということであまり解説はされません。もちろん現在の所属や仕事内容は字幕で出ますけど、それがどんな作業を担当しているのかとかはテレビアニメでガッツリやってるのでこの劇場版では抑えめ。僕はSHIROBAKOのおかげでアニメがどうやってできているのかを知ったくらいなので、パラパラ漫画の要領でやっている。CG専門で作る人がいる、レベルのふわっとした感覚から一気に「作品を作る工程」が見えてきましたし、同時にそれぞれの立場での業務の難しさ、あるいはまとめ上げる大変さをきちっと描いててほんと『お仕事アニメ』としてものすごい見応えがありました。仮にこの映画だけ先に見ちゃった/見たいという人も、ぜひテレビアニメシリーズも体感してほしい。
そのテレビがいわゆる「慣れない新人が奮闘する面白さ」の要素があったとすれば、今回はそこから少し成長して、より本格的に仕事を任され、さらに周りを見てやらないといけなくなった状況。実際に映画のメインとなるのは主人公が中心となって「劇場アニメ制作」を目指すことであり、冒頭で触れた通りスタッフを集めるところから始めなければいけない。そのくらいムサビはいつの間にか活気がなくなっていたんですね。できたアニメをリアルタイムで視聴する時に幻影が見えちゃうところ切なかった。
「さんじょ」続編もいい意味で頭空っぽにしてみるような、お色気要素マシマシの深夜アニメになってしまっていたり、カーラジオからはアニメ業界自体がちょっとかつてに比べて……みたいなのも流れてくるので否が応でも時の流れを痛感させられます。そういえば現実世界はどうなんですかね?アニメの本数も相変わらずすごい量放送されていて(追いきれない)個人的には勢いがなくなったとは思わないんですけどね。鬼滅の新作とか深夜なのに結構な数字だってニュースやってましたし。
さらには同級生の声優、坂木しずかもレポーターなどの不本意な(?)仕事を任されていたり、フリーになったアニメーター安原絵麻は後輩と同居しつつも食事忘れるほど追われている様子だったりと苦労が見えます。CGの藤堂美沙は後輩とのコミュニケーションで難があるし、一番出世したと思われる脚本家の今井みどりもまだまだ自信が持てないなど、成長してまた別の壁に当たってる感じがしましたね。とても共感しやすい。
そもそもムサビに何があったのか、というのが中盤に明らかになり、そのトラウマを抱えながらも進んでいく姿はこっちも勇気をもらえます。一人落ち込みながら帰るところから妄想ワールド突入してのミュージカルっぽい流れはちょっとびっくりしますが、気分が明るくなりました。やってみなくちゃ始まらないよ、ってみゃーもりが自分自身を奮い立たせてる。
集まってくるところが一番テンションが上がるところで、繰り返しになりますが製作中のトラブルなんかは抑えめ。ただ一度ぽしゃった企画ということで過去の関係者がまた登場して暗雲立ち込めかけるんですけど、あるキャラのナイスな行動によってなんとか解決。ここはちょっとスカッとしました。
で、トントン拍子で行くのかと思いきや、最後の最後で一捻り。流石にちょっとフィクションっぽい展開ではあるものの、それだけの思いで作品に向き合ってる。そこによって限界を超えてしまうって形でグッとくる終わり方でしたね。数秒くらいでいろんな登場人物のその後も見られて嬉しい反面、このお祭りのような時間が終わってしまうのか、という寂しさが一気にきてなんとも言えなかったです。テレビアニメの時に世界観がかっちりできてるから、また続きが見られたというだけでかなり嬉しかったんですけどね。映画1本と言わず、また復活してほしい。
数年ぶりの復活で期待も高かったですが、お仕事アニメとしてもエンタメとしても面白かったです。
U-NEXTにて視聴。
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