主婦の悩みをつづった垣谷美雨の小説を元に天海祐希主演で映画化。タイトル通り、老後に必要だとされている金額に届かないどころか、次々出費や事件が重なって起きるドタバタを笑いにかえて送るコメディ。
老後の資金として2000万は必要という試算が報道されるが、自身も働き、家事育児とお金のやりくりしてきた篤子の家庭にはそこまでの貯金はない。長男は無事に育てあげ社会人になったものの、舅が他界して葬儀の費用がかかったり、契約打ち切り、夫の会社は倒産。そこに持ってきて長女が結婚とお金のかかることばかり。長男一家でもあるため施設で暮らす姑のためにしていた仕送りもバカにできないため、やめる代わりに同居することを提案するが彼女もまたトラブルを持ち込み……。
草笛光子、松重豊、新川優愛、瀬戸利樹、加藤諒、柴田理恵ら共演のほか、友近も友情出演。
あらすじ
節約がモットーの主婦・後藤篤子(天海祐希)は、夫の給料や自身のパート代をやり繰りして老後の資金を貯めてきた。ある日、しゅうとが他界し400万円近い葬儀代が必要になるが、自身のパートの契約が更新されず、さらに娘の結婚が決まって多額の出費に頭を抱える中、夫の会社が倒産してしまう。そして成り行きで同居することになったしゅうとめは、金遣いが荒かった。(シネマ・トゥデイより)
監督が「こんな夜更けにバナナかよ」の前田哲さんですが、この作品もともすれば暗くなってしまいがちなテーマを笑いとばすような明るいコメディ映画。もう名俳優たちの演技合戦がすごかった。自然体演技うますぎる。
もうタイトルの一言でで内容がわかってしまうのですが、上記あらすじの通り次から次にトラブルが起きて「出費」は増えていく一方なのに、収支」は無くなっていくという悪循環。たいていの他人事だとどんなに酷い目にあうドタバタ劇も笑える一方で、人生においてお金がかかる局面ていうのは人によってそこまで差がないんでね。登場人物のどのキャラに一番近い年齢だとしてもなんかこう「将来の不安」がよぎっちゃうと思います。
最序盤のお経に合わせて「葬式はこんな名目でお金がかかります〜」ってお坊さんが読み上げるシーン(篤子にはそう聞こえる)とかはちょっと不謹慎だと思ったけど、お金がかかるのは事実だしなぁ。友近扮する葬儀屋さんのトークに乗せられて予算多めになっちゃうのが辛い。2人で旅に出る番組とか見たことありますが、天海さんと友近さんってリアルに仲良いんですよね。絶対楽しかっただろうな、って思いながら見ていました。
あと篤子さんの頑張りを見て感情移入するからこそ他のキャラクターの言動にちょっとイラッとしたりする部分もあります。贅沢癖が抜けてなかったり、おめでたい話だけど授かり婚のタイミングとか。一番は旦那さんが呑気というかことの状況をちゃんと理解してなくて変なプライドがあるのもね……。友達に頼るのをあんなに引っ張る必要はないと思った。
その分ギャグとして振り切ってるシーン、ありえない展開は逆に頭空っぽにして笑えるから最高でしたね。特に年金詐欺(じゃないけど)バイトのくだりは全部大爆笑。予告動画で返送メイクしてる時の宝塚に関するやりとりが出てますけど、まずその男装で笑っちゃいます。そして三谷幸喜さんを交えた芝居が本当に大好き。声出して笑った。毒蝮さんもいい暴れっぷりだし。
篤子の両親もぶっ飛びすぎでしたね。竜雷太さんのはっちゃけ具合。この辺もあまりにも現実離れしすぎだけど、蕎麦屋始めるとかもあるからなぁ……。
予想通り嫁姑の絆が深まっていくと、一方で今度はそっちが亡くならないかっていう恐れが出てきてヒヤヒヤ。特に「欲しいバッグ」はこれでもかと強調されてるからお金もらうんだろうな、ってなんとなく読めちゃうし。感謝を伝えるスピーチのシーンはわかっててもジーンときちゃったな。たぶん一番やりたいのはこういう部分だろうし。
お金をテーマにしてるけど、やっぱり最終的には人と人の気持ち、優しさが大事ってことなんですよね。一応映画の中でバッドエンドにならないように「当面は大丈夫そう」っていう方向で篤子さん夫婦が好転する出来事が最終盤に起きたりしてくけど、そこも「人との助け合い」がキーになってるから。
あるよね、と共感ポイントも高いけどあんまりにも自分の現実とリンクさせて見ちゃうとほんと大丈夫だろうかって不安になってしまうのであくまでフィクションとしてゲラゲラ笑い、優しさに癒される映画だと思います。
キリッとした役やってるのにこういう大変な目に合う主婦もできちゃうからやっぱり天海祐希さんはすごい。
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