ロン 僕のポンコツ・ボット / スマホのように一人一台高機能ロボットを持ちある時代、唯一買ってもらえなかったバーニーは学校でも浮いていたのだが、ついにロボをゲット。しかしその「ロン」はどこか違っていて……。

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ロックスミスアニメーションによるCGアニメ映画。あらゆる機能を持ったロボットをみんなが持っている世界で、唯一買ってもらえなかった少年。やっと手に入れた廃棄寸前ロボットはほとんど何もできない。しかし、共に過ごしていくうちに彼らは親友のようになっていく。スマホ依存に警鐘を鳴らしつつ(?) 少年とロボの友情を描く感動ファミリー向けアニメ。
祖母と父と暮らすバーニーは学校で孤立していて、休み時間にはおせっかいなスクールカウンセラーが駆け寄ってくるレベル。その理由の一つに、他のみんなが持っている高機能ロボットを持っていないこともあり、誕生日プレゼントとして今度こそはと期待していた。最終的に廃棄寸前だったそのBボットを手に入れるが、ネットも繋がらない彼はほとんど機能がなく、また「友達探し」すらできない。色々と教えていくうちに、そのロンこそが彼の親友になり……。
ロンの声をザック・ガリフィナーキスが担当。
あらすじ
インターネットや写真撮影、通話、ゲームなどの機能を備え、乗り物としても利用でき、友達になってくれる上に仲間探しもしてくれるロボット型デバイス「Bボット」。しかし、孤独な少年バーニーの元にやって来たのは、オンライン接続もできない不良品のロンだった。アナログなロンはバーニーの仲間を探すことができず、バーニーはロンに友達の作り方から教えることになる。(シネマ・トゥデイより)


古い名作で言うとETのような、少年と「何か」が出会って共に過ごし、友情を育んでいくといくという王道の物語をやりつつ、とりあかうのは誰も彼もがスマホを使う現代を風刺するような内容になってて面白いなぁと思いました。「バズるためなら危険なこともやっちゃう」「いいね数だけを求めすぎる」っていうのは当然として、Bボットに『趣味や興味関心の事柄によって、友達を探してくれる』機能があるのがいいですよね。エコーチェンバーというらしいのですが、ネット上で気の合う仲間だけでやりとりしちゃう。するとどんどん価値観も狭まるし、多様性への理解って方向とは真逆。「石が好きな変わり者」「Bボットを持ってない」という他の違う存在のバーニーが孤立してるところからスタートとするので、その辺本当強調されてますよね。

そもそもバーニーのケースは祖母がぶっ飛んでて、父も変わり者なので彼だけの問題じゃないのがかわいそう。小さい頃の誕生日会の話とかほんと居た堪れなくなりました。あいつんちやばいなって印象受けたらかなりダメージありますよね。僕は幸運にも露骨に距離置かれてる様子に遭遇したことはありませんが、例えば誰々は貧乏、みたいなのは小学生ながらもなんとなく察知していような記憶があります。本人は何も悪くないのに、それでいじめられるというのはフィクションでよくありますよね。
ちょうどPS5で遊んでいる「ロストジャッジメント」もいじめがテーマの一つなんですが『浮いてるってことを家族に打ち明けることすらできない』ってのはバーニーもそうで、そこも切なかった。

だからこそロンが登場してからは見ていてこっちまで幸せな気持ちになって、一気に楽しくなります。ネットにつながってないから辞書さえろくになくて、会話がいまいち噛み合わなかったり、基本的な常識が欠落してたりという部分でドタバタをやる文字通りのお笑い要素もふんだんにあるんですけど、その不器用な彼に教えるようにいろんなことを伝えていく中で、友情が芽生えていく。ペットであり、弟であり、親友である、的なあの関係性。「チャッキー」では不具合によって悲劇が起きるホラーでしたが、副題のような「ポンコツっぷり」が、良い方に作用してる。『アルバレスゥ↑?』みたいな口癖が愛くるしいです。

ただその制限がないっていう設定が仇になって、周りのBボットにも感染。あり得ない大騒ぎになったことでヒロインもトラウマになっちゃうし、販売会社にもさらに目をつけられる。この「追われる存在」ってのも王道ですよね。あまりにもジョブズを意識したキャラでいいのかよと突っ込みたくなりましたが、ビッグデータや商売のことしか頭にない経営者と、その共同経営者で元々ロボットを作っていた技術者というタイプの違う二人を登場させててリアルだったし、僕らの実社会でも理想と現実(本音と建前)のバランスってあるよなーって考えながら見てました。SNSでバズって本人は嬉しいけど、それだけ多くの人がそのアプリや広告を見るわけで、結局は彼らの利益にもなるんですよね。

技術者が助けてくれるのは予想できてましたが、主人公たち自らが敵陣に乗り込んでいくのはスリルがあって面白かった。スパイ顔負けなことやっててファンタジー感もありますが、ああいうのは燃える。やっとおばあちゃんが孫の助けになっていたし。一度は離れてた友達も協力してくれたのもグッときました。あの「小学校までは仲良しグループだったけど、だんだんタイプの違いで疎遠になる」ってとてもリアルですよね。でも最終的なピンチには協力してくれる。なんていうか久しぶりに昔ながらのあだ名で呼んじゃう感じ。エモい。

最後の最後に彼らが選んだ道も泣かせるものがあって。これが例えばディズニーなら奇跡が起きたりしたんでしょうけど、とても現実的な締め方でしたね。おそらくバーニーは人間の友人をたくさん得られたから、ってことなんだと思いますけど、切なかった。ETも最後ああなるからな。(ある意味ネタバレですみません)

最初にファミリー向け映画と書きましたが、携帯を使い出したり、SNS依存気味の中高生が見て少しでも使いこなし方のヒントになればいいなと思わせる作品でしたね。人付き合いにおいても必需品なのは否定できませんが、振り回されたり、心を病んだりしたら本末転倒。ドタバタやりつつもそういう強いメッセージを感じました。

ちなみにロンの声は関智一さん。ここ1ヶ月くらいに見た中だと、ジョジョ6部のプッチ神父、ミラベルの父親など、それぞれ役柄の振り幅がありすぎて面白かったです。

ディズニー+にて吹き替え版で視聴。

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