医療用なのか極低温装置の中で目が覚めた一人の女性。なぜここにいるのか、自分の名前すら思い出せない彼女は装置に内蔵されたAIとやりとりしながら少しずつ情報を得て、なんとか生還を目指す。残りの酸素濃度が減っていく中「オミクロン267」に待ち受ける運命とは。
メラニーロラン主演のほか、マチュー・アマルリック、マリック・ジティ共演。
あらすじ
目を覚ますと、極低温装置の中にいた女性(メラニー・ロラン)。自分が誰なのか、どうして装置内に閉じ込められているのかといった記憶がまったく無いことに、彼女は激しく戸惑う。酸素が次第に減少していることに気づいた彼女は、記憶を取り戻そうとしながら脱出するすべを見つけようとする。(シネマ・トゥデイより)
最初に言っておくとかなりネズミ注意の作品。苦手な人は下手したら発狂しそう。主人公の女性は結構早い段階でどうやら「リズ」という名前じゃないかと判明するので今後リズと表記しますが、彼女は何かの研究をしてたようで、フラッシュバック的な形で実験用のネズミがちょいちょ出てきます。さらに終盤あたりで幻覚というシーンなんかはさらに衝撃的な映像なのでね。これが例えば虫とか爬虫類だったら僕もギブアップしてたと思います(笑)
『クロール』もかなりビビらせてもらったので覚悟はしてましたが、この映画でもそういうビックリ系が数回ほどあります。先に言ってしまうと、外がどうなってるかわかった時のあれは心臓に悪い。でもそれ以上に「狭いところに閉じ込められてジリジリと酸素が減っていく」という、いわゆる真綿で首を〜のような精神的な苦しさがとてもきつい作品です。実際こっちまでなんか息苦しくなってくるから、定期的に『深呼吸』しながら見ていたほどです。緊迫感に思わず呼吸も忘れちゃうし。
AIのミロとやりとりしたり、警察やより多くの真実を知っていそうな高齢女性、それから母親など通信したりするので、完全に一人じゃないのがまず救いでしたし、絶望的な状況は変わらないものの新しい情報が次々に入っくるために飽きさせない作りになってると思いました。酸素量とは対照的に、生還の方向へと確実に近づいてるような希望も持たせてくれる。
このポッドがどういう目的でどこにあるのか、ということがわかってくると今度はリズがどんな人間だったのか、そしておぼろげに思い出した夫のことも気になってきて。一方で「それは脳が作り出した幻」とか言われちゃって、これまでわかったことも嘘だった可能性も考えなきゃならなくなる。パニックになっちゃいけない状況なのに、次々に混乱させられるからきつい。先が予想できないって意味ではサスペンスとして面白いんですけどね。
ただ母親とのやりとりで「あれ?」っていう要素があって、最後のサプライズは僕でも予想できました。ただわかったところで状況が好転するどころか、さらに深く突き落とされたような気分になるっていう。言われてみれば序盤から伏線的なものはいっぱいあったんですけどね。そして自ずと謎の女性の正体もわかってくる。
こういうジャンルなのでどのような着地点になるかも読めなくて、本人も救われてハッピーエンドというものから、自分の状況は変わらないけど何か希望を託すような爽やかな終わり、最悪な場合は絶望のまま終了ってパターンもあるので残りわずかになるまでめちゃくちゃ怖かった。ここで書いちゃうと勿体無いので伏せるとしても、ミロとのやりとりで「私の呼び方を●●に変更して」からの一連の流れは本当に泣けました。無理矢理鎮静剤使おうとしてきたりとリズにとって途中脅威ではあったけど、ある意味このAIと二人(?)で戦ったんだよな、ってしみじみ感じます。
回想として使われていた、種子が遠くに運ばれてくシステムも他の要素とうまく絡めてて良かったですし、記憶が定かではないモヤがかかった中でさえ「幸せな日々の記憶」は生きるエネルギーになるんだよな、って感動しました。
ネズミのシーン、ビックリ描写、それから痛そうなシーンと若干目を背けたくなるものはあるものの、このワン・シチュエーションで見事に最後までやりきっててとても面白かった。事実を小出しにすることでこちらもいろいろ予想しながらってのが面白さの秘訣だったのかな、なんて思います。閉所恐怖症の人は絶対見ちゃダメだけど、ヒヤッとする体験を求めてる方、ぜひおすすめ。
絶望的な状況でも必死に頑張る女性、メラニーロランがぴったりでした。
Netflixにて吹き替え版で視聴。
[リミット] (字幕版)
posted with カエレバ
人気ブログランキング参加中。
この記事へのコメント