【Netflix映画】フェイフェイと月の冒険 / 月にすむ女神の伝説について今は亡き母に聞かされてきたフェイフェイ。再婚話が出始め戸惑う彼女は伝説を証明しようと、ロケットを作って月へと向かう。そこには不思議な世界が広がっていて。

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ディズニーでアニメーターとして数々の作品を手がけ『ラプンツェル』の製作総指揮だったグレン・キーンの長編監督デビューとなる、アメリカ・中国合作のCGアニメ作品。父親の再婚話を阻止したい彼女は母との思い出であるとある伝説を証明するために月を目指す。そこで繰り広げる想像を絶する冒険とは。
月には女神チャンウーが住んでいるという伝説を聞かされて両親に愛されて育ってきたフェイフェイだが、大好きな母親を亡くしてしまう。数年後、どうやら父親が再婚を考えていると知り、相手には連れ子もいて、いきなり新しい母と弟を簡単に受け入れられないフェイフェイは月の伝説を証明すれば考え直すかもと独学でロケットを作成。失敗を重ね、ついに宇宙に飛び立つ。辿り着いた月は、想像を絶する世界で……。
日本版EDソング=挿入歌カバーをYOASOBIのikuraこと幾田りらが担当。
あらすじ
いまは亡き母親に、月には女神がいるという伝説を幼いころから聞かされてきた少女フェイフェイ。家族をめぐるさまざまな悩みに向き合いながらも、科学が大好きな彼女は月を訪れて月の女神の伝説を証明しようとしていた。自身の手で宇宙船を作り上げた彼女は、ウサギのパンジーと一緒に月を目指して飛び立つ。月に降り立ったフェイフェイとバンジーの目の前には不思議な王国が広がり、地球では見たことのなかった生き物たちが待っていた。(シネマ・トゥデイより)


どうやら劇中の女神チャンウーというのは「嫦娥」として実際に伝説があるようですね。彼女と一緒にいるのがウサギっていうのが日本の「餅つき」っぽくてどこか馴染みがあります。他にも月餅とか、あとは上海ガニが出てきますし、ものすごいアジア感。そもそもキャラクター全般の容姿が中国人らしさが誇張されてる気がして、他のCGアニメ作品を見慣れてると最初こそ違和感を覚えるかもしれません。

ただ劇中で何度も歌唱シーンが出てきたり、想いが通じて子供が作ったロケットで月に行けちゃうというファンタジー感、そして月の摩訶不思議ワールド具合はディズニー作品を彷彿とさせるものがあり、入り込んでしまえば十分楽しめました。一応補足すると厳密にはロケットは失敗して、チャンウー側が月に迎え入れてくれるって形でしたけどね。

タイトルになってる通りやはりメインとなるのは月での冒険なわけですが、変なプルプル月餅を相手にワンマンライブ(K-POPっぽい曲)やってたりと「天女」をイメージしてるといきなりチャンウーのギャップにやられ、突然始まる「お宝探し」や、チンが活躍する卓球ラップバトル、そして随一の可愛さゴビの登場と、色々とツッコミが追いつかないレベル。月はめちゃくちゃカラフルで、かつそれらの質感がすごく綺麗なCGなのでほんと幻想的で、非日常感を体感できて楽しかったですし、月の裏側だから太陽の光ではなくそれ自体が光ってるという設定が面白かった。

チャンウーの相棒と同じく、フェイフェイの一番の友人もウサギ。バンジーは人間かよってくらい表情豊かで、地上のシーンでもとてつもなく可愛かったんですが(例えば再婚相手に一緒になって警戒してるところとか)、緑色の謎生物ゴビはさらにやばかった。パンジーがしゃべらない代わりなのか、中盤あたりからフェイフェイのコンビとしてずっと活躍してる。おむつを勝手に履いてたり、喜んだ時にハグしながら歓声あげるところとか、舌がナイスアシストする流れとか、可愛さと面白さがほんと素晴らしかった。尻尾とか背中のゴツゴツから犬じゃないんでしょうけど、犬っぽい可愛さがあります。

ちなみにオリジナル版の声はコメディによく出てくるケン・チョンさんがやってます。

ただそうやって派手さばかりが魅力の作品ではなくて、きちんと「人との別れをどう受け止め、前に進むか」を描いてるのがよかったです。調べたところ脚本家オードリー・ウェルズさんがガンで亡くなる前に最後に書いたものだそうで、自分の家族へのメッセージという側面もあるんですね。チャンウーは恋人と離れ離れになってしまったし、フェイフェイは母親だし。特に薬が完成してホウイーと会話できてからの流れは切なかったですけど、大抵の人が何かしらの別れを経験してるわけで、とても共感しやすかったと思います。寂しさの中でチャンウーはだんだんああいう高慢キャラになってしまったのだなとか分かるし。それがフェイフェイという自分に似た存在と触れ合ったことで、前に進もうとできた。登場時とラストで見方がだいぶ変わりました。ウザさがスーパーパワーだ、とか言ってたチンも、序盤から伏線だなと予想してた「壁すり抜け」もちゃんとやってたし、彼なりにフェイフェイに協力しようとしてたりで、若干イラッとする部分はあるものの最後にはちょっとウザさは減ってたかなと思います。

いくら賢くても独力でロケット作っちゃうのかよって部分や、月の様子などのファンタジー要素やカラフルな世界観は一見すると子供向けっぽくありますが、冒険をしていく中での出会いが、フェイフェイの中での成長につながり、折り合いをつけられるようになった、という部分はほんと感動的で大人こそグッとくるものがあるんじゃないか、そう感じます。新しい家族と生きていくことは、お母さんとの思い出を忘れるわけじゃない、どちらも大事にして生きていけばいい。そういう暖かい気持ちにさせられました。
おすすめです。

Netflixにて吹き替え版を視聴。

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