ひとり暮らしの桃子は今のところ大病というわけもなく、図書館に通ってはさまざまな本を読む程度であまり人との関わりをしない生活をしていたが、寂しさが3人の男性の姿で現れ、まるで茶化すように彼女に話しかけるようになる。幻覚だと割り切り無視し続ける桃子だが、日々の中でこれまでの人生を色々と思い出し……。
若い頃の桃子を蒼井優、亡き夫役に東出昌大のほか、寂しさ1~3役に濱田岳、青木崇高、宮藤官九郎らが参加。
あらすじ
ひとり暮らしをする75歳の桃子(田中裕子)は、東京オリンピックの開催に日本中が湧く1964年に、その熱狂に導かれるように故郷を飛び出して東京に来た。それから55年の月日が流れ、母として二人の子供を育て上げ、夫・周造と夫婦水入らずの穏やかな余生を送ろうとするが、その矢先に彼に先立たれてしまう。突然の出来事にぼうぜんとする中、彼女は図書館で借りた本を読み漁るように。そして、46億年の歴史をめぐるノートを作るうちに、見るもの聞くもの全てに問いを立て、それらの意味を追うようになる。(シネマ・トゥデイより)
タイトルだけ突然聞くとなんのことがよくわからないのですが、おら(は)おらで、つまり私は私で一人で生きますよ(そして、逝きますよ)というニュアンス。(違ってたらすみません。)別にオラオラってことじゃないです。
見始める前は「別に独居老人が寂しいなんて誰が決めたんだ」って開き直る系なのかと思いきや、そういうわけでもなく。字幕を表示すると前述の通り(寂しさ1)という風に表記されるので、幻覚として出てくる男性3人は完全に孤独なのを紛らわすための独り言にもにた感覚。自嘲的というのか、自分で自分にツッコミ入れちゃうことって誰にもあると思うんですが、それが人間の姿をしてるんですよね。
劇中でも脳の病気的なアレか?と本人心配する件がありますが、そこはあまり深く掘り下げる箇所ではありません。それ以上に見ていて考え出されたのは何気ない瞬間に、関連した過去の思い出がフラッシュバックするところ。僕自身結構そういうタイプなんですが、桃子のように歳を重ねてもなおそういう感じなのかって非常にリアルに感じました。それは楽しかった思い出でもあり、後悔でもあり。
タイトルでも分かるとおり方言全開なんですが、標準語で、自由な生き方に憧れた桃子。一人で生きている今の彼女もある意味で自由なんですが、「そうじゃなかった時に憧れていた【自由】」と、「目の当たりにした【現実】」とのギャップ。田中さんの自然体の演技もこの映画には必要不可欠でしたが、回想シーンでの蒼井優さんもとても似合ってたと思います。
ただ時間が結構長いし、寂しさ出てくる時とかのファンタジー的な要素もあるしで単純明快なお話だとか、エンターテイメントを求めて視聴すると若干面白さが分かりにくいかもしれません。彼らの声を消そうと地球の歴史を脳内で暗唱するところや、それが最終的に「人生は続いてく」的な方向でまとまっていくのとかもシュールでしたし。
疎遠になっている娘とか、庭の木のこととかいろんな要素出ますからね。「遠くの親戚より近くのホンダ(?)」とか調子のいいこと言って、契約が成立したらそのこと忘れちゃってるとかね。オレオレ詐欺の電話を含め、歳を取るとこういう風になる、こういう事が起きるってのをオフビートに描いてた。結局は「他人はどうとでも言える」っていう事なんでしょうね。
後悔の部分は演技力も相まってなんかこっちまで切ない気持ちになってしまうし、先立たれた夫のこととかも色々感情が揺さぶられるんだけど。そこで逆に開き直っていく桃子さんの強さに救われた気がした。いろんな経験をしてこそ、今の生活がある。
予告ラストに使われてる「おらだばおめだ」って楽しげに笑いあってるところもすごいよくて。これ実は映画のラスト付近。最終的には文字通り「寂しさを受け入れた」っていう分かりやすいハッピーエンドに繋がるんです。孫の存在もいいし、心が離れたと思った娘との繋がりを実感できるところも好き。
タイトルでずっと気になってた作品でしたが、ちょっと予想とは違うものの面白かったです。偏見かもしれませんが、歳を取れば取るほど味わい深く感じられそうな映画。
WOWOWにて録画、アマプラにて視聴。
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