リゾートホテルに宿泊しているキャパー一家。他の家族らと共に隔離されたビーチへと案内され、夕方に戻るという迎えを信じて楽しく過ごす。しかしそこで女性の遺体が発見されたり、切り傷がすぐに治るという奇妙なことが起き始めみんなはパニックに。さらに子供たちもいつの間にかどんどん成長して……。
ガエル・ガルシア・ベルナル、ヴィッキー・クリープス、アレックス・ウルフ、トーマシン・マッケンジー、ルーファス・シーウェル、アビー・リー、ケン・レオンら出演。
あらすじ
バカンスを過ごすため美しいビーチを訪れ、それぞれに楽しいひと時を過ごすキャパ一家。そのうち息子のトレントの姿が見えなくなり、捜してみると彼は6歳の子供から青年(アレックス・ウルフ)へと成長した姿で現れ、11歳の娘マドックスも大人の女性(トーマシン・マッケンジー)に変貌していた。不可解な事態に困惑する一家は、それぞれが急速に年老いていることに気付く。しかしビーチから逃げようとすると意識を失なってしまい、彼らは謎めいた空間から脱出できなくなる。(シネマトゥデイより)
僕がファンだからかもしれないけど、とてもジョジョっぽい。場所に特殊な力が宿っていて、そこにいる人間が例外なく影響を受ける。その変化に戸惑いつつもなんとか分析して打開策を練ろうとする、あるいは発狂していくというのはこっちまでパニックになりそうでサスペンスとしてかなり面白いんですよね。アイディア1本で勝負かけてきているというのか。もうこの設定だけが全て。でもそのシンプルが他にない奇妙さで、だらかこそ怖い。
父親役のガエル・ガルシア・ベルナルはドラマ「モーツアルト・イン・ザ・ジャングル」など、初めから大人の人たちはそこまで劇的な変化はしないので俳優陣もそのままなんですが、そして娘マドックスのトーマシン・マッケンジー(ラストナイト・イン・ソーホー」主演)など子供3人に至ってはどんどん成長してキャストも変わっていきます。それに合わせて吹き替えも。仮に5年という変化を考えたときに、6歳→11歳→16歳じゃ全然違うから当然ですよね。一方で30代が40代になろうとあまり変化はない。
そんな特殊な場所なら出て行けばいいって話なんですけど、上記あらすじの通り出ようとすると頭痛に見舞われて最終的に元に戻ってしまう。無意識に楽な方に進んでって感じでしょうか。今回は珍しく(?) どうやら磁場か何かの影響で細胞の新陳代謝のスピードが速くなってるのではないか、という理屈としては理解できる予想を主人公たちが立ててくれるので『そういう場所』と割り切って集中できるのは良かったですね。最初からいた黒人とか、持たされた食べ物とかミスリードっぽい要素もあるんですが、すぐに否定される。
「対岸からカメラで撮影されているかもしれない」ということも示唆されますが、こちらもここにやってきたメンバーの共通点を含め最後にちゃんとその目的などを劇中で説明してくれてるので、シャマランとしてはすごく丁寧だったな、と。謎解きタイムスリラーって紹介もされてる映画なのですが、答えを用意してくれた上で予想しながら見られるのはいいですね。
ハラハラ要素としては、実は成長&老化それの自体の映像的な怖さはわかってしまうと平気になってきます。強いて言えば腫瘍がどんどん大きくなる。だけど手術して取ろうと思うと、切開した次の瞬間に傷がふさがるという状況の中で指をつっこみオペするところが若干グロかったくらい。(それでも極力画面には映りません)。子供たちがどんどん成長し、深い意味も考えないまま行為に及んでいつの間にか妊娠、急速にお腹が大きくなるというもなかなかショッキングで、「本来なら作れたはずの思い出」をすっ飛ばしてしまう切なさとか、自分の身に起きたらって想像したときにゾッとする感覚というのが一番近いですね。
さらにこの手のジャンルではお馴染みの「人間同士の諍い」についても、精神疾患による暴走でそこもきつい。手が付けられないんですよね。傷がふさがるならたとえ相手が武器を持ってても大丈夫かと思わせての、「とある体質」そこに繋がってくるのか、と。唯一の救いは主人公一家4人が結束して守ろうとするところ。本来は離婚するってほどだったのに、夫婦間の絆も回復するし。実際よりも超スピードかもしれないけど、「人生を共にすごす/時を重ねる」っていう家族の素晴らしさを強調する結果になってる。ラスト付近の長年連れ添った夫婦みたいな距離感が泣けます。
そうなんですよ、老いるって要素もあるので、目が見えなくなったり、耳が遠くなったりする。何するかわからない輩と同じ空間にいてそれもかなりピンチですよね。美容に人一倍注意を払ってた女性は、そんな自分の状況に耐えられなくてこれまた暴走していくし。「極限状態でのパニック」はある程度予測してたんですけど、そこに「怪我しても治る」が加わるとああいうことにもなるのか、とビビる反面感心しちゃいました。
でも最終的に一気に物事が動いて、すっごい綺麗に終わってくれるんでびっくり。正直バッドエンドでも道中がサスペンスとして十二分に面白かったのでここで紹介する気になっていたものの、まとめ方でますます好きになりました。デスゲームでいうところの「運営側に一矢報いる」気持ちよさがあります。ただあのビーチをどう攻略し、何が決め手になるのか。それはぜひ予想しながら見てほしいと思います。
そういう設定の映画があるって聞いた時から怖そうな反面楽しみだった作品。既に書いた通りシャマランとしてはかなり親切、しかも希望のある方向に持って行ってるのである程度耐性がある方には見てほしい1本です。
U-NEXTにて、399円分で48時間レンタル。吹き替え版で視聴。

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