妻よ薔薇のように　家族はつらいよ III / 山田洋次が手掛ける、家族を主役にしたコメディドラマ第3弾。泥棒に入られ、へそくりが盗まれてしまう。長男は妻の心配もせずに怒り、かねての不満もあって彼女は家出をするが……。: 映画感想.net ～映画ファン「きよ」のオススメ作品紹介～

2020年06月09日 19:00

妻よ薔薇のように　家族はつらいよ III / 山田洋次が手掛ける、家族を主役にしたコメディドラマ第3弾。泥棒に入られ、へそくりが盗まれてしまう。長男は妻の心配もせずに怒り、かねての不満もあって彼女は家出をするが……。

男はつらいよシリーズなどの山田洋次監督によるコメディシリーズ3作目。ある家族を主役にし、前作では「無縁社会」をテーマにしたが今回は「主婦への賛歌」を扱って描かれる。
老夫婦と長男夫婦、そしてその孫と3世代で暮らす平田家は、実質長男の嫁・文枝が家の仕事を一手に引き受け成り立っていた。2階の掃除後にうたた寝をしているタイミングで泥棒に入られ、大した被害は出なかったものの彼女がこっそり貯めていたへそくりが盗まれてしまう。知らせを受けた夫は妻の身を案じるどころかへそくりしていた事実なども含めて怒りだす。不満が溜まっていた彼女はついに家出をしてしまう。
橋爪功、吉行和子、西村まさ彦、夏川結衣、中嶋朋子、林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優らシリーズキャストに加え、笹野高史、立川志らく他共演。
あらすじ
平田家に泥棒が入り、長男・幸之助（西村まさ彦）の嫁・史枝（夏川結衣）がひそかに貯めていたへそくりが盗まれる。自分の身を心配せずにへそくりをしていたことに怒る幸之助に対し、史枝は不満を爆発させ家を出ていってしまう。家事を担当していた彼女がいなくなり、母親の富子（吉行和子）も体の具合が良くないことから、父親の周造（橋爪功）が掃除、洗濯、炊事をやることになる。しかし、慣れない家事に四苦八苦するばかりで……。(シネマ・トゥデイより)

最初に断っておくと、とにかく価値観が古いような気がしてこのシリーズ見るたびにそこだけがちょっと気になってしまいます(笑)いわゆるステレオタイプというか、「長男」「男」「長男」「主婦」とかそういうのが意識的に描かれてますし、今回特に幸之助を悪役にしてる関係でものすごい感じちゃいます。ただドタバタ劇として製作する上で強調されてるんだって分かった上で楽しむものなんだなって感じます。
時代錯誤的な長男と対照的に末っ子の妻夫木聡が割と柔らかい感覚の持ち主で。彼がわざわざ言葉にして「もうそういうの古いよ」とか言わせちゃうのがどうも笑えます。ただ2020年でもこのくらいの価値観でいる方も少なからずいるわけで、そういう人にとってはちょっとは意識改革になるのかな。

内容はというと非常にシンプル。過去シリーズ含めて「男が金を稼いで食べさせてやってるんだ」ってのが透けてみえてたのが、「へそくりしたくらいでキレる」ことによって一気に爆発して、妻が家出してしまう。一家の「ヨメ」として全員彼女に甘えてたものだから、朝ご飯の用意ひとつできなくてもうてんやわんや。軽いボヤ騒ぎまで起こしちゃって、例によって家族会議。弟に諭されて、ようやく夫が動き……。
幸之助が妻/主婦のありがたみを理解してやっと壊れかけた家族がなんとかなるというという予告見て全員がオチまで読めるような作品ですけど、こういうのはそれが求められてるわけで。コミカルなシーンがたくさんあったし面白かったです。

ちょっとしか出番はなかったですが、すごいスマートに金を盗んでいく泥棒役の笹野さんとか、捜査にきた刑事役の立川志らくと林家正蔵が落語ネタで談笑するとか新キャラがらみで細かくクスッとするネタがありますし、シリーズ恒例となった「うな重」のあの人が意外な活躍を見せるのも笑います。小林稔侍さんの役は今回割と普通でしたけど、居酒屋の女将さん呼ぶのは正直ひきましたね。せめて挨拶するならまだしも、富子さんに家政婦と嘘ついてってところがなぁ。
家の一大事に庄太がすぐに駆けつけたいのにピアノの調律でその場を離れられないというシーンにて、「お客さん優雅に弾いてないで早く終わらせてくれよ〜」ってギャグシーンかと思ってたのですが、プロのピアニストが出演してると知ってびっくり。あそこはお披露目シーンだったのかと笑いました。

長男のところ以外でも他の親族にもそれなりにスポットがあたり、相変わらず余計なこと言っちゃう長女の婿とか、前述の通りこの中では一番現代的で和やかさをプラスしてくれる末っ子夫婦とか違いを見てるのも楽しかった。前にも出てたのか忘れましたが、憲子さんの祖母が柴又にいるんですね。いなくなってしまったから探すという流れで懐かしい場所がチラッと見えてニヤリとしました。流石に「男はつらいよ」と直接的な関係を匂わすものはなかったですけど、最終盤に彼女からある報告があるのでそれがサプライズかも。

個人的に一番良かったのが、もう限界だって家出したはず文枝さんが、同級生の家族を見て、「子供たちに会いたい」ってなるところはほんとグッときましたね。劇中で彼女自身の口から「自分がいなくてどれだけ(普段の平田家いがいの家族に)」迷惑かけたかって謝るシーンありますし、また「彼女がいなけらば回らないから」戻ってくれたというのも大きいでしょうけど、それ以上に子供たちとの絆って掛け替えないからね。本当は夫とのことも気持ちが完全に離れたわけじゃないよってやりたいんでしょうし、馴れ初め話が出てきたり、改心した風になってはいるんですけど、そこに至るまでのがイラっときすぎて僕としてはダメでしたね。(どうせすぐに忘れて威張りだしてしまいそう、とか思っちゃう)
そこと憲子さんの「あなたの家なんだから、「ただいま」とおしゃったら？」が泣きポイントでした。

いい意味で昔からの邦画コメディとして安心して見られましたが、一方で最初に触れた通りあまりにもステレオタイプなことが気になるのもいななめなくて。ただドタバタ劇としての面白さは期待通りですし、123とシリーズ追ってきたからこそ愛着湧いた出演者たちの世界をまた見れたことが嬉しかったです。これだけ見ると西村まさ彦さん嫌いになっちゃうかも笑

Netflixにて視聴。2020年6月現在アマプラにもありますので、そちらでもどうぞ。