妻と子供二人と暮らす冴えない男ハッチは毎日工場と家を往復する日々だったが、ある夜強盗にあってしまう。息子がやられ、彼自身には反撃のチャンスがあったにも関わらずみすみすお金を取られたことで失望され、地位はさらに低くなる。しかし金と一緒に娘の大事なものが取られたと知ったハッチは犯人たちの元へ乗り込み、さらには帰り際のバスで絡まれた若者グループを半殺しにしてしまう。若者の一人がロシアンマフィアの関係者だったためにさらに命を狙われることになった彼は、封印したはずの本性を表しはじめる。
コニー・ニールセン、RZA、マイケル・アイアンサイド、クリストファー・ロイドら共演。
あらすじ
さえない中年男のハッチ・マンセル(ボブ・オデンカーク)は、職場では実力が評価されず、家族からも頼りない父親として扱われていた。ある夜、自宅に強盗が押し入るも暴力を恐れた彼は反撃できず、家族に失望され、同じ職場の義弟にもばかにされる。鬱憤(うっぷん)を溜め込んだハッチは、路線バスで出くわした不良たちの挑発にキレて連中をたたきのめす。この事件をきっかけに、彼は謎の武装集団やロシアンマフィアから命を狙われてしまう。(シネマ・トゥデイより)
どこにでもいる人間は実はめっちゃ強かった、みたいなのもアクション映画の王道の一つで個人的にも大好きなジャンルなんですが、そこにジョンウィックの脚本家が手掛けたとなればその無双っぷりに見る前からテンション上がりっぱなしです。しかも監督は全編一人称視点で凄まじい映像表現をやってのけた「ハードコア」のイリヤ・ナイシュラーですからね。
そのイリヤ監督のセンスなのか、今作でも要所要所でBGMとしてかかる音楽のハマり具合がすごくてすごい良かった。無双シーンでのあえて癒される音楽だったり、カーチェイスシーンのアップテンポなど。キングスマンの時にも触れたけど、どういう曲をバックにするかでめちゃくちゃ違いが出ますよね。疾走感、高揚感が違う。ドラマだと「アンブレラアカデミー」もセンスいい。
最序盤の早回しでの「月曜日」「火曜日」「水曜日」って連発で描写する演出がまず面白くて、ここで否応なく「代わり映えのない毎日」を実感させられるという。まあ【爪を隠している、(能ある)鷹】の姿ですからそれでいいんですけど、ゴミ収集車においていかれちゃうダメ夫っぷりとか笑いますよ。当然家族からの尊敬とは程遠くて。退役軍人へのインタビューで父親じゃなくて叔父さんを選ぶところとか切ない。ちなみにこの時に「俺は監査役だったから」っていうのがどこも嘘ついてないのがすごい。なんか危険とは無縁のデスクワーク的なのを想像するけど……。さらにこの叔父=ハッチにとっては妻の兄弟、の男もいけすかない野郎なんですが、映画終盤で彼のパンチ一発でダウンしかけてました。スカッとしますのでお楽しみに。
一度は見逃した犯人を、娘のブレスレットのために探し出すシーンでの「タトゥーが見えて、いきなり態度が変わる」とかベタだけど気持ちいですし、そいつらを懲らしめたことでエンジンがかかって、バスでの【若者への教育】へ繋がってくのが気持ちい。予告で知ってるとはいえ、ハッチやっぱり只者じゃない!ってわかって嬉しくなるのと、この姿を家族さえも知らないんだっていう「知ったらどうなるだろう」ってワクワク。ツボです。
無双と表現しましたが年齢的なものもあるし数も多いので一方的な暴力ってわけでもないのがリアルでいいんですよね。めっちゃパンチもらうし、刺されてしまう。けどめちゃくちゃタフだし、何より闘争心が違う。潜ってきた修羅場の差なのか、ほんと「ボッコボコ」って言葉がぴったりなくらい、お仕置きしていく。この辺りで善人じゃないのかも?って疑念も浮かびますけど、かっこいいからいいのだ(笑) ちゃんと死なないように応急処置してあげるし。
そこからはあらすじ最後の行にある通り戦いの規模が大きくなってしまい、家や家族が危険に晒されます。返り討ちにするのも当然凄かったんだけど、最後のトドメのさしかたが予想をはるかに超えてて、これはPG12だよなって感じ。そりゃ「ノーバディ」って言われるわ……。劇中で任務のこと少し語られるけど、適性がないとつとまらない。眠れる獅子。起こしちゃいけない人を起こしちゃった。引退するきっかけになったエピソードもほっこりするんだけど、「やっぱり俺には無理だかからトコトンやるね(ニッコリ)」的な、逆に震え上がりそうになる。
ロシアンマフィアの方もユリアンというボスはじめそこそこキャラが立ってるので特に数の上のアドバンテージとか、ハッチも一筋縄じゃ行かなそうなパワーバランスで良かったし、工場というラストステージに当たって入念に準備したからこその戦いっぷりが見れてとても面白かった。数々の罠でどんどん部下たちがやられてくのは不謹慎だけどどこか気持ちよさがあります。「連続無事故日数」みたいな数字を消すところなど、ちょいちょいユーモアもあるし。
そしてその戦闘ではハッチに頼れる味方たちが登場。只者じゃないオーラありましたけど、ここまでガッツリ関わってくれるとは。予想できちゃう人も多いかもしれませんが、超かっこいい。彼同様に「普通の暮らしをしてみたけど、やっぱりダメだった」ってお茶目に言うところ大好きです。ナイスキャスティング。大量の武器、罠、そして仲間を得て最終的には「普通の暮らし」を取り戻すハッチ。本当に必要な時に力を発揮するのが、真の強者なんですよね。いやー凄かった。
後日談も面白くて、特に新しい家の内覧中にかかってきた電話。内容はわかりませんが、彼には休まる暇はないのか。でも今度は家族にも秘密を打ち明けられたっていう違いがありますからね。思い描いた「幸せな暮らし」には間違いなさそうなんで、これはこれで悪くなさそう。
ハッチの吹き替え担当は安原義人さん。ウィルハレルソンとかの気のいいおっちゃんボイスで、序盤の方の冴えない中年っぷりがとても良かったし、本気を出してからはゲイリーオールドマンでよくやる冷徹なプロのオーラが出てほんとピッタリでした。
PG12指定なので割とアクションは過激目ですが、ダメおやじに見えた主人公がどんどん悪者を倒してスカッとさせられますので、アクションファンのみならずおすすめ。
WOWOWにて吹き替え版で録画、視聴。
22年3月末現在アマプラでは字幕、吹き替えともに会員見放題対象です。
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