味園ユニバース / 渋谷すばる&二階堂ふみ主演。突然舞台に乱入し、熱唱した男。記憶を失っている彼に興味が湧いたバンドのマネージャーは「ポチお」と名付けて住み込みで働かせるが……。

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「リンダリンダリンダ」「苦役列車」の山下敦弘監督が大阪の「味園」を舞台に制作したヒューマンドラマ。主演は渋谷すばる(当時はまだ関ジャニ∞)と二階堂ふみ。記憶を失った男が、自分の特技である歌をきっかけに新しい人生を歩み始めるも、ついに全てを思い出し……。
親亡き後、認知症気味の祖父とともにスタジオを経営、さらにはおじさんたちのバンドのマネージャーととして働くカスミ。ある日イベントを行っていると、ふらふらと男が近づき、突然「古い日記」を熱唱したかと思えば気絶する。記憶喪失となっていた男を「ポチ男」と命名し、住み込みで働いてもらうことに。何気ない日常が始まるが、バンドのボーカルが怪我を負い、ポチ男が代打を務める流れになるが……。
鈴木紗理奈、川原克己(天竺鼠)、バンド赤犬のメンバーら共演。

あらすじ
大阪のとある広場でバンドがライブをしている中、記憶を失った若い男(渋谷すばる)が舞台に乱入し歌を披露する。ざわつく会場で鳴り響いた男の歌声は、周囲の人間を圧倒する。彼の才能に興味を抱いたバンドとマネージャーのカスミ(二階堂ふみ)は「ポチ男」とあだ名を付け、スタジオで働いてもらうことにする。やがてバンドのボーカルに迎えられたポチ男は、喪失した過去の記憶をたどっていき……。(シネマ・トゥデイより)


どうやらタイトルになっている味園ユニバースというのは実在しる貸しホールで、「味園ビル」の中にあるみたいですね。調べるとCMやってた、とか出てきます。劇中だと終盤のクライマックスでバンドが歌を披露するシーンに出てきます。全体的に味園を舞台にしてる模様。埼玉県民なので馴染みこそないですが、こういう街があるんだろうなーって言ったかのような雰囲気になれました。基本的に全てのキャラが関西弁でしたしね。
そして驚いたのが赤犬というのも有名なバンドで、本人役で出ているというところ。当然普段やってる人たちなんだろうっては分かりましたが、名前までそのままだったとは。

でも本職だったおかげでめちゃくちゃリアリティがありましたし、おっちゃんたちと娘同然なカスミとのやりとりは見ててほっこりしました。特にポチ男が代打になりえるかのチェックをした際、圧倒的な歌声を前にして「練習するわ」「新曲作ってくるわ」って急にマジになってやる気出してくるあたりがとても良かった。本気で音楽好きだし、ライブにかけてるんだなって伝わってくる瞬間です。

指を使って、カスミにとっての大事なものを数えるというのは重要なシーンになってるんですが、そこにこのバンドが入ってくるのもわかる。祖父とはまた違う「家族」なんですよね、彼女にとって。で、赤犬たちもとてもいい人。単に歌上手いからって素性のわからない若者受け入れるのって抵抗ありますよ。でも「にいちゃん大変やな」ってテンションで仲間にしてくれる。そういう暖かさがしみました。

だからこそいつ記憶が戻るのか、戻ったら【この日常】が壊れてしまうのではという怖さがあって。特に僕らはポチ男=シゲオに前科があり、どういう仕事をしてたかわかってますからね。ヒヤヒヤします。手がかりからかつての生活を辿ったカスミが少しずつどんな人間かわかって、それでもなお「真実を伝えない」と決意する。その後のスイカのタネのシーンは泣けましたね。過去が分からないなら未来を作っていけばいいというようなセリフ。親を失った悲しみを乗り越えた彼女だからこその前向きな姿勢とか、人への優しさを改めて感じさせます。

ただ最終的には戻ってしまって、一度は立ち去ってしまいます。まあね、自分がどんな人間かわかってしまうと、今の場所が不釣り合いだとか、迷惑をかけてしまうのではっていうシゲオの気持ちもわかるんですけどね。もうちょっとあるのではないかーーと。予告動画でカスミがバットを振り下ろしているシーン、そういうことかと笑いました。最後は明るく終わりますのでご安心を。

天竺鼠の川原さんがやってる上司みたいな役柄はほんと嫌なやつで、ヤクザ?関連は多少胸糞悪くなりますが、それ以上にカスミ、女医さん、赤犬、といった面々の良い面が穏やかな気持ちにしてくれるのでなんとかなりました。災難だったけど、第二の人生としてやり直せばいい。そういうエールを感じます。

当時はジャニーズの歌手として、今はソロとして活躍する現役ですから渋谷くんの歌唱力はさすがで、シャウト系ボイスと和田あき子という選曲がぴったりで、こっちも真似して歌いたくなりました。劇中で披露される新曲「ココロオドレバ」の方も色んな慣用句をもじった底抜けに希望がある歌詞なので聞いてて楽しくなります。

音楽が好きな人や、人のやさしさに触れたい方に特におすすめ。


2016年に日本映画専門チャンネルで録画。

味園ユニバース 通常版 [Blu-ray]

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