モリーズ・ゲーム / 実在するポーカールーム経営者の半生をジェシカ・チャステインで映画化。ギャンブルと無縁だった元アスリートの女性がいかにして名だたる顧客が集まるルームを作り上げるのか。

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モーグルでのオリンピック選考大会に出場するもアクシデントで夢やぶれたモリー・ブルーム。大学進学までの1年間、ロスで暮らすことにした彼女は、上司からポーカーゲームのアシスタントをするように頼まれる。あらゆる情報を吸収し、見事に客の相手をする彼女はついに自分だけのポーカールームとして独立するが……。
主演はジェシカ・チャステイン。彼女の弁護士役にイドリス・エルバ。ケヴィン・コスナー、マイケル・セラら共演。
あらすじ
モーグルのオリンピック代表の選考大会でけがをしてしまったモリー・ブルーム(ジェシカ・チャステイン)は、競技から退くことを決める。ハーバード大学に進学するまでの1年間をロサンゼルスで過ごすことにした彼女は、勤務先の上司から違法ポーカーゲームのアシスタントをしてほしいと持ち掛けられる。巨額の金を賭けるハリウッドスターや企業経営者に臆することなく、見事な采配ぶりを見せるモリー。やがて彼女は自分のゲームルームを構えて成功を収めるが、10年後にFBIに逮捕される。(シネマ・トゥデイより)


『ソーシャル・ネットワーク』『マネーボール』『スティーブ・ジョブズ』と言った、実話を元にしたヒット作を手がけてきた脚本家アーロン・ソーキンの初監督作品ということで、今回もめちゃくちゃ面白かったです。
上記あらすじにある通り、序盤でモリーは逮捕されていて、保釈金によって一旦自由の身に。そこでイドリスエルバ扮する弁護士に会い、引き受けてもらうために経緯を語り始めます。その回想という形で映画のメインストーリーが進んでいくので、どことなく「女神の見えざる手」にも通じるところがありますよね。最後には逮捕されるのがわかってるけど、じゃあそこに至るまでにどんなドラマがあるのか、一気に引き込まれていく。しかもモリーは「ポーカー・クイーン」と呼ばれるほど大成功するわけですから、単純なサクセスストーリーとしての魅力も持っているという。見終わってYahoo!映画の解説ページを読んでびっくりしたのですが、彼女の顧客リストにはブラッドピットやデカプリオまでいたとか。作品の中ではぼかされてましたけど、それを聞くと凄さが再確認できますよね。

一応ポーカーの専門用語の解説もありますし、印象的な勝負での手札の内容などは出てきますけど、あまり「ギャンブルの勝敗」に重きを置いてるわけじゃないのでギャンブルが分からなくても問題なく楽しめます。何より主人公モリーはプレイヤーではなくてルームの経営者なので、彼女がいかに顧客を手に入れようと作戦をたてたか、あるいは部屋をどう準備したかっていう部分に感心させられます。だからと言って彼女だけにスポットが当たるだけでなくポーカーの腕も一流、ある意味ルームの主的存在のプレイヤーXだったり、外部から見つけてきた手練れのハーラン。毎回負けるめちゃくちゃ弱いけど実は……というおじさんや、推理小説めいた喋り方をする酔っ払いなどゲーム参加者も個性豊かな顔ぶれ。組み合わせで意外な結果になる勝負とか面白かったですし、自分の立場が危うくなった時にモリーを陥れる人、逆に庇う人とかの差も興味深かった。

お客の誰とも個人的な付き合いはしないと決めてるということでラブロマンス要素はなかったのですが、劇中でも「刺激的」とツッコミが入れられてた通り、割とセクシー目な衣装が多かった印象。別に裸とかじゃないんですけどね。特別な香水も漂わせせてたみたいですし、「ザ・カジノ」って雰囲気で納得しちゃいました。あ、一人モリーを好きだって言い寄ってるおじさんいました。

回想が現在時点に追いついてからは裁判だったりFBIとのやりとりも出てくるわけですが、最初こそ渋っていた弁護士がモリーのために熱弁を振るうシーンも胸が熱くなりましたね。それは彼女がしてしまった「手数料をとる」罪に比べて、その後の行動が清いものだったから。この辺りの、僕らが見ていてもモリーはけして悪人に見えないし、それもポーカールームを経営していく上でお金が足りなくなってしまうから。さらにまずいお客だったせいで、彼女自身もかなり怪我を負ってますしね。これ以上責めて何になるんだ!って気持ち分かります。「暴露本を出した元お騒がせ有名人」というファーストインプレッションとあまりにも違ったでしょう。
それが通じた、あの判決も泣けます。

冒頭の大会での失敗のシーンとも関係してるんですが、厳格な父親との関係性も映画終盤にさらに掘り下げられていて、彼女がなぜ上り詰めたか、その原動力であり、一方で呪縛にもなっていた要素について補うような形になっていたのもグッときました。期待してたし、負い目もあるし父の気持ちも分からなくもないんですけど、厳しくされ続けた身にもなってみろって話ですよ。マフィアに襲われた話に本気で憤ってのたのが印象的。

実在の人物を扱った作品ですが、回想をメインにして展開を想像させ、時にはスリリングに時には人の暖かさをドラマチックに描いて、最後まで飽きさせない傑作映画だったと思います。お金で破滅しちゃう人がいる以上、エスカレートしていく金額とか手放しで褒められるものではないけど、サクセスストーリーとしての気持ち良さがありました。

ちなみに「女神の見えざる手」と同様に佐古真弓さんが声当ててました。ほぼ専属かな。

Netflixにて吹き替え版を視聴。(19年5月に字幕版を録画済)



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