ニューヨークの大邸宅を舞台に、85歳の誕生日を迎えた世界的ミステリー作家が突如死亡し、その真相について警察と探偵が捜査することに。死亡推定時刻に被害者の自室に近づけた可能性は低いものの、親族たちはいろいろな問題を抱えており、かつそれについて被害者本人から問い詰められるなど動機としては誰でもありえてしまう。最後に接点のあった訪問看護師は嘘がつけない体質なのだが……。
ジェイミー・リー・カーティス、キース・スタンフィールド、クリストファー・プラマーら共演する他、途中から登場するキーパーソンとしてクリス・エヴァンスも。
あらすじ
85歳の誕生日を迎えた世界的ミステリー作家のハーラン・スロンビー(クリストファー・プラマー)が、その翌日に遺体で見つかる。名探偵のブノワ・ブラン(ダニエル・クレイグ)は、匿名の依頼を受けて刑事と一緒に屋敷に出向く。ブランは殺人ではないかと考え、騒然とする家族を尻目に捜査を始める。(シネマ・トゥデイより)
サブタイトルのせいもあって、最近見た「ねじれた家族(アガサ作品)」(ここでも紹介しましたね)や「ウィンチェスターハウス」などと混ざり、勝手に古い時代の物語で、屋敷の構造に色々なカラクリがあるのでは?という予想をしちゃっていましたが、実際はバリバリ現代のアメリカが舞台ですし、「隠し窓」があるくらいであんまり「刃の館」って感じはしませんでした。
予想外といえばこの手の「親族全員が怪しい」系統の作品だと各自自分を守るために他の面々の秘密を暴露しあってピースが少しずつ埋まっていくパターンだと思うんですけど、結構序盤の段階で死の真相については(我々視聴者には)明らかになってしまいます。ちょっともったいないなと思わなくもありませんが、最初から犯人を明かす推理ものだって少なくないですから別におかしいことじゃないですよね。しかも「当人がそう思ってるだけで実は他にも何かが起こったのでは?」という予想も立てられる。このネタバラシの段階で上記「隠し窓」の秘密とか分かっちゃうので、どうやってバレずに部屋に行けたかとか一気に解決しちゃうのも面白かった。
看護師マルタの「嘘をつくと吐いてしまう」という体質も相まって、「いつことのあらましが他の家族に露見するのか」をハラハラして見守りつつも、「あの人意外にも事件に関わってる人はいるのだろうか」って予想しながら別の家族を怪しんで見る、という形でサスペンスとして十分にねられているので、これはこれで新しいスタイルだなぁと感心しちゃいます。まあアカデミー賞脚本賞ノミネートですからね。評価されるのもうなづけます。被害者ミステリー作家ということで本の著作権の管理を任されていた息子や、不貞行為がバレたもの。学費を援助してもらってたのに二重取りしてた人や、遊び歩いてる一族いちの問題児などなど、ほとんどのキャラが被害者と揉めてて、さらにそれをきかれてるというのも振り回されて良かった。特に途中から出てきたクリスエヴァンス扮するランサムがとにかく絵に描いたようなボンボンでね。予告動画でもすごい口論してますよね。ちなみにそのナレーションを中村悠一さんがやってますが、劇中でのランサムの担当も中村さん。キャプテンアメリカと同じなんですよね。ちょっとニヤニヤしました。
探偵を除けばマルタが実質的な主人公だと思うんですが、演じてるのはアナ・デ・アルマスさん。ブレードランナーとかで話題になりまして、次回007(ノータイムノーダイ)の出演も決まってるんで、ダニエルと再共演するんですね。事件の真相的にも悪意は一切ないですし、劇中で一番まともな人物なのでついつい応援しちゃいます。遺言状が明らかになってまた立場が変わりますからね。その変化球も面白かったのですが、心細さ限界っていう演技がうまかったです。途中からは意外にもランサムとのコンビになるので、家族から疎まれてる同士として助けてくれてるのか?それとも利用されてしまうか??ってドキドキも良かった。家事とか、脅迫状とか、また何か起こりそうっていう流れも出てくるし。
何が起きたのか、まではぴったり当てることは出来ませんでしたが、誰が関わっていたか、は割と予想通りだったので、とても素直な真相でそこも良かったです。振り返り映像が流れますが、ちゃんとヒントとなるものは初めから色々と出てきてた。どんでん返しもいいんですけど、ちゃんと予想させて楽しませてくれるのも推理ものの醍醐味ですよ。最終盤でマルタが「嘘をつくと吐く」の設定をなるほどな!って使い方してきますし、刃の館、の元となってる大量のナイフを使ったオブジェも活用されたし。
そういう設定だとか、みょうに役者がかっている探偵役など、随所にコミカルな要素があるんでそこまで肩に力入れずに見れるのも良かった。なんというかライトに堪能できる映画という印象。前述の通り脚本がいいので、別にそれが薄っぺらいって意味じゃないですよ、ハードルを低くしてより多くの人が楽しめるエンターテイメントにしてるって感じ。劇中で「遺言書の開示は退屈」なんてセリフが出てきますが、それが皮肉になってるくらい、お金持ちだからこそのドロドロ劇で面白かったです。
「これまでのあんたらの行動の結果だよ」って言いたくなるラストで、どこか小気味よかったですしね。Knives Outってタイトルも先に触れたオブジェで全てのナイフが中心に向けられてるのもあって、どことなく暗示してるのも好きです。劇中だとさらに「ドーナツの穴」(事件の最後の一ピースが埋まらない)などとかけてました。
そうそう、最高齢のおばあちゃんの言葉がここぞという時の決め手になるのが「あるある」で笑ってしまいました。
ミステリー好きにもそうじゃない方にもオススメしたい一本。
Netflixにて吹き替え版で視聴。
ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密(吹替版)
posted with カエレバ
人気ブログランキング参加中。
この記事へのコメント