雷(らい)は就活も全然うまくいかない中、自分より出来のいい弟が京大に合格してしまい、コンプレックスから家に戻ることすら出来ずにいた。突然の雷鳴によって気を失った彼が目を覚ますと、そこはなんと平安時代。言葉は通じるものの怪しいものとして捕まってしまうのだが、源氏物語になぞらえた製薬会社のイベントのバイト帰りだったために薬や歴史知識があり、流れで陰陽師として振る舞うことに。弘徽殿女御という悪女として知られる女性に仕えることになるが……。
もう1人のヒロインに伊藤沙莉のほか、ラサール石井、伊勢谷友介、山村紅葉、笹野高史ら共演。
あらすじ
59回面接試験を受けるも落ち続けている雷(伊藤健太郎)は、京大に合格した弟に対する劣等感を抱きながらフリーター生活を送っていた。「源氏物語」をテーマにしたイベントの設営アルバイトからの帰宅途中に激しい雷雨に見舞われて気を失った彼は、目覚めると「源氏物語」の世界にいた。アルバイト先でたまたま渡されていた「源氏物語」のあらすじ本を持っていた雷は、息子を帝にしようともくろむ弘徽殿女御(三吉彩花)に陰陽師として仕えることになる。(シネマ・トゥデイより)
十二単ってことで平安時代の服装の人が出てきて、それがまあ悪女なんだろうな程度の知識で視聴したので舞台が源氏物語の時代ってのは結構驚きましたね。主人公の雷が「過去へ行く」タイプだったのかと。逆をイメージしてました。ヒロインの三好さんは割と気が強い役柄も似合う女優さんなので似合うのは予想できてましたが、想像以上にピッタリでした。
彼女を含め源氏物語のキャラが多数出てきますしいきなり固有名詞の連続ですが、全く知識のなかった主人公がイベントでもらったパンフレットを読み進めることで状況を理解していく構成のため、歴史とか馴染みがなくても最低限のお話はわかるようになっています。重要なのは「出来のいい弟」が存在していて、そこが雷の境遇と似通っているという点。タイムスリップしてまでも嫌な現実と直視させられます。
タイトルで「悪魔」って使われてるくらいなんで【悪女として有名だけど実際は】的な、実際に見たからこそ雷だけが見えてくる彼女の姿というのが描かれていましたし、子を愛する母としての姿はカッコよかった。比較されてダメって思われていた兄の方もめちゃくちゃいい子だし。子役、朝ドラ「エール」の主演の子でしたね。ちょいちょい時空が飛んであっという間に成長してくのは若干都合が良すぎるとも思いましたが、長い年月を描く上で仕方なかったのかな、と。
源氏物語で描かれているような、ドロドロみたいなのとか捨てられた人の悲しみみたいなものも扱われますし、そこまで露骨ではないもののちょいちょいラブシーンが出てくるのであらかじめご注意ください。個人的にはあんまりなくても良かったのかなと思います。光源氏といえば女性好きって事でしょうがないのかもしれないけど。
一方で雷のラブロマンス要素はすごいピュアで、冒頭で触れた通り伊藤沙莉さん演じるヒロインとの幸せなシーンはほんと見てるだけで癒されました。劇中では「顔は良くない」みたいな扱いで女優さん本人ちょっと可哀想なんですけども、お互い大事にしてるってのがこっちまで伝わってきて、『君とお腹の子に会うためにここに来たんだ』ってセリフはかなりグッときた。実際このまま平安でハッピーエンドでもいいとすら思えるよ。比較対象の弟もいないし。
しかし残念ながらその幸せも長く続かず、そこからの展開は涙なしには見れませんでした。この悲しみと、さらに弘徽殿がとった選択が雷をさらに成長させたっていう風に考えることもできますが、辛いよ。
現代に戻ってきてからのある意味抜け殻というか、妙に達観したようなテンションの姿も痛々しかったし、雷の音を聞いて「戻れるかも!?」って救急箱の中身とかかき集めて自分から当たりに行こうとするところなどはずーっとウルウル来ちゃってました。そのくらい彼に感情移入してた。でも、その後の弟との対話。はっきり言って雷がこういう風になれるなら別に源氏物語の時代じゃなくても成立しちゃうんだよな、ってほど主人公の成長物語として見応えがあってよかったと思います。後日談的なエピソードもかなり王道をもってきましたが、ハッピーエンド大好きなのでこれも満足。
伊藤健太郎くんをちゃんと知ったのが「アシガール」で、そっちはヒロインがタイムスリップしてきてのロマンス相手だったのである意味真逆のポジションでしたが、役柄としてもキリッとした若様と180度違う、コンプレックスを抱えた「何者にも慣れないもどかしさ」が出ててピッタリだったと思います。序盤のヘラヘラしてたのと、最終盤の平安言葉とのギャップがすごい。
歴史の知識がある人もない人もスッと入りやすく、共感ポイントも多々ある素直な物語だと思いました。恋愛要素もありますが、主人公の成長にじーんとくるドラマ。興味がある方は是非。
WOWOWにて録画、アマプラにて視聴。
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