人類は地球からさらに宇宙へとその住処を増やしたが、いくつかあるコロニーの中で戦争が勃発。多くの犠牲者が。その中でかなりの活躍をした傭兵のジョンイは任務途中に命を落としてしまうも、その脳データを複製。研究所では彼女そっくりの戦闘用アンドロイドの実験を行っていた。しかもその担当になったのは彼女の実の娘ソヒョン。シミュレーションを重ねるも、どうしても特定の場面でやられてしまう。
アクション要素もあるものの、それ以上に「脳データ複製」にまつわる倫理観を問う、そして母娘の絆に涙するヒューマンドラマ的作品。
キム・ヒョンジュ、リュ・ギョンスら共演。
あらすじ
荒廃した近未来の地球を舞台に、人工知能研究所の研究員が、優れた傭兵(ようへい)だった自分の母親の脳データを複製する。(シネマ・トゥデイより)
なんか勝手にアクション作品だと思ってたんですが、少なめに見積もって1/3以上はがっつりあるものの、本当に伝えたいのはそこじゃなくて、いい意味で予想を裏切られました。SF作品はその設定を聞くだけでワクワクさせられますが、これもまた王道パターンの一つで、クローン兵士を扱ったもの。
なるほどと思ったのが、脳データの取り扱い。「等級」のようなものがあり、自分で残しておきたい人はお金を払わなくてはならないものの、逆にジョンイのような企業に利用されるケースだと遺族にお金が入ってくる。ここに娘ソヒョンが病気がちだったとか、伝説の兵士だったとかなどに説得力がましますし、どんなことにも使われるからプライバシーとか人権も放棄したようなもの。
ドラマ「ヒューマンズ」やゲームの「デトロイト」でも触れられましたが、人間の欲望の捌け口としても使われてしまう。なんか以上に大ファンなんです!って言ってくる職員いるなぁと思ったら、想像以上にきつかった。他人でさえあれなのに、ソヒョンとしてみればエグすぎますよね。自分の母親が辱められてる。アイドル兵士だから仕方ないのかもしれないけど、フィギュアとか色々あったし……。
戦闘訓練とか痛みによる脳の活発になる領域の実験とかで色々と痛めつけられたり、そういったシーンを最前列でずっと見ていなければいけないソヒョンが辛くて、ずっと感情移入し続けちゃう。特に「せっかくだから電源が切られる間際に話してみたら?」ってのを受けて会話する流れなんかは自分が目の前にいるにも関わらず「(小さかった頃の)娘の話」をしてくる母。この泣いてるシーンとかこっちも号泣でした。演技ほんと上手いなぁ。
そこで明言されますが、どうして一瞬気が緩むのか、ってのは見てるこっちはわかるけど劇中では深掘りされずにサラッと行くのもいい。無事にシミュレーションをクリアすることが目標じゃないから。映画は後半になるにつれ、ガラッとわかっていきます。
「ユーモアですよ」って連呼する所長。特に本社?に呼ばれた時の周りの反応で「あっ!」 って確信するんですが、あれはあれで切なかったなぁと。さらに技術が上がればまた変わるんでしょうけど、脳データの複製の限界とか、医療が進歩した上での虚しさとかがあって複雑。まあ趣味が悪いなぁっていうのは間違いないんだけど。だからソヒョンが所長に暴言吐くところはちょっとスッキリしました。
このままじゃダメだってなった彼女が大胆な行動に出てからはまたアクション要素ががっつり出てきて、大量のアンドロイドの中での乱戦や、電車内(外からもか)のバトルは迫力満点。あの痛みとか度外視した行動が機械っぽくていいんですよね。スピード感もあるし。一応人間に対しては殺すことまではしないようですけど、他のSF作品みたいに「攻撃できない」とまではなささそう。普通に撃たれてしまうし。
そうそう、最序盤のシミュレーションシーンも、獣型の敵のマシーンも四肢があるのに滑るように走行するのもいいし、熱源反応で索敵してくるのとか、攻撃してもなかなかしぶとかったりとかとてもワクワクさせてくれました。あんな感じで実戦になだれ込んでいくのかな?って勝手に思っちゃったよ。
逃げやすくするためか、娘の記憶を全部消したソヒョン。それなのに……、というあのシーンもまたかなり胸を打ちました。全てがうまく行ったハッピーエンドとはいきませんが、希望が見える、後味は悪くない終わり方でした。
いやー倫理観を問うと言いますが、いずれこれに近いことが起きてしまうのか?とか自分だったらどうするだろう(仮にお金があるとして)とか考えちゃう内容でしたね。大事な人はずっと生きてて欲しいけど、ここまでするか?とか、あるいは自分の体を乗り換えて不老不死を目指すのかとか。少なくともいつまでも健康な身体でいられるのは羨ましいと思いますけどね。自分がアンドロイドだと気づかないままならなおいい(笑)
最後に追悼メッセージが出ますが、ソヒョン役のカン・スヨンさんが亡くなりこれが遺作となってしまったようです。受賞歴もあり、本格的に復帰作だったのにご冥福をお祈りします。
Netflixにて吹き替え版で視聴。
非英語圏で再生数1位。痛そうだったり見るのきついシーンもありますが、親子の絆の物語。おすすめです。
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