ウディアレンが描くブラックユーモアが炸裂。ホアキン・フェニックスと、アレン監督作に複数出演中のエマストーンが好演。
あらすじ
アメリカ東部の大学。孤独で気力のない哲学科の教授エイブ(ホアキン・フェニックス)は、ある日不快な判事についての話を聞く。自分がその判事を殺害するという完全犯罪を妄想した途端、よどんでいた彼の人生は鮮やかに色づき始める。一方、エイブのことが好きな教え子ジル(エマ・ストーン)は、教授が奇妙な殺人妄想に夢中になっているとは知らず、恋心を募らせていくが……。(シネマ・トゥデイより)
哲学科の教授で、それまで散々人生とか物事について考え続きてきた男が、ある日ぱたっと全て色を失ったように無気力になっている。そんな男が小さな大学で新たに教鞭を取ることになるが、それ自体で何か変わるわけもなく。同僚教授リチャーズに言い寄られたり、生徒であるジルに慕われれ常にそばに入られても変わらず。
でも殺人計画を立て始めた途端、一気に活力がみなぎり、熟睡できるわ、男性機能も復活するわで別人になっちゃう。その皮肉さが面白かったですし、ウディアレンぽいなぁとしみじみ。こんな題材で最後まで走りきっちゃう。
他に恋人がいるのに、ミステリアスな教授に惹かれていく女子大生、というキャラクターは他の作品でもよく見かけますが、会うたびに教授の話ばっかりされる彼氏が本当に不憫でしたね。「そんなに好きなら別れよう」だったり、「あんな奴のどこがいいのか」っていう気持ちがよく分かります。
引っ張り出すように参加させたパーティにて粋がった学生が「ロシアンルーレットしようぜ」ってふざけてる時に、エイブがさらっと自分のコメカミを撃っちゃう「危うさ」みたいなシーンを前にすれば『本物だ…近づかないでおこう』って感じで怒りというか若干ひいちゃうと思いますけど。
ラブコメディとはまた違って、エイブは前述の女性同僚と関係を続けているし、あくまでもジルとは友達。基本的に彼女が一方的に熱をあげてるという構図です。殺人計画→実行を経てからはそういう線引きとか一切なくなってしまうんですけど。劇中主役二人の独白というか、どう考えてるかが挿入されるのも面白くて、それが最後まで見終わると、ああ、それでジルは過去形だったのかって納得してちょっと気持ちよかった。伏線といえば遊園地での商品をああいう風に持ってくるのか、ってのもニヤリでした。
ジルの、なんか悲観的になってる変わり者の男がいたら珍しくて好きになっちゃったけど、その熱は一過性のもので、犯罪者となると話は別だよねっていう部分が現実的で笑えましたし、エイブはエイブですでに触れた通りそれまでの無気力さがなくなったのはいいものの、「犯罪者を殺して何が悪いんだ」に代表されるように、色々な面で自己中心的な男に変わってしまったという
原題Irrational manで、不合理なとか分別のない男って意味。邦題からイメージする物語と、実際のストーリーがちょっと違うので、直訳でも面白かったかな、と思います。
劇中でも出てきた「罪と罰」を意識してる作りだと思いますので、ブラックユーモアやシニカルな笑いが好きな人には特におすすめ。
Netflixにて吹き替え版を視聴しましたが、18年10月現在Amazonビデオもプライム会員無料対象のようです。
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