一度も撃ってません / 石橋蓮司主演。今は落ち目となった小説家の石川は妻に行き先も告げず夜な夜な出かけていたが、それは彼のもう一つの顔「サイレントキラー」だった。実際の殺しは別のプロに外注しているのだが、命を狙われることになり……。

『大鹿村騒動記』『亡国のイージス』『北のカナリアたち』などを手掛ける阪本順治監督、石橋蓮司主演で送る、コメディ作品。実際には本職に外注しているものの、伝説の殺し屋として振る舞う作家・市川。秘密を知る人間が少ないからこそ起きる勘違いや、ひたすらカッコつける主人公や昔の輝きを忘れられない者達の哀愁漂う姿を描く。
それなりに売れたものの、ハードボイルドに転向してからは鳴かず飛ばずの作家・御前零児こと市川。彼は旧友である元検事の石田の依頼で悪党を厳粛するヒットマンという裏の顔があるのだが、実際はプロに外注し、その詳細を聞いて小説のネタにするだけだった。巷では伝説の殺し屋という噂が広まるが、石田や市川自身も敵の殺し屋に命を狙われることに。時同じくして行動を不審に思った妻から浮気を疑われ……。
石橋蓮司、桃井かおり、岸辺一徳、大楠道代をはじめ、さらには佐藤浩市&寛一郎親子共演など豪華キャストが集結。
あらすじ
ハードボイルドな男を気取る小説家の市川(石橋蓮司)には、旧友の石田(岸部一徳)からの依頼で殺し屋・今西が狙う標的の行動を調査する、サイレントキラーという別の顔があった。あるとき石田がヒットマンに命を狙われ、市川も危険にさらされる。市川はヒットマンを倒そうと今西を捜すが、一連の行動を妻の弥生(大楠道代)は浮気だと勘違いしてかぎ回る。やがて市川行きつけのバーを訪ねた弥生は、そこにいたひかる(桃井かおり)に夫との浮気を問いただす。(シネマ・トゥデイ)


いやー、面白かった。個人的にこういう映画大好き。単純にちょっとした秘密とその勘違いが産むドタバタって題材だけでもツボなんですけど、この作品は登場人物がいいんですよね。多分意識的に自虐してると思うんだけど、カッコつけちゃうダサさが、逆にかっこいい的な(?)感覚。予告動画にもあるけど「夜は酒がつれてくる」とか、真面目な顔で言い切っちゃうのよ。映画の中で「ハードボイルド(笑)」ってやってしまっている。ちなみにそれに対するアンサー的な「朝は〜」ってのがあってそこも好き。小説の評価としてもボロクソで、「北方謙三の二番煎じの二番煎じ」と
か。寛一郎くん演じる若手編集者がそういうおじいさん連中に対して現実を突きつける役所で出てて面白かったですね。『シリアルキラー VIじゃなくて要介護3でしょ』でリアルに吹き出しちゃった。

上記あらすじだと元検事の石田(岸辺)も知ってるように読めるんですが、僕がみた限りだと彼も知らないんじゃないかな。先代殺し屋のバーの店主と、ターゲットの取材で協力してもらう ひかる(桃井かおり)、あとは今の外注先である今西(妻夫木)くらい。市川の徹底した立ち振る舞いだからこそ本職っぽいオーラ出てるし、本当にヒットマンでもおかしくなさそうなんですよね。でも先にタイトルで「一度も撃ってません」ってネタバラシしちゃってる。最序盤こそ風邪気味っていう共通点でミスリードしてくるけど、すぐに今西という存在を明かしちゃうのでゴーストライターならぬゴーストヒットマンだって観客はわかるようにしてる。今触れちゃったけど、バーのマスターも元々は殺し屋だったっぽい。

僕が男だからかもしれないけど、いちいちマッチでタバコに火をつけたり、ボソボソって名言ぽく言ったり。一度は憧れるよなっていう世界観をギャグとして表現してるので一歩間違うと怒る人もいそうなんだけど、市川は自分の理想を演じてるだけだからその本気っぷりに受け入れちゃうと思う。作家だから資料としての意味もあるだろうけど武器とかにもめちゃくちゃ詳しそうだし、バーで飲んでる姿もいいんですよね。実際やったらこの映画みたいに気取りすぎってバカにされちゃうかもしれないけど、やってみたい。大人って感じがします。

その世界を奥さんに共有してなかった結果、浮気を疑われることに。ご丁寧に仕事に協力してくれてるひかるっていう存在がいるから勘違いし血ちゃうんですよね。あの3人組の友情は見ていて微笑ましくて、かつ自分も言ってたけど全盛期のことを忘れられないっていう哀愁が漂っているのがまたいいんだ。いい年してバーで飲んだくれてて歌ってて、家族から周りから見たら誉められたものじゃないけどそのダメっぷりに人間らしさがあって魅力的に映る。こういう年の取り方もあり、かな。的な。

浮気の勘違いのドタバタに加えて、市川自身が殺し屋に狙われてしまうピンチになっていく。どうしてそうなるのか、今西は?っていうのも予想を外してきて面白かったですし、悪党の調査してて中華料理店で噂されちゃうとこもニヤニヤ。wikipediaも三行しかないし、10年更新されてないっていう情報が「落ち目の作家」をこれでもかって表現してて泣けます。伝説の殺し屋として一度はマークされてた、ってのとか聞き耳立てて一喜一憂する姿が可愛らしかったです。

最終的に役者が全員揃っての直接対決。敵の殺し屋を豊川悦司さんがやってるんですが、初見は分からなくて、エンドクレジット見てもう一回見て驚いたくらい。役に徹してるのか、見た目が変わったのか。バーのマスターなど、割とオチとしては読みやすい部類ではあるものの、ちゃんとハッピーエンドで良かったです。そこに至るまでの妻とひかるとのやりとりとかも笑えました。「かたゆで卵」とか。自分の知らない姿があってショックを受けるとか、大事にされてるんだなぁって羨ましくなります。

そこまで派手さはないんだけど、カッコつけたい男のダサさ、悲しさ、そして魅力が詰まっててほんと良かったです。名バイプレイヤーの共演なんでそれだけでも見応えありますし、みんなはまってました。

WOWOWにて録画、視聴。

22年1月現在、アマプラ見放題対象、U-NEXTにもありますので会員の方は是非。


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