アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル / マーゴット・ロビー主演。対戦相手の負傷に関わってるのではと疑惑が持たれた、実在するフィギュアスケーターの伝記ドラマ。たくましく生きた女性の物語。

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アメリカ代表としてオリンピックに出場した実在のフィギュアスケーター、トーニャ・ハーディング。才能もあり、厳しい母のもと努力を重ね好成績を収めるも、他の選手とは違っていたことから審査員によく思われていなかった彼女。そんな時旧知の仲のライバル選手が暴行される事件が発生。容疑者として、トーニャの関係も疑われ……。
共演はセバスチャン・スタン、アリソン・ジャネイほか。監督はクレイグ・ギレスピー。
あらすじ
貧しい家庭に生まれ、厳格な母親ラヴォナ(アリソン・ジャネイ)に育てられたトーニャ・ハーディング(マーゴット・ロビー)。フィギュアスケートの才能に恵まれた彼女は、血のにじむような努力を重ねて、アメリカ代表選手として1992年のアルベールビル、1994年のリレハンメルオリンピックに出場する。ところが、元夫のジェフ・ギルーリー(セバスチャン・スタン)の友人がトーニャのライバルだったナンシー・ケリガンを襲い、その後彼女はフィギュア界から追放されるが……。(シネマトゥデイより)


伝記映画というと、偉人や有名人、誰もが知る人物や出来事を扱った作品というパターンと、そのもう一方で「知られざる真実」「影のヒーロー」というようなその作品をきっかけに明らかになるというパターンとがあると思います。この映画は有名なフィギュアスケーター選手の物語のなので、当然前者パターンなのですが、時代的なことも関係し、僕自身全く知らない状態でのスタートでした。その意味では後者のような見方、つまり今後どのように展開するか全くわからないという楽しみ方ができました。

作品自体はトーニャや母、コーチ、元夫、彼の知人でターニャのボディガードといった関係者のインタビューと、それを元に描かれる回想という形で、だんだん過去から現代に向かっていくストーリー展開をします。ただインタビュー時の彼らを含めて全てキャスト俳優女優陣が演じており、老けメイクをしてたりします。この構造がさらに面白いのは、劇中、カメラのこちら側に向かって話しかけること。「実際はこんな風じゃなかったのよ」だとか、「本当にこんな過酷な訓練したのよ」っていう具合に、突然カメラ目線になります。

そもそもこの映画は、世間で色々言われたみたいだけど、真実はこうだったんだだから!っていう抗議のようなもののスタイルになっているので、あくまで「インタビューした彼らの語る物語」なのです。だから誰の証言を元にしてるかによって、微妙なズレが出る可能性もあるし、この映画で真実とされていることが、果たして本当にあったかもわからない。そこ余計に面白いです。

例の事件についてはかなり後半になってから描かれるので、単純に不良系スケーター・トーニャの半生という感じで進んでいくんですが、これがまたすごい。お母さんがね。もう漫画の中の人物かな?と思うくらいにぶっとでいて、インパクトありすぎです。まあ予告動画を見ただけでもそれはわかってもらえるはずですけど、かなり口は悪いし、娘の夢の応援の仕方が歪過ぎます。事実だけを見れば、片親でも必死に働いて、コーチをつけて娘の才能を伸ばしてアメリカ代表にまでなったという事ですけど、娘からしたらたまったもんじゃない。劇中で「嫌われる母親」に(心を鬼にして)なった、と言うシーンがありますけど、愛情はあって大切にしてたのはまちがいないにせよ、虐待案件ですよ'笑)大事な試合だから応援に来るのか、と見直そうと思ったら、お金を使ってすごいことやってましたからね。あれにはドン引き。とにかく映画の中で存在感がすごかった。

もちろん主役のトーニャもとても共感しやすいキャラクターで、ある意味で憎んでる母親に対して、気がつけば自分もかなり影響受けて育ってしまったキャラは最高。「はぁ?実力さえあれば誰も文句ねぇだろ?」みたいな、およそ「氷上の妖精」とは真逆のスタイルで、でも努力だけはきちんとしてて、勝つために貪欲っていうのは人間味があって好きでした。マシンじゃなく人が採点する以上、技術以外の部分で影響を受けてしまうのはどこかわかる気もしますが、「ふさわしくない」とかそういった部分で審査員たちに快く思われず、成績にまで影響しちゃうのはかわいそうでした。これもまあ「トーニャの言葉によって作った彼女目線の物語」なので、本当のところ分からないですけどね。

努力はよかったのですが、必死になったあまり、ウケの良さを狙って元夫と再び暮らすようになったのがまずかった。誰か一人でも、馬鹿げた計画はやめようって言えば、あの暴走が、あの悲劇がおきなかったんでしょうけどね。そこに気づけなかった。彼女は直接的に関わってないとは言え、同情半分、責任もあるよな、が半分でした。

そうそう、スケートのシーンですが、アメリカ代表ということに説得力があるくらい、きちんと「魅せる」演出をしていてそこも見応えありました。いろんな衣装で登場しますし、トリプルアクセル行けるか!というハラハラも面白かった。ただ映画最終盤にて、どれだけトーニャが転落したかを痛感させられるようにジャンプシーンをセルフパロディされてしまっていて、そこがちょっと辛かったですし、彼女にとって一番のよりどころだったスケートが取り上げられるというラストは、何らかの形で彼女の自業自得な部分があったにせよ、切なかったです。

僕にとっては初めて知ったものの、有名な事件を本人たちの目線を元に描くというスタイルと、ヒール役として扱われながらも必死に上を目指して戦った一人のスケーターの半生としてかなり楽しめました。もともとあのハーレイクインのマーゴット主演ということでも注目してましたけど、これはこれで「ワルカワ」な主人公を演じきってたと思います。


WOWOWにて吹き替え版を録画、視聴。

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