アイ・アム・マザー【Netflixオリジナル】/ 人類がほぼ滅亡した世界。隔離施設でロボットの<母>に育てられた人間の<娘>。知識を与えられ、共に暮らしてきたある日、外の世界から負傷した女性が現れて……。

robot_house.png

Netflixオリジナル作品。19年6月頭より配信中。
人類が大量に滅亡した世界で、隔離施設で暮らす<母>と<娘>。しかしこの親子が普通と違っているのは、片方が人型アンドロイドだということ。彼女以外にもたくさんの試験管ベイビーがその誕生を待つ中、<娘>は愛情を受けながら、倫理観などを学習、試験を受けたりして育ってきた。そんなある日、汚染していると聞かされてきたはずの「外の世界」から一人の人間がやってくる。負傷した彼女を<娘>は助けようとするが、彼女はロボットは敵だと認識していて……。
誰の言葉が正しいのか、そして母の愛とは。SFサスペンス。
出演はクララ・ルガード、ヒラリー・スワンク。<母>の声にローズ・バーン。
あらすじ
人類の大量絶滅後、再増殖施設内でたった一人ドロイドの母親に育てられている少女。だが、彼女の前に別の人間が現れたとき、ずっと信じてきた世界が揺らぎ始める。(ネトフリ作品紹介より)


かなり後半にならないと外の世界が描写されず、親子が暮らしている施設を舞台に展開していくのでかなりソリッドシュチュエーション的ですし、メインキャストは人間二人とロボットなのでお金というよりもストーリーで魅せてくる作品。実際ものすごくハラハラさせられました。

こういった題材では割とありがちですが、やはり一番のメインは「どっちの話が本当なのか」っていうこと。これまでずーっと一緒に暮らしてくて、守ってきてくれた<母>が嘘を付いていたのか。それとも負傷した女性はなにか目的があって騙そうとしているのか。ネズミが侵入してきたり、なんとなく疑いの気持ちが芽生え始め、そして外の世界への興味がかなり大きくなってきたタイミングですから、余計に疑心暗鬼になるんですよね。

劇中で<娘>が試験を受けるシーンがあるのですが、それはいわゆる「トロッコ問題」のような、倫理観を問うような問題でした。誰を救うべきか、的な。普通勉強というと数学とか科学系なのと思って見てたんですが、そちらの知識も一通り学んでいるようでしたね。女性への対応という意味で、医学的な処置も出来てましたし。わざわざ倫理観を重点的にやってることも後の展開を知るとなるほどなーとわかってきて、うまい描き方だったと思います。やはり判断という意味ではロボット(というかAI)と人間では違うんですよ。

<母>が表情こそわからないものの、二足歩行で人型をしてるのでとても人間味があって、僕個人的にはものすごく愛情を感じましたね。序盤、大量にストックされた胎児のなかの一人が装置を使って無事に誕生し、少しずつ成長していく姿が描かれるのですが、ほんと微笑ましくてジーンときちゃいます。機械の体にシール貼ったりするところとかね。調べたらなんとダンボの挿入歌らしいのですが、「ベイビー・マイン」という楽曲がとても効果的に使われていました。こんなにも一生懸命やってくれた<母>が、何か策略を持って育ててたのだとしたら超ショック。どうせなら嘘ついてるのは人間側であってくれ……と思っちゃいましたよ。

そもそも論になっちゃうんですが、別にこの施設で一生を終えたとしても何の不都合がないんですよ、娘は。仮に<母>の思惑が別にあったとしても、大事に思ってるのは間違いないですし、彼女の妹弟となる、次の人間をまた一人誕生させることを示唆してますしね。ただ一度信頼が揺らいじゃったらもうまともには見れない。<娘は>ずっと「お母さん」と呼び続けますけど、同じ感覚はいられないですよ。

上記予告動画で結構重要なシーンも映っているので<母>以外の機械の存在が外の世界あったり、外から来た女性が銃を向けたり戦ってたりっていうネタバレになってしまっているわけですが、これはまあ「どちらかが嘘つき」の延長にあるので、大丈夫だと思います。結構引っ張りましたよ、どっちを信じればいいんだって葛藤。見てるこっちもなかなか全貌が見えないから一緒になって惑わされます。

ただその決着についてはね、結構グッとくるものがありました。なぜこの映画のタイトルが「アイアムマザー」なのか。それは多分2つあって、片方はその<娘>と<母>とのやりとりでもありますし、(母親だからこそあの行動とった、的な)、もう1つは近い将来を示唆するという意味でなんだろうな、と。SFってことでサスペンスなのは予想できましたが、母娘の絆という要素も期待してた身としては満足です。

それともうひとつ、僕は完全に思い至らなかったもう1つの事実が最後の最後に明かされます。それによって全部繋がった感ね。なぜ倫理のテストのシーンをわざわざ(?)描いたのか。<母>はどこまで考えて<娘>を育ててきたのか。王道なお話だっただけに、半分くらいは予想しいた複数のパターンの1つであったのですが、この最後のひねりはやられた!って感じでしたね。これで評価がさらにアップしました。

ネトフリオリジナル作品てことで登場人物の少なさとかも多少感じますが、主人公の葛藤を見てるこちらもシンクロしていって目が離せない傑作サスペンスでした。多分<母>に感情移入すればするほど面白く見れると思います。動きはロボットなんですけど、めっちゃ大事に思ってるのがひしひし伝わってきますし。

Netflixにて吹き替え版を視聴。吹き替えだと前述の通り主人公は<母>のことを「お母さん」と呼び、逆に<母>は文字通り「娘」と読んでいました。



人型ロボットとの交流といいうとこちらもおすすめ
チャッピー  CHAPPIE (吹替版)
(2015-08-12)
売り上げランキング: 65,032

この記事へのコメント