その男は、静かな隣人 / クリスチャン・スレイター主演。冴えないサラリーマンのストレスが限界を迎えようとした時、似た境遇の同僚が銃乱射事件を起こす。犯人を射殺し一躍ヒーローとなった主人公だが……。: 映画感想.net ～映画ファン「きよ」のオススメ作品紹介～

2019年08月14日 20:00

その男は、静かな隣人 / クリスチャン・スレイター主演。冴えないサラリーマンのストレスが限界を迎えようとした時、似た境遇の同僚が銃乱射事件を起こす。犯人を射殺し一躍ヒーローとなった主人公だが……。

心の中に闇を抱える冴えないサラリーマンの哀愁をクリスチャンスレーターが見事に演じた社会派サスペンス。周りから小馬鹿にされ、家で買う金魚と会話したり、ビルを爆破する妄想をして過ごしてきた中年会社員ボブ。ストレスが限界を迎え、職場で乱射事件を起こそうと銃に手をかけたその時、同じような悩みを抱えていた同僚が先に事件を起こす。奇跡的に生き延びた彼は、その銃で犯人を射殺。一転してヒーロー扱いされるようになるが……。
憧れの女子社員にエリカ・カスバート、社長役でウィリアム・H・メイシーら共演。監督・脚本は「コンスタンティン」の脚本家フランク・カペロ。
あらすじ
冴えない中年会社員ボブは職場でストレスを募らせ、ある日ついに拳銃に手を伸ばす。ところがその瞬間、同僚が突然銃を乱射しはじめる。女性社員バネッサが命を狙われているのを見たボブは、持っていた拳銃で思わず犯人を射殺。ボブは会社を救ったヒーローとなり、重役に抜擢されるが……。(映画.comより)

(英語の予告しか見つかりませんでした、すみません。)

Amazonプライムビデオで会員の無料対象作品をザーッとチェックしていた時、レビュー欄にて「吹き替えでした」という文字を見つけて視聴。結果的にかなり掘り出し物的な面白さでした。普通にDVDとしても販売されているようです。知らなかったなぁ。

ジャケットや予告動画の主人公像だけでもインパクトあると言うか、ステレオタイプな日本人サラリーマンぽくてびっくりですよね。ハゲてて、ほおが赤らんでて、小心者。そういう風に結構デフォルメされてますし、同僚たちの扱いも行き過ぎた感こそありますけど、似たような鬱憤を抱えてる方は少なくなさそうですし、日本だとより共感しやすいような気がしました。
「ボタン式スイッチ」を抱えてランチ中に押してビルが倒壊する様子を妄想したり、飼っている金魚が悪態を付いてくる幻聴が聞こえたりと序盤からかなり病んでるなーっていう描写はあるのですが、職場に銃を持ち込んでてより緊迫感があります。誰を撃つかまで計画しだして、こりゃいよいよヤバイぞと思ってたタイミングでの、同僚の乱射事件。何も知らずに視聴開始したのでこれもびっくりポイントでした。

そこからはあり得ないほどトントン拍子にボブの境遇が変化していって、逆に怖かったですね。手のひら返したように仲間がすり寄ってきたり、女性社員がアプローチかけてくるってところだけならまだしも、副社長ポジションとか話が出来過ぎですよね。ただメインはそこではなくて、ヒロインバネッサとのラブロマンス要素です。

命を救うことができたという満足感で彼女に会いにいったら、「ほとんど体の自由がない」ことに腹を立てた彼女に罵倒されてしまうシーンは見ててとても辛かったです。彼女の気持ちも理解できるから、余計にね。それでも献身的に尽くそうと言うボブの優しさに影響されて、怒って現実逃避するだけから少しずつ気持ちが明るくなっていく。職場だけでなくこう言う恋愛面でも充実していく姿は見ててこっちまで嬉しくなりました。「彼女の笑顔はみんなを華やかにする」って言ってましたけど、正直ボブにとってはバネッサがいたからなんとか働いてこれたという部分ありそうですし、下手するともっと早くに限界を迎えていたかも知れません。そんな相手と恋仲になれるなんて、この上ない幸せですよね。

ただそうやって持ち上げてからの突き落としが怖い。予想通りだんだん雲行きが怪しくなるので見続けるのが辛くなりましたよ。過去の社長との関係を知ってしまったり、またある人物から言われる「ボブはバネッサにとっては動かない体の代わり、スプーン程度の存在」なんて言われてしまうのも彼自身がどこかでそうかも？と感じているから何よりキツかったです。そこで彼女の愛を信じられればまた違うのでしょうが、つい試すような事をして、その結果……。

その後の展開はちょっと捻っていて、僕は全然予想してなかった事なので、なんとなく恐れていたのと同じ方向性の結末だったものの「そうきたか」って思いました。が、序盤から結構伏線は貼られていたようで、名前のアナグラムとか好きな人はピンときちゃうのかも。そのオチも含めて、どこか「笑ゥせぇるすまん」的というか、「世にも奇妙な物語」的というか。その手の作品が好きな人は特におすすめかも。そうです、後味はあまりよろしくありません。
最後に流れるインタビューでちゃんとタイトルも回収され、作品としては綺麗にはまとまってましたし、うだつの上がらないサラリーマンという役柄が風貌だけでなく所作とかでもかなり再現されていて、主演のクリスチャンスレーターの演技が光る映画でした。

Amazonにて吹き替え版で視聴。前述の通りプライム会員は無料対象です。