フード・ラック 食運 / 焼肉屋で育ったものの、ある事件を機に家を出たきりのしがないライター。グルメサイト立ち上げの仕事が入るが、同時に母が病に倒れたという知らせが……。寺門ジモン初監督の飯テロ・感動ドラマ。

焼肉屋を一人で切り盛りする母に育てられたものの、とある事件を機に家を出て母とは疎遠となっていたグルメライターが、新しいグルメサイト立ち上げのためにさまざまなな料理店に食べに出向き、そこで母の一面を知ることになる。一方でその母が病に倒れてしまい、これまでのことを悔いるように、ある目標に挑むのだが。
しがないグルメ系ライターの良人は、生まれつき美味しいものにありつけるという幸運の体質を持っっていた。知人からの依頼を受け、女性記者と共に新しいグルメ情報サイト立ち上げのために名店について調査することになるのだが、ずっと疎遠だった母が病に倒れたという知らせが入る。一人で焼肉屋を営んできたが、ある事件で閉店。最終的に家を出たきりの良人は狼狽えるが、訪ねる店で昔の母について見えてきて……。
NAOTO、土屋太鳳がメインを務めるほか、りょう、石黒賢、松尾諭、寺脇康文、白竜、東ちづる、筧美和子、大泉洋ら共演。
あらすじ
良人は、下町にのれんを出す人気焼肉店「根岸苑」を一人で切り盛りする母の安江(りょう)の手料理を食べるのが楽しみだった。だが、ある出来事をきっかけに店は閉店し、成長した良人(NAOTO)は家を出て、しがないライターとして暮らしていた。ある日、彼はグルメ情報サイトの立ち上げを任される。ところが、時を同じくして疎遠になっていた母が倒れたとの連絡を受ける。(シネマ・トゥデイより)


寺門ジモンさんの初監督作品、ということですが、一般的なコミカル要素こそあるものの基本的にはおふざけ一切なし。親子の絆、そして食に携わる全ての人へのエールという王道の感動ドラマ作品となっていて、そういう情報を聞いたら逆にびっくりするくらいだと思います。元々グルメ方面の知識がすごいというイメージはあったのですが、その強みをに生かした題材でしたし、めちゃくちゃ面白かったです。

ただやっぱり主に焼肉を中心とした飯テロ(見ているだけでお腹が空いてしまう)効果は絶大なものがあり、実際見終わって翌日にお肉を食べたほど。役者二人がそりゃまあ美味しそうに食べるものだから、ねぇ。これは我慢できない。ちなみにNAOTOさんも土屋さんも元々肉好きだそうなので、撮影とはいえ最高だったはず。羨ましい。

タイトルが示すように主人公の良人は隠れた名店とか、その店で一番美味しい料理を嗅ぎ取る嗅覚というのか、無意識にわかってしまうという運の持ち主という設定。なのですが、基本的には母親の知り合いのお店が出てくるのと、彼の実家であり知識がより豊富というのもあって料理全般というよりは焼肉の比重がかなり占めています。松尾諭さん演じる、売れっ子美食家とのバトルみたいなのも繰り広げられますからね。早口で捲し立てるシーンでは画面全体に文字が出てくるので字幕表示して視聴してなくても言ってることがわかるのも良かった。単純に「へぇー」って思う内容で、注文して出てくるまでのお店側のこだわりが知れて見る目が変わります。

そう、この映画、食べる方というかお店も含めて「誰かに食べてもらう」側にスポットが当たってて、それを応援する内容になってるんですよね。それが母から息子への愛情でもあるし、店主からお客さんへでもあるし。商売だけど、やっぱり相手が美味しいと言ってくれることが何より好きだし、嬉しいからそういう職業やってる。「たくさん噛んで、"美味しい"と感じたら飲み込む」っていうの本当に忘れちゃいけないよなーって思います。高いから、希少部位だから美味しいっていう情報で美味しく感じて、あまり味わうことなく飲み込んでしまう。もったいない事してます。
これは明らかに深読みしすぎですが、僕のように色んな映画ドラマをたくさん見ていると一つひとつがおざなりになってないかな?とか他のジャンルにも通じるような気もしたりして、襟をただされるような思いでした(笑)

母親との関係については、特に自分から背を向けちゃったから余計に恥ずかしいのかも知れませんが、個人的にはもっとちゃんと顔を合わせてもいいのかなって感じがしました。男だからってのも意識できるけど、せっかくまた向き合うチャンスがあったのだからたくさんお見舞いにいけば良いのに。でもそこには自分がしてしまった悪事と、そこからの悲劇にもケジメをつけなきゃいけない。それが良人の場合は「ぬか漬けを作ること」だったのは理解はできます。僕だったら謝って、作り方を聞いちゃうかな、と。

直接やり取りしない代わりに、名店を回ることで母がどんな人だったのか、どんな思いで店をやってたかを知っていく。りょうさんがやってるのも(見た目ということも)ありますが、めっちゃカッコいいんですよね。ライバル店なのにレシピとか、テレビのくだりとか。あとは今触れたことに関連して、ぬかどこを分けるとか。テレビ見てても儲けとか度外視でやってる老舗とか出てきますけど、なかなか真似できないですよね。そこにはひとえにお客さんのことを大事にしてるからこそできること。

そういうのを知れば知るほど、かつて良人がやってしまったことが酷くて、同時に「合わせる顔がない」ってのもわかるんですけど。最終的に彼が美味しいものと、それが実現するための人の思いを知って、「伝えるべきことを伝えられる人」というライターとしても成長できたのが良かった。序盤の方とか、知識だけはあるけど妙に不貞腐れてるし、美食家とは別ベクトルで嫌な部分ありましたからね。それが無くなった。結果的にはこれも彼の贖罪だったわけですが、仕事を振ってくれた編集者が偉かった。

美味しいものを食べるシーンがたくさん出てきてものすごくお腹も減りますが、その要素だけメインということではなく、ヒューマンドラマとして王道をきっちりと押さえてジーンとくる映画。単純に人に自慢するためだけに出向いたり写真撮ったり、そういうことが恥ずかしくなるほど、料理人の思いを感じられる素敵な作品でした。

WOWOWにて録画、Netflixにて視聴。

22年4月現在、アマプラでも会員見放題対象です。


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