FALL/フォール / 夫を亡くし自暴自棄になっていたベッキーは動画配信者の友人に誘われ地上600mのテレビ塔を登ることに。やっとの思いで登り切ったものの、今度は降りれないことに気づき。高所恐怖映像で魅せるスリラー。

地上600メートル、現在は使われてないテレビ塔に登ってとりのこされてしまった女性二人を描くスリラー。「ファイナル・スコア」などのスコット・マン監督。「海底47m」のジェームズ・ハリス、マーク・レーンらがプロデューサーを務める。主演はグレイス・キャロライン・カリー(シャザム!)
クライミング中の事故で夫を亡くしたベッキーはずっと悲しみをひきづっており、心配する父親は彼女の友人ハンター元気を出してもらうと頼む。危険な場所に挑む動画配信で人気になっていた彼女は「600mのテレビ塔」に登ることを計画していて、半ば強引にベッキーを誘い出し、最終的に二人は挑戦することになる。今は使われておらず、立ち入り禁止のフェンスを乗り越えた先で天高く続く梯子を登り続ける二人。途中アクシデントあるもののなんとか頂上に辿りつけたまでは良かったが、ハシゴが外れていて降りれないことに気がつき……。
ただ「高い」だけでなくさまざまな恐怖体験。ちょっとしたホラー映画レベルの怖さ。
ヴァージニア・ガードナー、ジェフリー・ディーン・モーガン、メイソン・グッディングら共演。
あらすじ
ベッキー(グレイス・フルトン)は、夫のダンをフリークライミング中の落下事故で亡くし、その悲しみを引きずったまま1年が経とうとしていた。そんな中、親友のハンター(ヴァージニア・ガードナー)から、現在は使われていない地上600メートルのテレビ塔でのクライミングを持ちかけられる。ベッキーはハンターと共に老朽化した梯子を登ってテレビ塔の頂上に到達し、そこからダンの遺灰をまく。新たな一歩を踏み出そうと決意するが、はしごが崩落して頂上に取り残される。(シネマ・トゥデイより)

※高所映像注意

高所恐怖症、とまではいかなくてもあまり積極的に高いところに登りたいなとは思わない程度の僕なので、予告映像を見ただけでこれ絶対ビビらされまくるなってのが分かっていました。主観映像とかVR動画で直接自分がその立場になるわけではないしな、しかも吹き替え版で放送してくれてるしなってことで興味本意で録画して、見始めて。プチ後悔。結論から言うと映画が終わるまで何度も「ヒェ」っとなりました。

最序盤の岩壁のシーンもなかなかの見応えありますし、あらすじの通り大事な夫が死んでしまうという割とショッキングな画像があるのでそこでまず覚悟を決めさせられます。その悲しみによって引きこもったり酒に溺れたりっていうのを経て、心配した友達が連れ出す形でメインとなるテレビ塔を登るストーリーが展開していきます。

これいわゆるバカッターや過激なYouTuberへの皮肉というか「再生数稼ぎで危険なことするととんでもないことになる」って意味合いも含んでると思うんですが、友人のハンターは典型的なそのタイプ。わざわざ視聴者を煽るようなことしてみたり、再生数のために胸の谷間を強調する服を着てみたり。主人公ベッキーを勇気づけるって大義名分があるものの、実際は自分の動画のためってのが大きいのです。当然ながら彼女も動画に参加させるし。

まずテレビ塔に向かうまでの道すがらで脇見運転で交通事故スレスレになってて、そこでもうビクッとしました。いわゆるジャンプスケア、急に驚かされるっていうのもあるのであらかじめご注意を。そもそも題材的に「高所恐怖症」「精神的にくるのが苦手な方」は絶対に見ないでくださいね(笑) 上でも書いたけど予告の時点できついかも。

いざ登り出してからの映像もなかなか凄くて。どんどん小さくなっていく地上の風景、延々と同じ梯子の繰り返しという要素によってもう日常から一気に特殊な状況下に置かれてしまうし、下手に止まると頭おかしくなるからとにかく上に進しかない絶望。一応先に進むハンターが励ましてくれるから頑張ろうって気持ちにはなるし孤独じゃあないけどキツすぎるよね。元々クライミングしてたとはいえ、これはやばすぎる。

で、予告にもあるとおり本当の恐怖は「降りれない」って分かってから。ハシゴが外れてしまうわけです。そこもめっちゃハラハラしましたが、ぶっちゃけテッペンに行けることは予告で知っちゃってるのでまだ大丈夫。脳内で安心できてた。でもひとしきり喜んでいざ現実を知った時の二人の絶望感がね……。荷物も少し下に置いてきちゃったのに、劇中の言葉を借りれば「ピザ一枚分」、それよりも少し広くてなんとか二人座れるだけのスペースで過ごさなきゃならないという。
食料とか、寒さとか、トイレとかどうするのっていう。パニックになっちゃうよね。

ラストギリギリまで結末は読めないから、すんなり助かるわけないのも予想できるのですが「いけるかな?」と思わせてダメ、っていう演出がなかなか上手くてそこも見せられましたね。たとえば照明弾。これによって気づいてもらえるかな?って思ったら……。唯一の希望って感じだったのにそれがあんな形で消えちゃうのキツすぎる。ぬか喜びって余計にえぐられます。

それ以外にも序盤から出てきていた複数の要素を複線的に回収してて、動物の死体に群がっていたハゲタカ(?)が、ベッキーの血の匂いによって集まってきたり。これはサメ映画っぽさもありました。前述の通り「海底47m」のスタッフが関わってるからね。動物は容赦ないから怖い。あとはハンターがダイナーで披露したとある電気の裏技。これも希望が見えたんだけどなー。

さらに唸ったのが、ハンターとの関係。実は二人はただの友達というだけでなく……。極限状態だからこそ見えてくる本性、的な要素もなるほどと思ったし、さらに別のサプライズが……。これは予想外。予告動画のコメント欄に「全部私のせいよ」っセリフにその通りってツッコミが入ってましたが、最後の最後に望みを繋ぐ活躍をしてくれて、ちょっとは見直します。

怪奇現象とか化け物が出てくるわけじゃないけど、ホラーと呼べる恐怖。高いところに登る、置き去りになるってワンシチュエーションのアイディア勝負でここまで見せてくれるかーとビビった反面見て良かったと思う作品でした。すごく練られた脚本。
少なくとも夫を失った喪失感から吹っ切れるくらいのものすごい体験だっただろうし、ベッキーが踏み出すきっかけにはなってるけど荒療治すぎるのは間違いない。
高所映像が平気な方のみ、ご視聴ください。


WOWOWにて吹き替え版を録画、視聴。

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