エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス / ミシェル・ヨー主演。確定申告に翻弄されるコインランドリーの経営者が、マルチバース全体の危機を救うために戦うことに。別次元の自分の記憶を得て、強くなれ。

11部門にノミネートされ、主演女優賞、作品賞、監督賞、助演男優賞、助演女優賞、脚本賞、編集賞という7部門で受賞し、【アカデミー賞総なめ】という評価が文句なしのSFアクション家族愛映画。主演のミシェル・ヨーはアジア人初の主演女優賞という快挙を成し遂げたほか、作品のテーマになるマルチバースの中で様々な別次元の主人公を演じ分け、アクションも流石の一言。
コインランドリーを経営するエヴリンは確定申告に不備があるとして税務署に呼ばれるが、そこで夫が豹変。宇宙全体の危機が迫っていること。自分は別次元の夫だと説明してくる。混乱するエヴリンだが装置を使って「別次元の自分」の景色を体験。襲いかかる敵を前に、なんとか対応することを決意するのだが……。
摩訶不思議なマルチバースの世界、しかし根底にある家族愛。世界中での高評価も納得の感動映画。
キー・ホイ・クァン、ジェイミー・リー・カーティスら共演。

あらすじ
エヴリン(ミシェル・ヨー)は優柔不断な夫ウェイモンド(キー・ホイ・クァン)と反抗期の娘、頑固な父と暮らしながら、破産寸前のコインランドリーを経営している。税金申告の締め切りが迫る中、エヴリンはウェイモンドに並行世界に連れて行かれる。そこでカンフーマスターさながらの能力に目覚めたエヴリンは、全人類の命運を懸けて巨大な悪と闘うべく立ち上がる。


監督脚本を調べたら『スイス・アーミー・マン』などのダニエル・クワンとダニエル・シャイナートとあって、いろんなことが腑に落ちました。そちらの映画も過去に紹介していますが ( http://xn--qfusdo8o71s.seesaa.net/article/Swiss-Army-Man.html ) 水死体から出る腐敗ガス=オナラの水力で海をわたる。死体役はハリーポッターでお馴染みダニエルラドクリフという超ぶっ飛んだ作品。
この「エブ・エブ」も基本的には感動ストーリーだしアクション多彩だしマルチバースの面白さがあるんですが、別次元と繋がる方法が『突拍子もないことをする』という設定になっているためにかなり馬鹿馬鹿しいやり取りが何度も出てきます。
リップクリームを齧る、愛の告白をする、とかならまだしも指と指の間を紙でシュッとやる(痛そうー)とかに始まり、お尻に何かを突っ込む(下半身丸出しになります)まである。あとは宿敵が大人のおもちゃで攻撃してきたりちょいちょい下品なシーンがあるのでご注意を。

その敵ですが割と序盤の段階で判明して。こういうののパターンだと別次元のエブリンかなと思ってたんですが、先にネタバレしちゃうと娘の方なんですよね。もちろんそれだけが直接的な理由じゃないにせよ、同性愛のことを認めてなかったりとか主人公の宇宙でも母と娘の関係性がうまくいってない。アルファ世界(?)では期待をかけすぎた結果こんなことになっちゃったわけですが、映画のメインとしてはほんと「壮大な親子喧嘩」だし、最終的に和解することが平和に繋がる。そこは非常に素直なドラマになってました。

あとは夫との関係もそう。限界がきていて、離婚するつもりだったウェイモンド。最序盤の年老いてなお仲睦まじそうにしている老夫婦を見ている
姿が切なかった。こうなれたかもしれないのに。別次元でもやっぱり別れ話してたし、エブリンは自分のことでいっぱいいっぱいなところあるからなーどうしても周りとの関係性がうまく行かない。

設定を聞いた時はもっと「人生のたられば」を扱うのかと思ってたけど、それ以上に「まるまるな世界」ってパターンの方が多すぎて印象は薄かったですね。というか女優だったverを見てノリノリで羨ましがるエヴリンが新鮮でした。【役作りでカンフーを習った】的な方向に持って行ったり、あるいはレッドカーペットや授賞式のシーンではおそらく本当にミシェルヨーさんの過去の映像使ってるぽくて(違ったらすみません。そのくらいリアルでした)面白かったな。逆に言えばミシェルヨーがしがないコインランドリー店主の世界もあり得たのか、みたいな。

指がソーセージになってるから(この説明を打ってるだけで笑える)、足が発達して足だけの武術になったり、あるいは指だけでめちゃつよになる。看板を持ってパフォーマンスする仕事が盾をつかった戦い方に応用できたりとか不思議ワールド→目の前の敵に対処への繋ぎ方をすごく工夫していて面白いと同時に感心しちゃいます。いろんな職業になってる世界があって、その中で武闘家がいた。程度を予想してたからね。

敵が最強すぎるから次から次へ異世界をワープする力もあって、お祭りの飾りだったり、最終的には岩だったり。カオスすぎてついていけないけど、言わんとしてることはなんとなくわかる。何にでもありえるからこそ、馬鹿馬鹿しくなっちゃう。「あらゆる選択肢を経て、今があって、その唯一無二さがあるからこそ人生は素晴らしい」ってメインテーマを強調していたと思います。と、同時にここからまた無限の可能性があるっていう希望にもなってるし。

もう終盤にかけては何が起きてるのか、ってツッコミが追いつかないくらいの出来事ですが、敵の資格を倒すのではなく幸せに変えてしまうとい戦い方がほっこりするし、あんだけ嫌がっていた「目玉シール」もシュールさが一周回って泣けてくるっていう。色々あったけど、良かったね!!って爽やかに終われるのが好きでした。

個人的にお話自体はめちゃくちゃ良かった!どんな人にもすすめる!ってタイプとはまた違うんですが、アイディアとか映像の目まぐるしさは遊園地のアトラクション、あるいは具合悪い時の夢みたいな混沌っぷりで、これを見ないのは正直勿体無いってレベルの怪作だと思います。全てをへたあとの、エヴリンの変化。家蔵愛に泣けます。

Netflixにて吹き替え版を視聴。

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エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス [Blu-ray]


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