暴走車 ランナウェイ・カー / 銀行の重役であるカルロス。子供二人を学校に届けようとマイカーを走らせると、なんと車に爆弾を仕掛けたと連絡が入る。座席を離れると起爆される極限状態の中、必死に交渉を試みるが……。

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第30回ゴヤ賞で編集賞と音響賞を受賞したサスペンス作品。主演はルイス・トサル。座席を離れると爆発するように改造されたマイカー。子供二人を乗せたまま暴走することを余儀なくされた男の悪戦苦闘を描く。
銀行で働くカルロス。長女と長男を送り届けようと車に乗ると何者かから着信し、マイカーに爆弾を仕掛けたと告げられる。座席を離れることでも、あるいはそいつの持つ起爆装置でも爆発してしまうと脅され、金を用意するように言われるが重役といえども簡単にはいかない。車を止めることさえ出来ない中、長男が負傷して……。極限状態の中、父親の奮闘。家族との関係。ハラハラで見せるエンターテイメント作。
エルビラ・ミンゲス、フェルナンド・カヨら共演。
あらすじ
銀行の重役であるカルロスはある朝、いつものように娘サラと息子マルコスをマイカーに乗せて学校に送り届けようとするが、彼の携帯電話にかけてきた謎の人物によればカルロス、サラ、マルコスが座った座席には、座席から離れるとたちまち吹き飛ぶ爆弾が仕掛けられているという。謎の人物は「俺の金を返せ」といい、約50万ユーロの大金をカルロスに要求してくる。カルロスは子どもたちを救おうと、相手と慎重に交渉しようとする。(WOWOWより)


アルバトロスフィルムから発売され、地上波で深夜放送されたという点から見てもどのようなジャンルかはなんとなく察しはつくのですが、個人的にはかなり引き込まれて普通にハラハラさせられましたし、父親に感情移入してとても面白かったです。まだプリプロダクション中ですが、リーアムニーソン主演でのリメイクが決定しています。

あらすじを引用するのに閲覧したWOWOWの番組詳細でも触れられていましたが、【爆弾が仕掛けられた乗り物】というのは名作『スピード』をはじめとして結構な数の作品があるものの、そこに「犯人との交渉」に焦点を置いていたり、やりとりする中で明らかになっていく妻の秘密や家族との関係性などカルロスの人生、あるいは動機とも関わってくる犯人の人生に共感するような作りになってるのが新鮮だったと思います。

普通こういうのは主人公カルロス側に何か落ち度があったりというパターンが多いのですが、妻の秘密と書いて大方予想できちゃう通り不貞について長女の口から聞かされたりと見てて結構きついものがあります。なかなか連絡がつかなくて何してるんだろうって煽られた上での、発覚ですからこんなピンチじゃなかったら怒りとか悲しみが先に来ちゃいそう。幸か不幸か、自分達の安全の方が優先度高いですから、そんなのどうでもいいから金集めるのを手伝ってくれ!という感じ。

いくら重役でもお金を集めるのが大変で、なんとか知恵を絞っていく流れも良かった。なるほど顧客から少しずつ集めるわけか。同僚や秘書に怪しまれながらも進めていく緊迫感は誘拐モノ的なハラハラ感があります。まあ自分や子供の体を人質に取られてるようなものだからある意味一緒なんだけど。この周囲の人との会話も犯人が聴いている設定も面白かったですね。余計なことは言うなよ、っていう緊張。遠隔起爆装置もあるから、下手なことできない。考えられてるなー。

長男からの出血という別のタイムリミットが出てきたり、なぜかカルロスが子供を巻き添えに自暴自棄になってる(錯乱とかそういう方面)と勘違いされたりと次から次にトラブルが切り替わってくのも飽きせなくて良かった。ただあまりに理解者が少なすぎてもイライラしちゃうので、警察側に一人物事を冷静に見ている女性がいてくれたのは救いでした。犯人のこともすぐ怪しんだし。

そうなんです、妨害電波くるなら直接やったろ、と言わんばかりに別人のふりして犯人その人が車に近づいて、爆発の時間を早めてしまうのです。ここからはいよいよ緊迫感がすごくて、サスペンスとして最高の面白さでしたし、極限状態の中で娘の父親に対する想いが強まって言ったのもジーンと来ちゃうポイントです。

犯人の動機とも絡みますが、正直カルロスには、高給取りでいけすかないという面もあったのでしょう。ただ仕事をこなしてきた結果が犯人の悲しみを招き、また家庭を顧みないことが妻の不貞にもつながった。そういうダメなところをカルロス自身が認めて、ちゃんと謝るっていうのも人間的な成長が見られて好きでしたし、見てる僕らはどうだろうか?と考えさせられましたね。

タイトルに暴走と入っているのでスピード感を連想しましたが、それ以上に電話の相手に自分や家族の命を握られた緊迫感、父として絶対に家族を守るっていう固い意志、絆を感じさせて予想とは違う面白さのある映画でした。数年前に深夜放送されたものを録画したのを先日見ましたが、掘り出し物だったなというのが正直な印象。前述の通りリメイクが決まってるのも納得です。

ちなみに吹き替え版で、主演のカルロスは遠藤大智さんが担当してました。

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ちょっとトランスポーター意識したジャケットで笑っちゃう。

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