【Netflix映画】ダンプリン / 亡き叔母に自分らしく生きることを勧められたものの、コンプレックスを捨てきれないぽっちゃり女子が、元ミスコン優勝者の母に反抗するためにミスコンに出場し……。

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日本では「恋するぷにちゃん」というタイトルで翻訳されているジュリー・マーフィのヤングアダルト小説"Dumplin’"を映画化。主演はダニエル・マクドナルド(娘)、ジェニファー・アニストン(母)。
かつてミスコンで優勝し、時が経っても体型を維持し続け毎回運営にも携わってきた母とは対照的に、娘ウィローディーンはぽっちゃり女子。しかしずっと世話してくれた叔母ルーシーは自分らしくいることを応援してくれて、そんな彼女が大好きだった。学校でもからかわれ、恋に一歩踏み出せないウィローディーンは、母親に反抗する形でミスコン出場を決意。彼女に賛同する仲間たちも現れるが……。
オデイア・ラッシュ、ベックス・テイラー=クラウス、ダヴ・キャメロンら共演。
あらすじ
テキサス州で暮らすぽっちゃり体型の女子高生ウィローディーンは、多忙な母の代わりに自分を世話してくれた亡き叔母ルーシーのことが大好きだった。叔母の教え通り自分らしく生きようとするウィローディーンだったが、その一方で自分の容姿に対するコンプレックスから逃れられずにいた。ウィローディーンの母ロージーはかつて地元のミスコンで優勝した経験があり、現在もその美貌を保ちながらミスコンの運営に携わっている。そんな母への反発心から、ウィローディーンは自らミスコンに出場することを決意する。(映画.comより)


「ありのままの自分で」テーマの作品は少なくないですし、主人公がぽっちゃりというのもこのブログでもいくつか紹介しましたが、この映画のウィローディーン(ウィル)は叔母ルーシーの愛情という形でかなりの影響を及ぼしていて、ある程度その価値観は彼女の中にも存在してます。ただ一方で完全にコンプレックスを拭いきることができなくて、例えば母親は映画タイトルであるダンプリンと呼ぶし、そのことで学校でもいじられます。バイト先の男性から明らかに好意を向けられててても不釣り合いじゃないかって足がすくむし、「理想としてはそうだけど、現実は……」を描いてるような気がして面白かったです。
ちなみにダンプリンは小麦粉団子とか焼き菓子のことで、そこから転じてずんぐりした人に対する言い方(蔑称)になってるみたいです。小説の邦題に習えば「ぷにちゃん」ということでしょうが、いくら親しみをこめてたとしても母親からそんな呼び方されてたら嫌ですよね。

そもそも母親自体がミスコン命という呪縛から抜け出せてなくて、必死で美貌磨きに専念する姿はある意味滑稽にも描写されてると感じました。だから太ってる娘や、それを認めて彼女がなついてるルーシーに対してよく思ってない部分もあって。いわゆる「太るのは自分に甘いから」という価値観を持ってるタイプなんでね、そりゃ本当の意味で分かり合えるわけないんですよ。

だから親友もいて、バイト先でも人気者で、好意を寄せてくれる人もいて、とぽっちゃり弄りを除けば映画スタート地点でもそこまで絶望ばかりじゃないウィローディーンにとって本当に大事なのは、叔母が示してくれた価値観を母やもっと多くの人に認めてもらうことなんですよね。そして何より自分が心から信じなければいけない「ありのままの自分で」という。

ミスコンに出ることが母親への反抗になると考えてる時点で、一番気にしちゃってる。ウィルが参加するならばと親友エレンや、ぽっちゃりのミリー、LGBTのペレスなど他にもミスコン出場志願者が増え、抗議活動!という雰囲気になっていくわけですが、それぞれの向き合い方の違いが浮き彫りになってバラバラに。元々エレンとは体型の違いがあったけど、努力して上達して評価されちゃうし、一方で一人だけぽっちゃりだけど自分からどんどん仲間の輪の中に入って積極的に楽しもうとしてるミリーの姿をバカにもできないし、むしろ羨ましてくて。一番ウィルが中途半端な存在になってますます心細くなっていく。そんな単純な話じゃないんですけど、自分を好きになれないと全部が悪く見えてくんですよね。親友に関しても、新しい仲間とそっちの世界で勝手によろしくやってろ!って変に勘違いして自分から遠ざけちゃう。この仲違いは終盤ミスコン本番でのと面談につながっていくんですが、ウィルはほんといい友達持ったと思う。

落ち込んだウィルにとっての救いはやっぱり叔母ルーシーで、彼女の足跡を辿る中でドラァグクイーンのバーに行きそこでものすごい体験をします。ロマコメでもオネェ的キャラが助けてくれる流れっていうのは王道の一つですが、「大事な人の思い出の場所」という側面があり、そこで働く人々もまたウィルに亡きルーシーの面影を重ねて力になってくれるという展開で余計にグッときます。改めてウィルが自信を持ち始めていくし、過去の行動を冷静に悔やむことができるようになってく。

ハッピーエンドへの持って行き方も従来のものからさらに捻っていて単純にミスコンの結果そのものよりも、今回参加したことで親子の関係がどう変化したか、を重要にしてるのが良かった。もちろん主人公のウィルとロージーのところもそうなんですけど、一方でミリーとその母も短いシーンながら感動ポイントで。ああいいう結末にするのも納得。ミリーも間違いなく輝いてましたし、彼女が主役だったとしても映画として成立しそうでした。自分がどう感じるか、どうなりたいか、がポイントなんですよね。

ミスコン優勝候補役としてディセンダント主役のダヴ・キャメロンが出ていました。こっちはこっちでたぶんものすごい努力をしてるだろうし、意地悪キャラとかでもなかったので良かったです。あとLGBTの役を演じたベックス・テイラー=クラウスは実際もゲイであると公表しているそうです。単に体型じゃなく多様性を含んだ映画でした。

タイトルとミスコンが出てくることしか知らずに試聴しましたが、等身大の自分に胸張っていいというエールをもらえるタイプの作品でとても好きになりました。
Netflixにて吹き替え版を試聴。

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