家族のことをつつかれて思わず記者に暴力を働いてしまったプロサッカー選手ホンデ。タレントに転向を決めるも、最初に選ばれたのはイメージアップを狙った「ホームレスだけのサッカー選手の監督」だった。熱意ある女性プロデューサーが密着してドキュメンタリーをとることになり、サッカーのうまさよりも彼らのバックストーリー=視聴者を惹きつけるかでメンバーが選出され、実力がないばかりか曲者揃い。最初こそ仕方なくチームを率いていたホンデだったが……。
監督・脚本はイ・ビョンホン。ム・ジョンス、コ・チャンソク、チョン・スンギル、イ・ヒョヌ、ヤン・ヒョンミン、ホン・ワンピョ、ホ・ジュンソクら共演。
あらすじ
選手生命最大の危機に直面し、ホームレスを寄せ集めた即席のホームレス・サッカーチームの韓国代表監督に半ば強制的に就任させられたサッカー選手のユン・ホンデは、彼らのドキュメンタリーを制作することで成功を夢見るPDのイ・ソミンらとともに、ホームレス・ワールドカップへの出場に挑戦する。(シネマ・トゥデイより)
サッカーということで真っ先に「少林サッカー」を思い出しましたが、いやいや監督をやらされるけど付き合っていく仲で少しずつ絆が芽生え……っていう作品は「飛べないアヒル」とか「陽だまりのグラウンド」など泣かせるパターンの一つなのでもう絶対僕の大好きな作品になるのはわかっていました。当然、その予感は間違ってなかったわけですが。
そもそも何か失敗しちゃった人がまたチャンスを得て不満たらたら言いながらもやってみる、第二の人生をテーマにしたいわゆる「再生の物語」も大好きなジャンルなのでね。先にネタバレしちゃいますけど来ないかな〜と思ったのに大会参加するための空港にいつの間にかスーツで並んでたシーンは予想通りになった嬉しさとほんと生まれ変わったんだなって実感でかなりグッときちゃいました。
まあこの主人公はそこまで悪い人じゃなくて、ただちょっと短気なだけ。発端となった事件も詐欺行為のち逃亡し続けてる母親のことを揶揄されて思わず手が出ちゃっただけだし、そういうキャラに見られてるけど練習は誰よりもしてたって判明していくし。何よりなんだかんだ言いながらちゃんとメンバーに対して指導してサポートするところがいいです。
ついでに言うとこの母親が唯一と言っていいほどの不快キャラ。お金の無心したり新しい恋人作ったり。それでいて息子の試合のビデオを見たがって「母親なんだな」ってシーンを入れられても、よく許してるなぁって思っちゃいます。肉親だから見捨てはしないけど、もっと冷たく当たっちゃうと思う。
ヒロインのIUもかなりぶっ飛んでて、ある意味でこの手のジャンルを皮肉るような「お涙頂戴のストーリーが撮れればい」って開き直ってメンバー選出するし、テレビ的に面白いかどうかで決めてる。ズバズバ意見言うから気持ちいんですよね。「お前病院行った方がいいぞ」「薬代が払えません」ってやりとりで吹き出しちゃた。有名キャストの初共演ってことでしたが、映画全体としてラブロマンス要素がなかったのでこの2人もどちらかというと戦友って感じ。利害が一致して、目標に向かって突っ走ってた。
もちろんそういう選出方法だからメンバー一人ひとりのキャラや抱えているエピソードも濃くて良かったし、「ホームレスや障がい者が迫害されている」という社会風刺的要素も盛り込まれてました。メンバーの恋人的な知的障害者の女性が出てくるのですが、自分で「サ通(サッカー通/吹き替えでは「マニア」と表現)」というくらいの知識があって、ホンデと意気投合するのも意外な展開。そのあと彼女が危ない目にあって、またホンデが世間で目立ってしまう結果になるんですけどね。
あとは「ボブという名の猫」でも大きく扱われていた【ビッグイシュー】もかなり大々的に登場させていて、見てる人にホームレスの環境のことを考えさせるきっかけになっていると思います。ただ怠けてるわけじゃない、それぞれに理由があって、もがいてるのですよね。
一番印象的だったのは、最年少の寡黙な青年。大事な恋人の安否が分からなくてずっと探してたのが、なんと国際大会にて日本の団体でそっくりさんを発見。思わず距離をつめすぎて韓国チームと日本チームでトラブルになるのは日本人として辛かった。事情をちゃんと説明できないからこそ拗れちゃってねぇ。でもそんな彼がいろんなことに区切りをつけて、果敢にシュートを狙っていくのが良かった。練習の時も「自信を持って打つだけ」ってホンデもその真価を見出してたからね。
実話を元にしてるし、いくら監督が凄くても凸凹チームがいきなりバンバン勝つほどファンタジー展開にはならなくて。国際大会の序盤は散々な気かになるのだけど、途中で「他国から助っ人を入れられる」と言う助け舟でいきなり強くなる。でも観客からは顰蹙買う。っていうのがリアルでなんとも言えなかた。で、最終的にホンデが鼓舞してオリジナルメンバーだけで限界まで戦う。「記録よりも記憶」って月並みな表現かもしれないけどあの場だからこそ刺さるし、いっちょ見せつけてやれ!って熱い気持ちで応援できました。
あくまで人間ドラマに主軸を置いてるので大会の後日談もガッツリやってくれて、それぞれが明るい道を歩き出そうとしてるのがわかってそこも感動ポイント。問題の視聴率も……。「サッカー選手、イケメン」が別の人に対しての言葉になるのも好き。
そして何よりホンデね。カッコよかったです。
そうそう、大会の人の実況のおじさんが少しずつ韓国びいきになっていくんですが(笑)「トラの雄叫び」と表現したのはさすが韓国作品だなと思いました。何かで知ったのですが、韓国にとって自国や強さを象徴する動物らしいです。オリンピックのマスコットにも使われてましたよね。
テンポよく進みますし、少しずつ深まっていくチームの絆、人間のやさしさに感動しつつもスポーツ物らしい手に汗握る熱い展開で最後まで面白かったです。
Netflixにて吹き替え版で視聴。
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