ナイル川殺人事件 / ナイル川を進む豪華客船に乗った、大富豪の新婚夫婦とその友人たち。探偵ポアロもそこに乗り合わせていたが、悲しい事件が起きて……。アガサクリスティー原作、ケネスブラナー監督主演第2弾。

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ミステリの女王アガサクリスティによる「ナイルに死す」を原作に、映画版、ドラマシリーズに続いて3回目の実写化。ケネスブラナーが「オリエント急行殺人事件」(2017)に引き続き、監督、主演ポアロ役を再び担当。豪華客船の中で起きる殺人事件を解決すべく奮闘する探偵と、愛の物語を描く。
大富豪の娘リネットが結婚し、その新婚旅行としてナイル川をめぐる豪華客船での旅が行われれることに。集まっていた夫婦の友人知人と、そして探偵のポアロが同行することになるが、途中から夫の元彼女のジャッキーが乗り合わせる。友達に恋人をとられたことで二人に恨みを抱える彼女に不安を覚える一同。しかもそこでリネットが殺される事件が起きる。
ガル・ガドット、アーミー・ハマー、エマ・マッキー(英語版)、トム・ベイトマン、レティーシャ・ライト、アネット・ベニング
あらすじ
エジプトのナイル川をめぐる豪華客船内で、新婚旅行を楽しんでいた大富豪の娘リネット(ガル・ガドット)が何者かに殺害される。容疑者は、彼女とサイモン(アーミー・ハマー)の結婚を祝いに駆け付けた乗客全員だった。リネットに招かれていた私立探偵ポアロ(ケネス・ブラナー)が捜査を進めていくうちに、それぞれの思惑や愛憎が絡み合う複雑な人間関係が浮き彫りになっていく。(シネマ・トゥデイより)


前回のオリエント急行殺人事件同様に、ほぼ密室状態の中で、乗り合わせたメンバーの中から犯人を探すというサスペンス。興味はあったもののこれまた完全に原作未読の状態で視聴しましたので予想しながら見るのがとても楽しかった。冒頭で触れた通り過去にも映像化されている関係で結末などアレンジされているかも知れませんしね。オチを知っているという方も最後まで気を抜かずにご視聴ください。

冒頭はメインとは別の、ポアロの過去について。その前作でも写真が写っていた「かつて愛した女性」とのエピソードが描かれます。今回はまさに【愛憎渦まく】物語というのがプンプン臭ってるんでね、必然的に彼にとっての愛の物語が強調されてます。ちょっと不遜で変人じみたところありますけど、彼自身全くそういう感情を知らないわけではない。今回の船旅でももしかしたらいい感じになる可能性があるかも、なんて相手が出てきますしね……。

前作からのといえば、友人のブーク。なんというか放蕩息子ってイメージがついてたキャラですが、母息子で登場。恋人ができたものの、それを母親に認められていないという可哀想な状況ですが、終盤にかけてはポアロにさえ嘘というか隠し事をしていることがわかって……。前述の通りポアロは結構人に失礼な態度を取ったりするので、親友である彼が間に入ってくれるだけでだいぶマイルドになったりするんですよね。ただ母親ともども、一応容疑者として扱わないといけないから今回はあんまりタッグは見れず。お話としてはこの「ナイル」で独立してましたが、その辺りは1作目見ていた方がより共感できたかも知れません。

そう、繰り返しになりますが例によって今回も全員が容疑者ってことで、ポアロと一緒に見てる我々も予想していくわけですが「自分を捨てて新しい恋人に走った」「友人なのに恋人をとった」という夫婦二人に向けての憎しみもあって、かつ凶器まで持っているジャッキーが真っ先に候補に上がるものの、そんなシンプルな構造なのか?と勘繰る。特に「オリエント急行」がかなりインパクトあるお話だったので余計にね。妻の元カレだったり、お金を管理してる弁護士。逆に金にうんざりしている奥様と、彼女の看護師。さらには友人でもあるミュージシャンとその叔母っていう風に考えれば考えるほど怪しいし、動機もありそうな気がしくる。愛もそうですが、お金も人を狂わせますからね。

遺跡での殺人未遂、拳銃による妻の殺害、その前の発砲事件、さらに刃物による第2の殺人、口封じでの……というように犠牲になる人も多かったですし、逃げ場がないし結構スリリングでした。一個だけネタバレするとポアロも薬をもられてしまってたし。(普段お酒を飲まないから単によったのかと思ってた) PG12指定なんで、残虐描写はそこまでキツくないですけどね。アダルト方面は夫婦が露骨にいちゃついていたという印象(笑)

僕個人の予想について言えば、一部は当たってたものの完全に予想もしてなかった部分もあり、前作ほどではないにせよなるほどなーって気持ちにさせられました。ポアロがそれに辿り着く流れについても、序盤の要素が関わってたりして面白かった。なぜ絵画だったのか、とか。ネックレスが高価である、という設定はああいう形になるのもなんとも言えない切なさがありますし。動機に肩入れするっていう感覚はあんまりなかったですが、納得できるものでしたしね。最初からジャッキーが可哀想な女性、リネットが悪女、っていう描き方してるのは、果たしてそのまま素直に受け取るべきか、あるいは疑うべきか。

ただなんと言ってもインパクトあるのは一番最後の発砲。核心に迫ってしまうのであまりかけないのですが、これがまあすごかった。なんとも言えない気分で映画が終わっていく。これはオリエントとは別の感覚でしたね。色々な意味で、愛によって狂わされてしまった人間の悲しさ。

違和感がある、とまではいきませんが、わざと意識して見ると「合成映像だな」って思うシーンが多々あり、エジプトの景色や遺跡はとても綺麗だった反面、コロナの中で完成させるのが大変だったのか思い知らされました。公開予定が1年以上伸びましたよね。3作目の制作も決定していて、今度はマイナーな小説の映像化だそうなので、そちらも楽しみに待ちたいと思います。

この2月劇場公開だったものが早くもディズニー+の見放題にきて嬉しいサプライズ。見れてよかったです。

吹き替え版で視聴。今回のポアロは草刈正雄さんではなく、広瀬彰勇さんでした。

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