ある女流作家の罪と罰 / メリッサ・マッカーシー主演。落ち目になった伝記作家が、著名人の手紙を偽造して売り捌くように。稼ぎが増えていくも、ついにバレてしまい……。実話を元にしたコメディドラマ。

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実在した伝記作家リー・イスラエルの物語をコメディエンヌとしても定評あるメリッサ・マッカーシー主演で映画化。ベストセラーを出して一度は有名になったものの落ちぶれてしまった女流作家が、その才能を活かしていかにもそれっぽい「著名人の手紙」を捏造。コレクターに高値で売れて生活が好転しはじめるが、ついにバレてしまう。そこで今度はこの出来事を本にすることにして……。
魔がさしてしまった主人公の悲喜こもごも。爆笑とはまた違う、リアルな人間のサガに共感しニヤリとさせられる物語。
共演はリチャード・E・グラント、ドリー・ウェルズ、ジェーン・カーティンら。
あらすじ
ニューヨーク。かつてベストセラーを何冊か書いた伝記作家リーだが、最近は新刊の企画が通らず、毎日の生活費に困るありさま。そこで大切にしていた女優キャサリン・ヘプバーンが書いた手紙を古書店に売ると、有名人のスキャンダラスな手紙がコレクターに高く売れることを発見。思い余ってリーは著名人たちの手紙を捏造しては古書店に売り、ひと稼ぎするように。しかし、あるコレクターは手紙が捏造されたものであると気付き……。WOWOW番組案内より)


検索すればわかる通りこのブログで紹介したメリッサ主演の作品といえば「ブライズ・メイズ」「デンジャラス・バディ」「ゴーストバスターズ」「SPY」とみんなコメディなんですが、今回はそういったゲラゲラ笑えるようなタイプではなく、僕らが誰でも持ってそうな心の弱さ=人間らしさを全面に出した、どこかにいそうなおばちゃんといった印象。作家だけあって全ての会話シーンが非常に軽妙で、毒があり聞いてるだけでニヤついてしまうので面白いのは面白いんですけど、そこにどこか悲しさみたいなものが見え隠れてして、新境地だなぁと。受賞こそしなかったですが、主演女優賞、助演男優賞、脚色賞とアカデミー賞で3部門ノミネートされていますからね。そのくらい演技が良かった。

上記あらすじの通りリーは落ち目になってしまった伝記作家で、出版社の反応もあまり良くないし、本屋での著作の取扱もひどいもの(いわゆるセール品) 才能はあるんでしょうが売れないことには収入もないわけで、生活はもうめちゃくちゃ。中盤あたりで掃除するシーンが出てきますがほんとにかなりの汚さなのがうかがえますので、職業柄資料などで物があふれてるのはしょうがないとしても結構ドン引きしちゃう。ベッドの下から固まった猫のフンが出てきてますし。そこに加えて昼間からアルコールを飲む習慣。典型的なダメ人間だよ。

その猫だけが彼女の唯一の友達だったはずが、ひょんなことからバーでジャックという知り合いと再会し二人は友達のように。二人ともLGBTだと示唆されてるのでこの組み合わせでのラブロマンスこそないですが、色を失ったような生活の中でくだらないやりとりをするのは彼女にとってとても楽しかったと思います。このジャックを演じるリチャード・E・グラントもいい味出してましてね。前述の通り助演男優賞ノミネートですから。リーに負けず劣らずのひどい男なんですが、どうも憎めない。だからつい彼女がやっている犯罪について口を滑らせてしまったし、共犯になっていくわけです。

メインとなる捏造のシーンは「主人公側が犯罪を犯す映画」の面白さがたくさん詰まってて、著名人ごとにタイプライターを変えたり、古い紙を用意したりっていう流れはワクワクします。残念ながら僕にもっと知識があれば「ああ、この人はこういうこと言いそうだな」って楽しみ方もできたんでしょうけどね。少なくともみんな信じちゃうわけですからリーはその手の才能はめちゃくちゃあったというのだけわかりますし、人の人生に思いはせ、綴ってきた伝記作家としてはまさに天職だったと思います。犯罪だからほんとはダメだけど。

ジャックのアイディアでそっくりのコピーと本物を入れ替えるシーンも手に汗握る演出で面白かったです。厳重に警備されている保管庫であんなことができちゃうっていうのはちょっとファンタジーですが(持ち物検査までされてよくバレなかったなぁ)後に引けなくなってきた彼女のなりふり構ってられない感がひしひしと伝わってきて良かった。

お金が入るようになって全部が好転してくのは見てるこっちも明るい気分にさせられましたが、そうなると逆に今度はバレた時の衝撃が怖くなるのが人間。実際に陰りが見えはじめますし、猫ちゃんもショッキングなことが……。本屋さんだから偽造には加担してくれなかったでしょうけど、いい感じになったあの人と新しい人生に一歩踏み出してたらどうだったでしょうか。この辺でもうやめようってどこかでブレーキかけてれば、後になって色々考えてしまいますが、結局はバレて捕まってしまいます。

終盤あたりは、そんな彼女がただでは起きずに「この顛末を自伝にしよう」ってエピソードが描かれます。そして予想通りそれが売れまくって、こうして映画化されて僕らが目にしてるっていうのが非常にスカッとします。やっぱり彼女は作家であり、文章の才能があったんだと。犯罪者で終わらず、しかも伝記という他人の人生を書いてた人が、最後の最後に自分の人生を書いた本でベストセラーになったという小気味良さ。もうアッパレとしか言いようがないですよね。自分が偽造した手紙を本物だと思って売っていた店に対して彼女がとった行動もユーモアたっぷりで大好きでしたし、こういう映画のラストにでありがちな「現実の出来事/後日談」テロップも思わず吹き出しちゃうレベル。最後まで楽しませてもらいました。
犯罪者なんだけどどこか共感できる、とても魅力的な主人公の映画。おすすめです。
映画タイトルにもなっている、リーの自伝タイトル「Can You Ever Forgive Me? 」(許してくれますか)も秀逸。
スターチャンネルにて吹き替え版で録画、視聴。





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