持病を抱えた女性と、彼女の息子は大西洋を渡る夜間フライトに乗り込むが、なんとそこでテロリスト集団によるハイジャックが発生。息子を守るため考え抜いた結果、ずっと隠してきた正体を表すことに。薬で抑えているが、彼女は実はヴァンパイア。精神力で自我を保ちつつ、その強靭な肉体で敵に立ち向かうのだが……。
ペリ・バウマイスター、カイス・セッティ、カール・コッホ、ドミニク・パーセルら共演。
あらすじ
珍しい持病を抱えた母親は、息子と共に大西洋を横断する夜間フライトに乗り込むが、その旅客機がテロリスト集団によってハイジャックされてしまう。実は彼女の正体はヴァンパイアで、彼女はその事実をずっと隠し通してきたのだった。彼女は封印してきたヴァンパイアとしての力を解き放ち、息子のためにテロリスト集団に立ち向かうことを決意する。(シネマ・トゥデイより)
ネット配信でしかもヴァンパイアものなのでショッキングな映像が出てきますのでご注意ください。
いやー、母の愛は強い。冒頭無事に着陸したところからスタートして一気に時が巻き戻るわけですが、果たして旅客機の中がどうなっているのか戦々恐々として見守ることになります。タイトルや作品紹介画像からなんとなくモンスターが出てくる系なんだろうな、程度の認識で見始めたので、母親ナディアの様子がおかしいぞってなったときは結構びっくりしましたね。彼女がそうなのか、と。
上記あらすじの通り、最初はなんか病気持ってるかなくらいで隠されているのですが、ハイジャックされたことを知って決意してからはずっとヴァンパイアモード。頭皮の毛はなく、目も吊り上がって歯も出てるので誰が見ても襲われる!と逃げ惑っちゃうのですが息子エリアスだけはちゃんとママと信頼しているんですよね。描かれてないけどずっと薬で抑えたり、姿が変わってても理性保てるように頑張ってきたんだろうなってのが伺えます。一瞬なんか本能に負けそうになるけど、目的を見失いようにする。あれきっと血をたくさん飲むと早く進行するとかもあるのかな?何にせよ薬が必要で、飲めなくなったのが一番大きいイメージですね。
なぜ吸血鬼になったのか、とかも回想シーン的に挿入されます。そしてルールも一般的なそれと一緒で、噛まれたらその人も吸血鬼になる。ハイジャックを倒そうとしたら噛み付くことにもなるわけですし、他にも血液を飲むことでも同じこと。事態をさらに悪化させるように、敵側にも吸血鬼が発生。しかもこともあろうに一番やばいやつだからタチが悪いんですよね。集団だからいろんな価値観があってそこまで統制取れているわけじゃない。最低限の倫理観をわきまえてる人がほとんどの中で、このエイトボールだけは劇中でサイコパスと評されるレベル。だから力を得られるとあれば吸血鬼にだってなる。ここからが恐ろしい。
エリアスの必死の頼みと、最初から最後までずっと優しいファリードというアラブ人(?)がナディアは安全だと説明してくれたおかげで彼女が乗客たちの味方だと分かったはいいものの、武器だけでなく今や吸血鬼となったテロリスト軍団相手に勝ち目はなくパニックになっていきます。同時にナディアの吸血鬼がどんどん進行。それに伴って言葉遣いが荒くなったり、最終的に口数も減っていくのがリアルでしたね。人間の要素が薄れていく、というような。その度に息子の言葉で我に返る流れ。なんとなく先が読めてこの時点で切ないです。
そのファリードは冒頭のシーンでハイジャック犯だと地上の人に勘違いされていたわけでそこも不穏。完全に夜になるまで行動できないためエリアスが一人で空港で手続きしてたのを手伝ってくれた時からこの親子に対して救世主的存在で、この人がいなかったらとっくに全滅してたと思う。終盤のバトルでは吸血鬼の特性を効果的に使ったナイスアシストをしてかっこいいんですけど、一番衝撃的なのは彼が手を噛まれた時。衝撃をやわらげるためにあえてネタバレさせてもらいますが、無言で受話器のコードを巻くナディアに大して、全てを察して自分からタオルを口に咥えるんですよ。蛇とかの毒が回らないようにするのと同様、患部を切り離すしかない。あの潔さはちょっと人間を超えている。ラストシーンもめちゃくちゃ泣けます。
残念ながらメインキャスト全員が助かるわけではないのでハッピーエンドとは言えませんが、一応の救いはある。某宇宙生物の映画みたいに「旅客機から大量のヴァンパイアが降りてきて地上に放たれる。地球はおしまいだよ」っていう最悪の展開にならなくてほんと良かった。そこに至るまでどうなるのかほんと読めなくてハラハラさせられっぱなしなので見応えありましたね。
単純な吸血鬼というモンスターの恐怖、というよりかは、自分が使いたくなかった力に頼らざるを得ないという葛藤だったり、自我を失っていく怖さっていうナディア目線の切なさがあること。あるいは強さのために望んで吸血鬼になるハイジャック犯や、やられて死にかけだから噛んでくれて懇願する乗客などの極限状態だからこそでる本性というのものも興味深かかった。前述のファリードとは対称的。
結末の切なさはいつまでも心に残るでしょうが、だからと言ってどうすれば良かったのかと考えてもやはりあれしか選択肢がないんですよね。必死に抗った。よく戦った。その結果として僅かに希望は残せた。やっぱり母は強い。
人を選ぶ作品だとは思いますが、個人的には見て良かったと思います。
Netflixにて吹き替え版で視聴。
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