バッド・ジーニアス 危険な天才たち / 進学校に特待生として転入した天才少女が、仲間たちと共謀して前代未聞のカンニング大作戦を実行してしまうクライム・ドラマ。最初は友人を助けるため、しかしどんどんエスカレートしていき……。

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2014年、実際に起きたカンニング騒動に着想を得て、アカデミー賞外国語映画賞タイ代表にも選ばれたナタウット・プーンピリヤ監督がメガホンをとったクライムドラマ。高校生たちがカンニングをするために様々な方法を編み出し実行していく様子を手に汗握る映像で見せる。
頭脳明晰ながらもあまり裕福とはいえないリンは特待生として進学校に転入するが、そこで一人の女子生徒と仲良くなりある日彼女を救うためにカンニングの手助けをしてしまう。そこから噂が広まり、お金と引き換えに自分たちにも答えを教えてくれとせがまれた彼女はある方法を見つけ希望者はどんどん増えていく。さらにアメリカ留学のための試験STICにて驚くべきカンニング作戦を実行してしようとし……。
犯罪ながら主人公たちを応援したくなってしまう心臓バクバク系映画。
主演はモデルのチュティモン・ジョンジャルーンスックジン。チャーノン・サンティナトーンクン、イッサヤー・ホースワンら共演。

あらすじ
頭のいいリン(チュティモン・ジョンジャルーンスックジン)は、進学校に特待生として転入する。彼女はテストのときにある方法で友人を救ったことが評判になり、さらに指の動きを暗号化する「ピアノレッスン」方式を編み出して、多くの生徒を高得点に導く。彼女は、アメリカの大学に留学するための大学統一入試「STIC」に挑もうとしていた。 (シネマ・トゥデイより)


上記あらすじと予告動画でストーリーのかなりの部分の説明になっちゃってるんですが、中身を知った上でもめちゃくちゃ面白くて。前評判で「高校生版オーシャンズ11」とか言われてるのを見かけましたけど、あの「無事成功するのか」をドキドキしながら見守る感じとか、犯罪だけど主人公チームを応援したくなっちゃう感じがぴったり。基本的にはチーム戦というよりも主役であるリンが一人で頑張るばかりですので少しタイプは違います。一番ラストでメインである[STIC]の時は韓国で待機してるグレースたちも活躍はしますけどね。

そうそう、大きく分けてカンニングシーンは3つあり、発端となる「靴に回答を書いた消しゴムを入れて」の時、2種類のテスト向け問題が一つのリストとして混ざっていて生徒に選ばせる試験、ラストがその統一入試。実際の映像時間的にもそこに至るまでの準備という面でも前述の通り一番のクライマックスではあるんですが、他の二つも緊迫感は引けをとらず、ものすごく見応えがありました。

特に2番目はピアノの運指を活用した方法でとんとん拍子にいくかと思いきや、途中でテストの内容が特殊だと判明したり、リンのライバル的存在のバンクがカンニングに気付き、あろうことか教師に報告するという大ピンチがおとずれるため前半の山場的盛り上がりですし、規模がかなり大きくなった状態でそれまで以上に「失敗できない」状況というのが余計にハラハラを増長させます。同時に主人公ならまたなんとか乗り切ってくれるんじゃないかっていう思いも浮かびますし映画全体が少しずつエスカレートしていくのがほんとにうまかったなぁと。

だからこそ上り詰めた先に転落が待っているのも怖くて。特に最序盤に取り調べっぽいシーンを挟む事でその予感が確信になりつつあるんですよね。そもそもカンニングをテーマにしてて、高校生ですし、他のクライムサスペンスとは違って「勝ち逃げ」ってことは絶対にないわけで。だからこそバレるにしてもどうバレるのか、そしてどうなってしまうのかを「見届けたい」と思わされるのもまたこの作品の面白さにつながってます。結論から言うとその取り調べシーンはミスリードなんですが、とにかくカンニングに携わるメイン4人の関係性の妙も素晴らしくて。若干ベタすぎるかなとも感じますけど、かたや頭脳、かたやお金と、扱ってるのがカンニングなだけでこれ大人が主役でも普通に成立できる間柄だったなぁと。

主人公のリンや後に仲間に引き込まれるバンクは頭はいいけど経済的に余裕がなくて(だからこそ奨学生)、一方でパットは超金持ちだし、その彼女のグレースも恩恵に預かってる(しかも印刷業というのはラストに繋がるいい伏線だった)。もちろん友情もあるんだけど、ビジネス的な立ち位置。映画ではそこまで描写こそされませんが、バンクってリンに好意をよせてるような気がします。同じように勉強で進学校に入って、良きライバルだと思ったらなんでそんな悪に加担してるんだよって怒りや落ち込みを経て、自分も混ざる。映画を最後まで見ると一番大きく影響を受けてしまうのは彼なのでそこもまた切なさがあるんですけど、二組の男女の絶妙な距離感が好きでしたね。一悶着あるから余計に。

そのリン&バンクで挑む最後のカンニングはもうこっちまで呼吸を忘れるようなドキドキハラハラで、たしか28分だったか、全体の中でもかなりの部分を閉める1番の見所なわけで。特に「誰かに見せる」んじゃなくて「覚える」というワンクッションが置かれるために難易度が爆あがり。忘れがちだけど普通に問題も解いた上で、ですからね。いくら天才でも相当な集中力が必要だし、厳しいと思う。自分の学生時代を思い出しても、1科目終えるごとにできなかった部分だったり次の教科への不安だったりで休み時間とかあってないようなものだったと記憶してるのですが、そのわずかな時間で答えを送信する彼らはほんとすごい。流石に警備というか試験官たちもこれまでとはレベルが違うので、かなりのピンチに。そこまでほとんどなかったアクション要素まで絡んできますから、もうテンションがどんどん上がって。先が気になるけど結末を知るのが怖くて見たくないみたいな訳のわからない状況になってました。

まあ全てが終わった後の展開は納得というか、まあ映画としてはこういう風になるのが当然だよね流れになりますので、ハッピーとは言えないものの割と爽やかに終わりましたね。すでに触れた通り悪い影響を受けて変わってしまった人もいるし、もしも全てが白日の元に晒された場合あんなに喜んでていた「リンから答えを教えてもらった同級生たち」はどうなるのか、とか描写されてない部分を想像すると怖いものがありますが、「カンニング、ダメ、絶対」ってのは強調しないといけないので、これで良かったのかなって。

それにしてもこの映画に近いことが実際に起きたとは驚きですし、劇中で使われた手法を思いつき、また実行に写した高校生には(犯罪ながら)尊敬しちゃいますよ。

スターチャンネルの無料放送で字幕版を録画、視聴。



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