絶望的な気分で毎日を過ごしていた劔。そんな彼を見兼ねて友人が松浦亜弥のライブDVDを見せてくれたが一気にファンになってしまい、関連商品を手にとるように。そこで熱狂的なハロプロファンのグループに仲間入りすることになり、個性豊かな面々ともにアイドルについて語り合ったり、たわいもない冗談で笑うなど充実した日々をすごく。さらに抽選で握手会が当たり、憧れの松浦と会えることになるが……。
仲野太賀、山中崇、若葉竜也、芹澤興人、コカドケンタロウ、大下ヒロトらのほか、松浦亜弥役でBEYOOOOONDSの山﨑夢羽が出演。
あらすじ
大学院受験に落ち、恋人もおらず、金もない劔(松坂桃李)。どん底の生活を送る中、松浦亜弥の「桃色片想い」のミュージックビデオを目にしたのがきっかけで、ハロー!プロジェクトのアイドルたちの熱狂的なファンになりオタ活に没頭する。藤本美貴推しで、プライドが高くてひねくれたコズミン(仲野太賀)をはじめとするオタク仲間と「恋愛研究会。」を結成し、トークイベントやライブの開催、学園祭でのアイドルの啓蒙活動に励む劔。だが仲間たちは、アイドルよりも大切なものを見つけて散り散りになっていく。(シネマ・トゥデイより)
完全に予告で騙されたと言いますか、もちろんアイドルにかける情熱とかは嘘じゃないんだけどもメインとなるのはその熱を分かち合える「仲間」の存在でした。全編にわたってアイドルオタク=ドルオタの生態(?)みたいなのが描写されていますけど、そこはあくまでたまたま彼らの対象がアイドルへの想いだっただけで、どんな【同好の士】でも成立しますから、誰しもが共感しやすい作品だったと思います。
劇中でも「中学10年生」なんて表現をしてますが、基本的にアホだし、風俗とかメンバー間で恋人を奪うとかお下品なネタはちょいちょい入ってきますので大人になりきれてない大人っぽい印象もあります。手放しで「どんなものでも熱中してる人はかっこいい」「気持ち悪くない」って断言できるかというとそこは微妙なところ(笑)
松坂桃李くん主演の時点でなんとなくわかりますが、多分若いってのもあるけどおそらく劔は容姿は良いんだと思います。だからちょいちょいそういう縁もあるけど、ドルオタという実態を知って離れていってしまう。一緒にコンサートいく約束してたのにドタキャンされる。そしてショックを受けてポスターを傷つけてしまうっていう流れは面白かったです。オタ活は楽しいけど、人生何も起きないまま高齢オタクとして死に向かっていく恐怖、的な。これはちょっと目を背けたくなる気がしました。
あとは時代設定が一昔前なので、ガラケーでのTwitterや、mixi(と日記)とか出てきて懐かしかった。ネット経由でチケットを買うくだりはこれが縁で何かに発展するかな?と予想したけど特に何も起こらず。彼ら以外にもアイドルのファンはたくさんいて、それぞれドラマがあるっていう描写なのでしょうか。冒頭で触れた通りコミックエッセイが原作なので実際にあって入れたんでしょうけど、映画の中身とはあんまりリンクしてなかった気がします。いつかアイドルも卒業=辞める時がある。じゃあファンは?とかは考えましたけどね。
後半は劔も自分自身の音楽活動をしたりするし、なんとメンバーの1人が病にっていう驚きの展開。コズミンは主人公の次にキャラが立っているなとは思ってましたが、予告とかでこの要素が一切出てこないから衝撃でした。変に悲観的にならないで、笑いい話にしつつ彼を思いやる仲間たち孕ってのもちょっとジーンと来たけど、それ以上に闘病してる姿がキツくてこれも見たくなかった。ただまあ彼の支えがアイドルの曲ってのはメインテーマに通じてて良かった。
基本的に内輪ネタというのかエッセイの作者の回顧録なので大きな山場とか盛り上がるポイントなどは少なめなんだけど、ああいう仲間がいて、楽しい時間を過ごしてたっていうのはヒシヒシと伝わってきて。ちょっと羨ましくなりました。そもそもオタクというか熱中するものがあるのって素晴らしいですよね。そこに加えて、その熱を共有する仲間がいる。ハロプロっていう事務所のくくりで、集まってるからそれぞれ誰のファンかも違うし、お互いにぶつけ合えるのもいい。世間的には彼女たちの全盛期とか、ブームとかってあるけどファンからしたら自分の気持ちが続く限り応援しつづけることができる。
劇中でも実際のライブやコンサート映像使われてるし、かなりの曲が挿入歌として使われています。僕は詳しくないけど、ハロプロファンの人たちはそういう部分も色々とのめり込めるんじゃないかと思います。下手するとあの卒業コンサートに自分もいた、みたいなこともあるのか。それも羨ましい。予告でフューチャーされている握手会のシーンはマジで数分なので事務所の後輩が再現っていうエモさはあるものの、これだけかって感じもしました。
その握手シーンの「憧れの人に会う」っていうなんとも言えないふわふわした表情とか、馬鹿笑いしてる時とか松坂くんのオタク演技はかなりハマっていましたし、それに負けないくらい前述の大我くんもやっぱりすごく自然でした。特にシチュー作った時のシーンが好きで、あれはアドリブじゃないかと思ってます。銭湯のシーンは1人だけお尻まで披露してるし、ラブシーンも。コズミンももう1人の主人公だったと思います。
タイトルの通り、過ぎ去った日々を懐かしむ「青春友情物語」として面白かったですし、アイドルとか詳しくなくても楽しめる作りになってますので当時を知る人もそうじゃない人もぜひ。
WOWOWにて録画。Netflixにて視聴。

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