モンスター・オブ・ダイナスティ~王朝の妖怪~ / 日本では漫画アニメ化されてお馴染み封神演義を下敷きに、妲己の野望と嫉妬、悲哀を描いたファンタジーアクション。妖術を使い、王朝をを思い通りにするが……。

封神演義を下敷きにした、CG+ワイヤーアクションもあるファンタジー作品。監督・脚本はハン・タオ。
妖怪として長く生きてきた妲己は人間の姿になり、自分を助けてくれた王ののもとに。側室になるも、彼の心にはすでに黄妃という女性がいた。あの手の子の手でその寵愛を受けようと画策。かつて戦った道士の姜子牙(太公望)に怪しまれ……。
人を思う妖怪の悲哀にスポットを当てた作品。
主演をスン・シュエニンがつとめたほかチョウ・ハオドン、ファン・イーハン、リック・シューら共演。
あらすじ
時は古代・殷王朝、人間と妖怪が相まみえていた時代ー。ある日、王は知性と美を兼ね備えた黄妃を新たな側室に迎え入れ、前側室の妲己は王宮から追い出されてしまう。恨みを抱く妲己の前に、突然、美女に化けた妖女が現れ、王の寵愛を取り戻す復讐計画を持ちかける。一方、王への無礼で投獄された占い師の息子・伯邑考が父の助けを求め王宮を訪ねてくる。王は、伯が琴が得意なことを買い、黄妃への師事のため王宮に仕えることを許す。復讐に燃える妲己は、黄妃と伯邑考が幼なじみであったことを知り、伯邑考を妖術で操り、黄妃を襲わせる。このことに激昂した王は二人を問投獄してしまう。だが、王に仕える道士・姜子牙は王宮に漂う危険な妖気を感じ取り、妖怪退治に打って出るのだが…。(アメイジングDC商品ページより)


ちょっと固有名詞がたくさんあるのとキャスト陣、特に女性が似たタイプの美形を揃えているので最初こそ戸惑いましたが、見始めたら至ってシンプル。王様にはもともと側室の「黄妃」を大事にしていたが、そこに妖怪狐の「妲己」がわって入り自分の地位を高めようとあれこれ画策という三角関係というか、女の嫉妬と悲哀を描いてる。立場の違いから諦めているものの、黄妃と惹かれあっている「伯邑考」、彼女の兄で王の忠臣「武成王」。妲己に味方してくれる「白骨妖怪」や、逆に倒そうとする「姜子牙」=太公望あたりがメインキャラ。

上記あらすじは実際と少しニュアンスが違っていて、まずスタート地点として姜子牙と狐のバトルから開始。トドメというところで王が占いをして結果的に助けてくれて、妲己としては命の恩人なわけです。そんなのもあって人間の姿を利用して近づいていく。いろんな意味で執着しているから、彼がめちゃくちゃ大事にしてる黄妃に対して憎しみが湧いていくのはちょっとわかるんですよね。

都合がいいことに別の側室?として幽霊の白骨妖怪がいて、あれこれサポートしてくれるし、王の部下たちも取り込んで自分の意思を通しやすくする。着々といい流れになってるのに心にはいつまでも別の人がいるし、あろうことか黄妃と伯邑考はいい感じになってるから怒りはエスカレートして、妖術使って2人とも消してしまおうとする。操られてたとはいえ襲われるの彼女にとってショックだったろうな。すぐに取り押さえられたけど。

基本的に妖艶な雰囲気はあるものの露骨な描写とかは抑え目。ただ白骨妖怪も妲己も色気とか女性の武器を使ってるんだろうなってイメージは出てましたし、全体的にみんな服装は豪華でキャスト陣も美形を揃えてた気がします。ただCG方面がやっぱりちょっと弱くて。特に骨の大きな化け物が酷かったですね。キツネ形態とか、尻尾が出てきた時のモフモフ感はそこまで悪くなかったのだけど。

あと他の人のレビューでも触れられてるけど太公望がめちゃくちゃ無能で、お話の展開のためとはいえいつもいいところでトドメを刺さなかったり、戦いをやめたりと「もっと早い段階で妲己の野望を止められてたでしょ」っていうツッコミどころがたくさん。妖怪の巣を攻撃して反応するか見たり、「あやつは妖怪です!」っていくら言っても王様は信じない、ってのはまあテンプレだからまだ納得できるけどさ。本人の強さとか、あとは武成王とか目が曇ってない連中だけでも集めてもっと積極的に動いても良かったのではないかなと。

ただこの映画の一番いいのはテンポがいいことで、めちゃくちゃ進む。後半なんかは口車に乗せてすごい建築物を建てたりするんですが、そこで数年とか経ってる。だからこそちょっと戦っては負けてるを繰り返す太公望の無能さが際立っちゃってるんだけど、原作からどの程度アレンジされてるにせよ「こういう流れがあったんだな」というのはかなりわかりやすい。ずーっと妲己がそばにいたのに、追い出した黄妃のことをまだずっと思っていたのはちょっと切なかった。

妖怪だからどんな姿にもなれるし、何なら妖術でも相手の心まで思い通りにすることも可能だったはず。でもそうじゃなくて自分の方だけを見て欲しかったのに、とうとう実現しなかった悲しみ。ずっと妖怪であることにコンプレックス持ってたり、この映画は彼女の悲しい物語をメインに描きたいんだってのは伝わってきました。そこにちょっとアクション要素が出てくるだけ。

白骨妖怪が背中から骨の鞭を引き抜いたりするのはちょっとチェンソーマン2部のあのキャラっぽいなとか、妲己の氷属性の攻撃だったり、でかい敵を前に太公望が鞭?で軽々と戦ってたりと前述のCGはアレだけどそこそこは見れたので、ハードルを上げなければ十分だと思います。アルバトロスと同様の「アメイジングD.C.」から発売されてますからね。この記事のカテゴリも「B級」にしています。

これが封神演義だ、って思うのは多分間違ってるのだろうけど。1匹の妖怪によってメチャクチャになってしまった王宮。でもそこには1人の女性として王への愛があったんだっていう、ラブストーリーとしての面白さなどを求める人には特にささると思います。

97分でサクッとみれますし。

アマプラにて吹き替え版で視聴。
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