主演である高倉健の他、田中裕子、ビートたけし、草彅剛、佐藤浩市、綾瀬はるか、浅野忠信など豪華共演で贈る人間ドラマ。
富山の刑務所で技官として働く男英二は妻に先立たれてしまうのだが、彼女が遺言書を残していたことを知る。そこには彼女の生まれ育った九州に散骨してほしいこと、そしてその場所の郵便局に送ったもう一通の手紙を受けとって欲しいということだった。
あらすじ
北陸の刑務所で指導技官として勤務する倉島英二（高倉健）のところに、亡くなった妻・洋子（田中裕子）が生前にしたためた1通の手紙が届く。そこには故郷の海に散骨してほしいと書かれており、英二は洋子が生前には語らなかった真意を知るため、車で彼女の故郷・九州へと向かう。その道中で出会ったさまざまな人々と交流するうちに、妻との思い出が頭をよぎり……。(ｼﾈﾏﾄｩﾃﾞｲより)
高倉健さんはものすごい数の出演作があって僕はそのほんのわずかしか見れていないのでしょうが、この作品は健さんじゃなきゃ演じられなかったなと感じました。
絶対に結婚しないと思ってた。同僚にそういう印象を与える無骨な男が愛し、15年ともに暮らした妻。彼女が病床に臥し、旅立ってしまった悲しみというものがヒシヒシと伝わってきて、胸をうちました。
公務員という職種だけでなく、人柄的にお堅い性格だから決して多くは語らないんですけど。元気になって一緒に旅をしようという際の「たのむよ」っていう言い方。妻には心を許し、また素直な自分をさらけ出してるように思えて、そんな相手との別れたのかと思うと、余計につらかったです。
いわゆるロードムービーという面でも非常によくて。実に1200kmという長い長い道のりを旅する中で出会う人々。前述のようにビートたけしさんをはじめ豪華キャストなんですがそれがみんな個性的で。縁っていうものを感じましたね。英二はあまり自分から関わるタイプではないので、半ば強引に知り合ったりもしましたけど、彼らと関わる中で、自分と妻との関係性、そして思い出を見つめなおしていく……
大滝秀治さんにとっても遺作となるこの作品。セリフ自体は少ないですが、映画の終盤のかなり重要なシーンでの登場でしたし、この人もまた存在感のある名優だなと改めて感じました。
劇中、種田山頭火の句に言及しながら『旅と放浪の違い』について語られる場面がありましたが、英二の"旅"は妻が歩ませた"次に進むための旅"だったのだろうなと思います。
自分の生まれ故郷に来させ、彼に何を感じ何を伝えたかったのか。そしてもう1通の手紙の中身とは。最後まで見たときに、そういう印象を受けました。
英二と洋子だけでなく、他の数組の『夫婦』についても、考えさせられる作品でした。
涙が止まらないとかそういうのとはまた別の、感動できる映画。
この映画のストーリーを基にした小説版はこちら。
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