地元民から愛されて常連客も多い銭湯「まるきん温泉」父亡き後、次男の吾郎があとを継ぎ、住み込みバイトとして看板娘のいづみと共にきりもりしていた。そこに東京で建築家として活躍していた長男の史郎が帰省。銭湯を取り壊してコインシャワー付きのマンションに建て替える計画を勝手に進めてしまう。葬儀にも来なかった件を含め兄弟の溝はなかなか埋まらないが、仕事を手伝ううちに史郎は銭湯の良さを思い出していく。しかも事故で吾郎が入院し……。
小日向文世、柄本明、天童よしみ、クリスハート、戸田恵子、寺島進、笹野高史、吉行和子、厚切りジェイソン、浅野和之、角野卓造、夏木マリ、窪田正孝、ウエンツ瑛士、吉田鋼太郎ら共演。
あらすじ
建築家の三浦史朗(生田斗真)が、「まるきん温泉」を営む実家にある日突然戻ってくる。彼は亡き父が遺(のこ)した銭湯を切り盛りする弟の悟朗(濱田岳)に、古ぼけた銭湯をマンションに建て替えると伝えるために帰省したのだった。ある日、悟朗が入院することになり、銭湯で働く秋山いづみ(橋本環奈)の助言もあって、弟の代わりに史朗が店主を数日務めることになる。
(シネマ・トゥデイより)
いやー面白かった。上記予告動画でもコメディ要素がたっぷりあるのが確認できると思うんですが、笑って泣けて、という表現がぴったりの素晴らしいエンタメ作品。湯道っていうのがそもそも脚本の小山薫堂さんが提唱してるらしいんですが、華道や茶道とかと一緒で「作法」みたいなものが厳格にある設定。ただお風呂に入るっていうことを大真面目にやってるのがまず面白いんですよね。のぼせるのを防ぐためなのか最初に水分取るのを「潤し水」とか技名になってたりするし、ギリギリ湯をこぼさない入り方、とか。
メインではないのですが、角野さんとその弟子の窪田くんが教える側、小日向さん扮する冴えない男がその「湯の道」に最近入門した男として出てきて、指導(?)の様子が何度も登場。門下生が一所懸命聞き入る姿がシュールです。
この定年間近の冴えない郵便局員の横山の話はほんとよくてね。退職金でヒノキのお風呂にしようとしてたのに家族には反対されるし、退職の日もみんな出かけててお祝いの食事とかもないっていう切なさ。でも最後の最後には……。どこか予想できたけど感動的でした。
慣れない仕事して全身筋肉痛の長男史郎が痛さをこらえてゆっくり動いてるのを「けっこうなお手前で」って勘違いするのも笑った。
そうそう「最初はイヤイヤだったのにやってくうちに楽しさを見出して」とか「せっかく絆が出来始めたのにスタート地点に逆戻り」などこういう作品のベタな流れをやってくれるのでとても気持ちいいし、仏頂面だった生田くんがちょっとずつ生き生きしだすのが見てて心地よかった。満面の笑みで「いらっしゃいませ」って次男に声かけちゃってプクククって笑われるところも好き。馴染んでるやーん!ってね。
ちなみに看板娘を取り合ってドロドロ、とか余計なアレもなかったです。この兄弟の絆は素直に感動ストーリーになっててこれまた「こういうのでいいんだよ」感がたまらなかったですね。予告でも使われている五右衛門風呂のシーンとかも好き。
他のサイドストーリーとしては、ずっと通っている老父婦(予告で出すの勿体無いけど奥さん亡くなってしまう)とか、痛風なのにこっそりビールを飲む寺島進、歌の才能を受け継いでる天童よしみ&クリスハート親子。さらには認めてもらいたい外国人夫厚切りジェイソン。湯船に浸かる前は体を洗うだよ、ってアドバイスを受けて脱衣所の洗面台で全身洗ってるのやばいよね。リアルに吹き出した。これも予告にあります。
「銭湯に一番乗りして熱唱する」は、僕を含めお風呂で歌を歌うタイプの人間にはものすごく共感できるポイントだし、親子の再会と「銭湯でのむ飲み物は格別」をああいう形で絡めてきたのはナイス。なんかもう銭湯扱うと大抵出てきますよね、コーヒー牛乳とかのくだり。
流石に歌手を連れてきただけあってほんと上手いし、銭湯が広くて響くから気持ちよさそう。上を向いて歩こうとか、心に沁みます。そしてタイトルいうとネタバレになっちゃうんですが、史郎と吾郎の父の口癖になっていた言葉をダジャレにしたエンディングテーマも大好き。キャスト陣がお風呂に入りながら歌ってて楽しそう。濱田くんだけ体が赤くなってて笑った。のぼせやすい体質なのかな。ちょいちょいダジャレ出てきます。
基本的にギャグシーンはみんな面白いんですが、人が死んだ後のアレとか、実はあの人の頭が……というハゲいじり(二度見するクリスハート)などがあってそこだけちょっと苦笑。女性が着替え途中で間違って入っちゃうのは肌の露出なかったので、少しずつアップデートされているかな。ただ男湯はもうバンバン全身出しちゃってるので皆さん体張ってるなーと。お風呂の映画なんでね、当たり前ですけど。
冒頭に出てきた人里離れた茶屋、それが「最高のお湯」そしてさらに五右衛門風呂と絡んでいって、終盤に全部繋がるのが良かったですしそこでの老婆の水も木も自然からの贈り物、的な言葉も沁みた。自分であそこまで大変な準備はしたくないですが、入るだけなら入ってみたい。絶対気持ちいいと思う。シネマ・トゥデイのレビューにて「夏木マリとハシカンは舞台版千と千尋の神隠しのオマージュでは」って書かれてて、なるほどと。
一番の悪役?としては源泉掛け流し主義の温泉マニアが登場するわけですが、彼に反論する形で全員が一致団結、そこで改めて自分たちの思いを確認するって流れも見事。もちろんああなるのは誰もが予測できると思うのですが、やっぱりジーンとくるものがあります。ただ仙人のその後は笑った。あんたもか!って。
すごい幸せな気持ちで笑いながら見終われました。
そうそう、監督が鈴木雅之さんなので、「ラジエーションハウス」の時にも触れましたが画面作りが平行垂直にビタっと合わせていたり、男湯〜女湯〜をすーっと移動、さらに番台から両方を眺めるシンメトリー的なカメラワークなどが多用されてて美しかったです。マスカレードシリーズもそうだけど演技上手いキャスト陣がそれぞれ演じてるのを全体で見るのほんとその場にいるみたいでいいです。ドールハウスをのぞいてるような感覚。
どうやらアナザーストーリーというIFもしもの物語もあるようで、アマプラで見られるらしい。そっちも見てみますね。
月並みな表現ですが、銭湯のお湯のように見てるこっちもあったかい気持ちになれる作品ですし、見終わったその日の夜から「お風呂っていいものですね」っていつも以上に気持ちよく湯船に浸かれるそんな作品でした。ぜひ寒い冬にこそ見るべき映画です。
WOWOWにて録画、視聴。
湯道 Blu-ray 豪華版
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