映画 イチケイのカラス / 他職経験制度により弁護士として働き出した坂間に立ちはだかる、地元企業の闇。裁判官として腐れ縁の入間みちおも参加しイージス艦衝突事故との関連も明らかに。黒木華&竹野内豊主演人気ドラマの続編的劇場版。

東京地方裁判所第3支部第1刑事部=イチケイとして共に真相究明に奔走す裁判官たちの日々を描いた人気ドラマシリーズの、続きを描いた劇場版。気になることがあると「職権を発動」し自ら捜査を行う風変わりな男入間とそれに振り回されてきたヒロインの坂間千鶴だが、それぞれ異動。しかしとある事件をきっかけ顔を合わせ再び奮闘することに。黒木華、竹野内豊主演。
裁判官ながら多職経験制度によって弁護士として田舎町で働く坂間だが、なかなか事件を担当させてもらえない。そこは巨大な地元企業が街の構造の中心となって誰もが笑顔の町なのだが、そこの工場で危険な廃棄物があるという疑惑が出てしまう。一方隣接する市町村で裁判官を務める入間みちおはイージス艦と地元の船の衝突事故を担当するも、国家機密に関わるとして詳しい調査もできずにいた。一方的に原因とされてしまった民間の船の艦長は事故で亡くなっており、不信感募る彼の妻が政治家を切りつけてしまう……。
全国を飛び回るやりて弁護士の新キャラで斎藤工のほか、防衛大臣に向井理、津田健次郎、田中みなみ、八木勇征、尾上菊之助、宮藤官九郎、吉田羊ら豪華共演。
あらすじ
イチケイこと東京地方裁判所第3支部第1刑事部に在籍していた、裁判官の入間みちお(竹野内豊)。2年前に岡山県瀬戸内へと異動した彼は、史上最年少防衛大臣にまつわる傷害事件を担当する。だが、事件と関連するイージス艦衝突事故を調べるも航海内容が国家機密扱いになっており、裁判所主導で検証を行える職権発動も適用できない。一方、入間の相棒だった坂間千鶴(黒木華)は、裁判官の他職経験制度のもと弁護士として隣町で働き、地元企業をめぐる事件に携わっていた。(シネマ・トゥデイより)


冒頭でも触れましたが、月並みな表現をするといわゆる「闇」って感じでかなりシリアスな物語になってるのでドラマで感じたような「風変わりな男に振り回されるドタバタ」は全体の要素からすると少し抑え目。もちろんちょいちょいギャグっぽいシーンあるのでらしさは健在ですし、そのおかげで適度に休むことはできるのですが基本的にかなり重たい=疲れるストーリーでしたね。
もっと梅雀さんが出てこないっていうのもちょっと寂しかったし。

逆にいうと映画単体で見ても問題ない作りになってて、一応ヒロインが元裁判官で、入間と同じところで働いてたよって前提がわかればOK。この映画でも十分に「そこまでするのかよ」っていう行動をとってくるので入間が普通じゃないのはすぐに実感できますし。でもいきなり国家権力による介入で捜査打ち切りってなるのは「あの入間でさえ超えられない壁」て感じがして、ドラマ視聴組は今回が一筋縄なじゃないってわからせられる作りになってましたね。

メインとなるは千鶴が赴任した町であり、ここの平和な姿がのちのち効いてくる。シャッター商店街じゃなくて活気があっていいねって思うけど、それも全部「地元企業という大きな核」があってこそ成り立ってる。企業があるから雇用があって、人がいるからお店がある。そこに家族が住むから学校病院と、独立した一個の社会になっててだからこそこのバランスを崩すわけにはいかない。間違ってたらいけないけど大きな町からは橋で繋がってるっぽいし、物理的にも独立した王国って印象があります。

新キャラクターの斎藤工はなんというか「顔はいいけど不遜」みたいな役柄が多くなってきましたが(笑)今回もそんなキャラ。一応千鶴もちょっといいなと思ってる的な雰囲気はありました。でもまあ露骨な表現がないだけであえてラブロマンス要素入れるなら相手は入間で確定してるのでね。この新キャラに対しての小日向さんの態度がすごいなと思ったら、その本性が見えてきて。典型的な「ダークヒーローに悲しき過去」なのでめちゃくちゃ同情はしたんですが一方でだからって肯定できないだろっていういつものパターン。
そもそもこの映画自体が「じゃあどうすれば良かったの?」(劇中でまんまそのセリフがある)っていう僕ら視聴者に投げかけるタイプのストーリーだったし、「法律には限界があるけど、でもそれでもできることがある」って寄り添うお話だから、解決してスカッと、じゃないんですよね。いつまでも尾を引く。
99.9の深山みたいな「真相がわかればそれでいいんで」っていう突き放すわけじゃないけどね。入間みちおは変わって入るけど空気が読めないわけじゃなくて、職務にひたすらまっすぐなだけ。で飄々してるから独特のオーラがある。

イージス艦の事件と同関係するのかな?って予想しながら見ていくわけですが、それに加えて冒頭の桃ころりん事件(?)まで関連してくる。中盤あたりのそういうことかーってなるのは気持ちよかったけど、前述の通りわかってしまうとそれはそれで切ない。街の人たちのそれぞれの立場とか、演じてる人たちがピッタリでキャスティング大正解だったなぁ。特にクドカンの役柄が良かった。
ちなみにちょいやくで庵野監督が出てて笑いました。

予告でも出てますが、妨害行為がどんどんエスカレートしちゃって犠牲者が出ちゃったりしてそこも切なかった。特に「自転車」の件は泣かされたなあ。最後の最後にかっこいい、みたいなのは無条件で泣いちゃうからずるい。良くないよ。ちょっと今回本当にダークなんでね、あらかじめ身構えての視聴をお勧めします。ドラマ版ここまでじゃなかったような。

イージス艦関連も結構攻めてるというか、なぜ捜査させなかったの理由をそういう設定にしちゃうのねっって。民間の船で何が起こってたかなかなかネタバレせないためだけって感じだったから防衛大臣含めそこは思ったよりは重要ではなかったです。メインとなるのはやっぱり田舎町の方。

公開当時CMで穴掘りながら悪態をつく千鶴が映ってましたが、「民事なので職権は発動しません。だから弁護士さん頑張ってね」っていうズラしを起こって彼女たちだけに大変な思いさせてたのは面白かった。もちろんその間みちおも別のこと調べてたわけですが、工場に忍び込んで逃げたりかなり体張らされてたなぁ。例によって裁判所の人たちも頑張ってて、証拠を見つけた時の柄本くんの小躍り笑った。

やっぱり最終盤の裁判のシーンが一番見応えあって、「そうだろうね」っていうのが一つずつ明らかになっていくさまと、それに対する入間の言葉が泣けた。実際の求刑とかだんだん声が小さくなって静かにフェードアウトしてくなんとも言えない感覚もまたイチケイっぽさだったなぁと。同情はするけど、やっぱり間違ってた。そういうお話でした。

WOWOWにて録画、視聴。
一応1/6に地上波初放送の予定です。

B0C53VKXSB
映画『イチケイのカラス』DVD 通常盤 [DVD]

B0C53VQZKM
映画『イチケイのカラス』Blu-ray 職権発動盤 [Blu-ray]

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック